【ショートショート】涙鉛筆#毎週ショートショートnote
月曜日の朝、私は自分の顔を眺める。頬には薄青のアイシャドウで書いた大きな涙マークがある。ペンシル型のアイシャドウで、私は涙鉛筆と呼んでいる。
私が大学進学で家を出た翌年、父は母と離婚した。家に帰るのも気まずく、私は大学卒業後、そのまま通える企業に就職した。
両親とあまり顔を合わせない生活が続いていたが、父は50歳の若さで突如他界。信号無視の車に跳ねられたらしい。
葬儀も何もどうしてよいかわからず困っていたところを、叔父が助けてくれた。
舞台俳優をしている叔父がくれたのがこの涙鉛筆だった。
「僕も、君も、人を笑顔にする仕事だ。だから人前に出るときは悲しい顔をしていてはいけない。でも悲しんではいけないというわけではないんだよ」
私は涙マークの上から化粧し、いつも通り出勤する。
「おはよう、今日も笑顔がいいね」
取引先の社長に、ありがとうございます! と返す。私は会社の受付嬢として、今日も満面の笑顔でお客様を出迎える。
(402字)
前回に引き続き、たらはかに(田原にか)様の企画に乗っかっています。
今回のテーマは「涙」「鉛筆」。
難しさ、「消しゴム顔」級。
相当悩みましたが、書かないと他の人のが読めない辛さ。(先に読むとアイデアが引っ張られるので……)
とりあえずアップしたので、皆様のを見て打ちのめされてきます。
毎週ショートショートの1周年記念本が出ました!
いつものメンバー44名?(数え間違えそうな人数)によるアンソロジーです。
『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』
よろしければサポートをお願いします!サポートいただいた分は、クリエイティブでお返ししていきます。