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台湾で会った人

You can take the person out of the place, but you can't take the place out of the person. 雀百まで踊り忘れず
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自分が故郷から離れても、故郷は自分から離れないという。それがよく分かる出来事があった。

今年は久しぶりに台湾に行った。担当するゼミの学生たちが合宿先としてここを選んだのだ。大学院入試のスケジュールと重なってしまい、僕がゼミ生たちと行動を共にできたのは1日だけだった。彼らは後で自由行動の日の楽しそうな写真を送って来て、中年の心を弄んだ。

そういえば昨年も同じようなことがあった。タイで合宿があり、僕はゼミ生より早めに帰らなくてはいけなかったのだが、後でタイ観光の写真が送られて来た。ゾウの背中に乗っているゼミ生らを見て僕は「う、羨ましくなんかないもん」と口に出して言った。

台湾では企業見学をさせてもらえることになっていたので、僕はゼミ生より早めに現地入りし、コーディネート役を担当してくれた同社の会長補佐と、なぜか僕に会いたいと言いついて来た米国法人副社長と挨拶を兼ねたミーティングを持った。今回のお礼に(自腹で)食事をご馳走しようと思っていたら、米国法人の人が「台北に僕の親戚がやっている評判のいいレストランがあるから、そこに行きましょう」と提案した。彼はとてもアメリカンな英語を話すが台湾出身で、14歳の頃に渡米して以来ずっとアメリカ暮らしなのだそうだ。故郷には最近顔を出すようになったが、その前はほとんど戻らなかったらしい。「だから中国語は自信がないんだ」と笑った。

レストランは行列ができる人気店だったが、親戚パワーですぐ中に入れた。「ここは私がご馳走します」と米国法人の人はあれこれ注文を始めた。僕が美味しいと言ったものをすぐに追加注文し、どんどん食べてと次から次へと勧めてくれた。彼の英語、物言い、そして振る舞いは完全にアメリカ人のエリート・ビジネス・パーソンだったが、「遠慮せずもっと食べて」を連発する食事の時の世話の焼き方は完全に台湾人のオジサンだった。やはりどれだけ海外が長くても、地元の出身なのだなと思った。

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