Birthday Song
禍福は糾える縄の如し
Lady Luck is a fickle mistress.
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僕が担当している大学のゼミでは、月に一度アメリカとコロンビア共和国の大学生と国際交流をしている。他2カ国の大学教員らとはオンラインでしか会ったことがないものの、コロナ禍の時期に交流プロジェクトを立ち上げて以来の付き合いなので、同志のような感覚を持っている。どうせコロナで留学もストップしているのだから、オンラインで頻繁に国際交流をしようと開き直った結果このご縁ができた。あの頃は色々と大変だったが、パンデミックがあったからやろうと思えた事でもある。禍福は糾える縄の如しとはよく言ったものだ。
ある交流の日がコロンビア共和国の教員の誕生日だと知らされた。「だからこの日は各国の言語でバースデーソングを歌おう」とアメリカの教員が実にアメリカンな提案をしてきた。
「えっと、だね...」
「日本でも歌うよね、バースデーソング」
「もちろん。ただ、日本語のバースデーソングは英語版のtransliteration(音訳)なので、日本語訛りであるところ以外、英語の歌と変わらないんだ」
スペイン語圏にはスペイン語版があり、タイトルはCanción de Cumpleaños Felizである。また中国語版は祝你生日快乐という翻訳となっている。日本にも、ねこふんじゃったを作詞した丘灯至夫という人が訳詞したものがあるが、ほとんど歌われていない。しかも2番まである曲のうち日本語の歌詞は1番だけで、2番は誰もが知る例のカタカナの歌詞である。とりあえず日本を代表して、そのカタカナ部分を実際に歌って聞かせて差し上げた。
「うん、何を言っているかとてもよく分かるよ」
それはそうでしょうね。そのようなわけで、日本人学生はアメリカ人学生とまとめられ、同じ枠でお歌を歌った。