【ショートショート】タイムスリップコップ#毎週ショートショートnote

　じいちゃんとばあちゃんは仲良しだった。いつも一緒にいて、ばあちゃんの半年後にじいちゃんも病死した。

「いいかい、大翔。じいちゃんが死んだら、仏壇のこのコップにじいちゃんとばあちゃんの結婚指輪を入れてくれるかい。じいちゃんは独身の時、仏壇にしまってあったこのコップに救われたんだ。このコップに未来の日付とイニシャルが彫られた2つの指輪を見つけて、ばあちゃんに結婚を申し込む覚悟が決まったんだ」

　僕はじいちゃんのお通夜の日、そっと仏間に向かった。仏壇の奥にあった木製の木箱を取り出すと、小さな木製のコップに2つの結婚指輪を納めた。

「あら、何だったかしらこれ」

　年末に仏壇を磨いていたかあさんが、ふと仏壇の奥にある木箱を手に取る。

　僕は慌てて、かあさんから木箱をうばい抱きしめる。

「これはじいちゃんとばあちゃんの大事なものだよ。絶対開けちゃダメなの」

　かあさんは「わかったわかった」と受け取ると、耳元で軽く振り、不思議そうに首を傾げた。

（４１０字）

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前回に引き続き、たらはかに（田原にか）様の企画に乗っかっています。

今回のテーマは「タイムスリップ」「コップ」。

テーマを見たとき、思いつきやすそうだと楽観視して後回しにしていたものの、いざ考えると400字の壁が……。

ところでタイムスリップで現在から過去へ向かった時って、現在のその場から消えるんですか？過去が変わってなければその場には残っているんですか？そういえばシュレーディンガーの猫って結局何ですか？
文系にSFは難しいです……。