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おもちゃに見向きもしないのはなぜ?モンテッソーリ×コーチングで“敏感期”を見極め、子どもの自発的な遊びを引き出す方法
「子どものためにおもちゃを用意したのに、全然遊んでくれない」
「せっかく選んだのに、投げられたり無視されたりしてショック…」
――子育て中のママやパパからよく聞かれるお悩みです。
大人が一生懸命選んだおもちゃなのに、なぜ子どもは興味を示してくれないのでしょうか?
この問いに対して、モンテッソーリ教育やコーチングの視点を取り入れると、単純な「好き嫌い」だけではない、より深い理由が見えてきます。子どもは、そのときどきの発達段階や「敏感期」によって求める刺激が異なります。
また、「自分で選び、自分で行動する」ことから得られる満足感(ドーパミンサイクル)を大切にすることで、おもちゃへの取り組み方も変わるのです。
本記事では、「用意したおもちゃで子どもが遊ばない」という悩みに対して、敏感期の観察法や子どもの選択を尊重する心がけ、そしておもちゃを提示する際の工夫など、モンテッソーリ教育とコーチングを土台にしたヒントをお伝えします。
1. 子どもの「敏感期」を見極める
モンテッソーリ教育で重要とされる概念に「敏感期」があります。敏感期とは、子どもがある特定のスキルや感覚に対して特別に吸収力や興味を持つ一時期のこと。たとえば、0~3歳くらいは「言語」「運動」「秩序」など、さまざまな敏感期が重なり合いながら進行します。
この敏感期に合った環境や遊びを提供すると、子どもは自然とその対象に強い関心を示します。逆に、敏感期とずれた刺激を与えても、子どもの中にはピンと来ず、スルーしてしまう可能性が高いのです。
【具体的な例】
粗大運動発達期にある子は、体を動かす遊びに夢中になりますが、細かい手先の作業にはまだ興味が薄い場合があります。
指先を使い始める微細運動の敏感期にある子は、穴にポンポンを落としたり、紐を引っ張るなどの手先を使う道具に惹かれますが、大きく動き回るおもちゃには見向きもしないことも。
このように、子どもが今どんな敏感期にいるかを観察することで、「なぜ遊ばないのか」のヒントが得られます。
2. 子どもの選択を尊重する:ドーパミンサイクル&活動のサイクル
もう一つ大切な考え方が、子どもの「選択」を尊重することです。子どもは、自ら選んだ行動から満足感を得ると、脳内でドーパミンが分泌され、「もっとやりたい!」「次もこうしてみよう」という前向きな気持ちが生まれます。これが「ドーパミンサイクル」です。
大人でも人から強制されたことにやる気を出すのは難しいですよね。
逆に自分が決めたことは、楽しんで取り組めるものです。
もし大人が「これで遊びなさい」「このおもちゃ、楽しいでしょ?」と押しつけると、子どもは自分で選んだわけではないため、自主性や達成感につながりにくく、ドーパミンサイクルも生まれにくい。その結果、子どもはそのおもちゃから得られる満足感が薄くなり、関心を示さないかもしれません。
【ポイント】
子どもがおもちゃを選べる環境を整える:複数のおもちゃを、子どもの手の届く位置に用意し、その中から自分で選ばせてみる。
遊び始めたら、無理に介入しない:子どもが楽しんでいるなら、わざわざ大人がやり方を教えたり別の遊びを薦めたりせず、見守ることで「自分の力でやれている」という自信を育む。
これらを実践すると、子どもは自分のペースで遊びを深めていき、やがて楽しさや達成感、好奇心が循環するドーパミンサイクルが形成されます。
3. 敏感期に合ったおもちゃとは?
では、どうすれば敏感期に合ったおもちゃを選べるのでしょうか?難しく考える必要はありません。まずは「子どもの今の行動や関心」を丁寧に観察することが大切です。
【観察の例】
手先を使いたがっている様子があるか?(小さな物をつまむ、引っ張る、押し込む行為)
体を動かしたがっているか?(ハイハイで移動しまくる、よじ登りたがる)
声や音に反応しているか?(ガラガラや鈴の音を聞くと振り向く、音楽に興味を示す)
何度も同じ動きを繰り返すか?(繰り返しは敏感期の特徴)
たとえば、穴に何かを入れたがる子なら、ポットン落としのおもちゃが適しています。引っ張る動きを繰り返す子なら、紐引きのおもちゃが良いでしょう。移動に熱心な子には、少し先に興味を惹く物を置いてハイハイを誘発するといった環境づくりも有効です。
モンテッソーリ教育では「子どもは自分が必要としている刺激を求める」と考えられています。そのため、子どもの行動を読み解けば、適したおもちゃ選びが見えてきます。
4. おもちゃの提示方法:いつでも手に取れる場所に
モンテッソーリ教育では、子どもが自分で選べる環境を重視します。大人が「このおもちゃで遊んで!」と手渡すより、子どもの目線や手の届く場所におもちゃを整然と並べておくことが大切です。
【ポイント】
子どもの身長に合わせた低い棚におもちゃを置く
おもちゃは乱雑に置かず、1つずつはっきり見えるように配置する
一度に大量のおもちゃを置かず、少量のおもちゃを定期的に入れ替える
こうすることで、子どもは自分で「これを触ってみよう」と思ったときにすぐ手に取れます。自発的な選択が生まれやすくなり、おもちゃへの興味も高まります。
5. 親が楽しむ姿を見せる
子どもは大人の行動をよく観察しています。もし大人がそのおもちゃで楽しそうに遊んでいる姿を見れば、「あれ、楽しそうだな、やってみよう」という気持ちが芽生えることがあります。
【例】
布ボールなら、大人が軽く放って転がしてみせる
穴落としのおもちゃなら、大人がポンと落としてみて「面白い音がしたね!」と笑顔で言う
音が鳴るおもちゃなら、大人が軽く振ってみたり、歌を口ずさんだりして、赤ちゃんが興味を持つきっかけを作る
このとき、大人がやり方を指示したり強制したりする必要はありません。あくまで「楽しそうにしている姿」を見せることで、子どもが興味をもつためのヒントを与えます。
これはコーチングの「問いかけ」の一種でもあります。口で問いかけなくても、行動で「どう?」と投げかけることで、子どもは自分なりの答えを出そうとします。
6. 遊ばないおもちゃがあることも当然
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