【ショートショート】音声燻製#毎週ショートショートnote
「凪さん?」
ダイニングの後ろ姿、君の背中が小さく震える。
「お風呂? いってらっしゃい」
僕の手のバスタオルを見て、君は微笑んだ。
さっき振り返る時、袖で顔をぬぐったよね。泣き虫のくせに僕の前で泣こうとしない君には、燻製の刑。
すぐに机に向き直った君へ、僕は頭からバスタオルを被せた。
ちょっと、と抵抗する君をバスタオルごと抱きしめる。
「凪さん。絶対受かるよ。大丈夫。この一年、誰よりも勉強してたの知ってるから。明日、朝起きて、ご飯食べて、時間までに会場につけば、絶対受かる。そうだ。明日の晩御飯は凪さんの好きなビーフシチューを作るよ。ひさしぶりにワインも開けて、フルコースで準備しておくね。だから、リラックスして、思う存分楽しんで」
君はバスタオルの上からそっと顔を押さえる。やがてタオルの下から僕を見あげる。
「ハーゲンダッツもお願いね」
少し腫れた目元を光らせ、いたずらっぽく口角を上げる。
ああ、僕のデザートも明日までおあずけだ。
(409字)
前回に引き続き、たらはかに(田原にか)様の企画に乗っかっています。
今回のテーマは「音声」「燻製」。
音声を燻製にするのか、音声で燻製にするのか悩み、後者にしてみました。
燻製って脱水がミソらしいですよ。
毎週ショートショートの1周年記念本が出ました!
いつものメンバー44名?(数え間違えそうな人数)によるアンソロジーです。
『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』
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