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Lost In Translation

I’m not an expert. あまり詳しくない
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外国人観光客は難しいことを質問してくる時がある。

ある居酒屋で、メニューと睨めっこしている外国人3人組を見かけた。言葉が通じないオーラが出ている門構えを全く無視して入ってしまった迷いツーリストたちである。その中の1人の男性が顔を上げ僕と目を合わせた。見つかっちまったようだ。

Hi, do you speak English?

外国人に対してゆっくり、明瞭に話すという発想が全くなさげな、典型的なネイティブモードの英語だった。もう少し考えた方がいいぞ。まあ、助けてあげますけど。

Yesと答えると、メニューを指して「これは何?」と聞いてくる。fishだと教えてあげた。別の1人が「何ていう魚?」とさらに聞いてくるので、yellowtail amberjack(ヒラマサ)だと教えてあげた。

すると全員顔を見合わせて、先ほど深堀る質問をしてきた男性が「yellowtail amberjackって何?」と聞いてきた。

Fishだよ。さっき教えてあげましたよね?あなたの国の言葉で。魚の専門家じゃないので、答えてあげられるのはここまでだ。あとはスマホで調べたまえ。

そういえば学生時代、お世話になっていた先生からアメリカから来たゲストの京都観光に付き合って、通訳をしてあげてほしいと頼まれたことがあった。その時は全く様子が異なった。

東寺に行きたいというのでお連れした。五重の塔もあって、いかにも寺という寺だ。アメリカの大学教授たちから色々な質問が出るだろうと思い一夜漬けで準備をした。

どうして「五重」の塔なの?
どうしてお寺の中に神社があるの?
どうして柱の下に穴が開いてるの?
このパワーストーンおみくじって何?(今はどうか知らないが、当時は境内にガチャが置いてあり、パワーストーンおみくじなる物が販売されていた)

あらゆる質問に答えを用意した。どこからでもかかって来なさい、いつも質問の多いアメリカ人達よ。

しかし、このゲストたちは皆さんとてもいい人達で、日本人が困るような質問をしてこなかった。だから、僕は自分から話題を振るハメになった。「五重の塔って、なんで五重の塔だか分かります?」とか、色々。

その日相手に最もウケた話題は、あるゴジラ映画で京都タワーがゴジラに破壊されたというものである。皆さん大爆笑だった。 ちなみに東寺は素通りされた。

冒頭の観光客たちは僕が教えてあげたヒラマサを注文せず、ホッケ(atka mackerel)を注文した。例のゴジラ映画の中で相手にされなかった東寺と、注文されなかったヒラマサが、僕の頭の中で重なった。

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