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最後の片思い

16歳、高校一年の私は通っていた高校の先生に恋をしていました。東京の大学を出て私の住む田舎町にやってきた23歳の先生。授業が大して上手だったわけでも、世界で一番のイケメンだったわけでもないけれど、大好きで大好きで仕方がなかった。運動系の部活の顧問をしていた彼が愛用していたブランドも、彼の車の種類も好きだと言っていた食べ物も誕生日も全部覚えています。


先生に会いたくて、サンプルでもらったあまりのドリル(学校ではこのようなものをたくさん頂くのです。)などをもらって先生に毎日添削してもらったり小論文を添削してもらったり。勉強も小論文も大嫌いでしたが、先生に会いたい、ほめられたい一心で頑張った結果センター試験の国語の点数は受けた教科の中で一番良かったのは瓢箪から駒が出るといいますか、先生に見抜かれてうまく誘導された気がしないでもないのですが。


もちろん自分から思いを伝える勇気もなく、卒業まで何もありませんでしたし、私はそのまま町を出て大学生になりました。毎日会えるだけで、先生がそこにいてくれるだけでよかったなんて書くとあまりのくささに自分でも照れてしまうのですが、あれほどの熱量と純粋さで誰かを好きだったなんてあれ以来なかったんじゃないかなぁ。

車持ってるとか、仕事は何してるとかそういう世の中では打算といわれるものが私の気持ちの中に全然なかった。あまりに真剣に好きすぎて友達にも誰にも言ったことはなかったけれどきっとみんな気づいていたはずです。今思えば私の人生最後の打算なし、まじりっけなしの純粋な恋でしょう。

あれから四半世紀近く経ちましたが、最初で最後に卒業式で先生と二人で撮った写真を見るたびにその頃の自分の気持ちが思い出されて、恥ずかしいようなうらやましいような。


今日はバレンタイン。

The Alfeeの配信で演奏された「木枯らしに抱かれて」を聞いて、一瞬だけだけど今はもう二度と帰れないあの頃の私と先生を思い出しました。

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