②洗浄・消毒について
ビールづくりにおいて、最も重要ともいえるのが、ビールづくりに使用する全ての道具の洗浄と消毒です。洗浄と消毒が美味しいビールづくりを左右すると言っても過言ではありません。逆に言うと、洗浄と消毒を適切に行っていないと、ビールづくりは失敗してしまうのです。優れたホームブルーワーは、洗浄と消毒の重要さをきちんと理解している(又は洗浄と消毒の失敗で痛い目にあっている)ので、失敗が少なくなります。 特に注意したいのが、ホームブルーイングに慣れてきた頃に、洗浄と消毒を怠ってしまいがちなことです。最初のビールづくりは緊張もしますし、洗浄と消毒も丁寧に怠りなく作業するので、最初は以外と失敗しないものです。しかし、慣れてきた頃に手を抜いてしまいがちなのが、この洗浄と消毒です。最悪の場合には、せっかくつくったビールをサヨナラしなければならないので、特に注意が必要です。 一度この失敗をすると、洗浄と消毒の重要さを身をもって理解するので、一度は通ったほうがいい失敗なのかもしれませんが、本当にガックリしますので、できれば通らないようにしたいものです。 美味しい・美味しくないに関わらず、ビールづくりには、適切な洗浄と消毒が「必要不可欠」です。ただし、必要以上に神経質になることはありません。いくつか大切なポイントがありますので、しっかり押さえておけば大丈夫! 人によって、洗浄と消毒についての用語の使われ方が異なりますので、ビアトレで説明する用語について、理解を一緒にしておきたいと思います。
洗浄:汚れ等を取り除くこと。食器の洗浄と同じようなことです。
消毒:バクテリアや微生物を無視できる程度に減らしたら、殺したりすること。除菌と同様ですが、消毒という言葉に統一しておきたく思います。
滅菌:バクテリアや微生物などが「完全」に取り除かれた状態。
浄については、中性洗剤で食器の汚れを落としたりすることと同じ意味ですので問題ないですね。しっかり洗浄して汚れを落としましょう。そしてビールづくりにおいて重要となるのは、消毒です。食器を洗ったあとは乾燥させて食器棚にしまいますが、消毒までは通常しないものです。しかし、そのままでは空気中や水の中のバクテリア・微生物が繁殖しやすい状態なのです。 煮沸が終わって冷却された麦汁は、バクテリアや微生物に汚染されやすくなりますので、しっかり消毒をして麦汁が汚染されないようにすることが肝心です。 例えば、注射をする時にはばい菌等で感染しないように、アルコール消毒をしますよね。それと同じ感覚でしょうか。消毒をして、バクテリアや微生物を無視できる程度に減らし、殺菌します。しかしながら、完全に微生物等を取り除く「滅菌」まですることは現実的に難しく、ビールづくりにおいては必要ありませんので、以下を参照にポイントを押さえた洗浄と消毒をしましょう。
洗浄用具について
ビールづくりに必要な道具は、全て洗浄します。消毒が必要な道具についても、きちんとした洗浄が行われていないと意味がありません。ビールづくりによく使用される洗浄剤を確認してみましょう。
【食器用中性洗剤】
一般的な食器用中性洗剤です。ビールづくりの道具全てに使えます。むしろ全ての道具に使用してしっかり洗ってください。洗った後のすすぎをしっかりとすることも忘れずに。また、発酵容器などのプラスチックを洗う時の注意点ですが、使用するスポンジはやわらかいもので、たわしや網などが付いていないものを使用しましょう。プラスチックに細かいキズでもつくと、その中にバクテリアなどが住み着きやすくなりますので、注意が必要です。
【キッチンブリーチ】
塩素系、酸素系どちらのブリーチも使用できますが、特に塩素系は金属に使用すると腐食してしまうので、説明書をよく確認して使用しましょう。また、「混ぜるな危険」です。プラスチックやガラス類には問題なく使えます。酸素系のブリーチは、温水を使用することがコツです。特にきれいにする必要のある発酵容器などは、使用前・使用後には必ずキッチンブリーチをするようにしたほうがいいと思います。規定量に希釈し、30分ほど浸け置きし、よくすすげばOKです。汚れや臭いがきれいにとれて、除菌もできます。よくすすいだ後に、一旦沸騰させた水で洗い流し、乾燥させれば、別の消毒剤を使用しないでもそのまま使えますが、やはり消毒剤も使用したほうが好ましく思います。
【PBW】
アメリカのホームブルーワー用に、PBWという商品名で売られている、過炭酸ナトリウム系の洗浄剤です。酸素系漂白剤のようなもので、腐食の心配がなく、非常に使いやすい上に洗浄力が高いので重宝しています。が、日本での取り扱いがないようです。
【その他】
オーブンクリーナーや重曹など、用途に併せて色々使用できます。経験上、上記二つの洗剤で特に問題ありませんが、自分なりの方法を色々試してみるのもいいですね。
消毒用具について
消毒が必要となる道具は、冷却した麦汁に触れる全て物です。逆に言うと、麦汁を煮沸するまでの工程に使う道具は、イーストスターター以外は消毒する必要がありません。想定される道具としては、煮沸後は発酵容器、発酵容器の蓋、発酵容器に麦汁を移す際に使用するホース、エアロック、エアロックのゴム栓、発酵後はサイフォンチューブ、ボトル、王冠、ボトリング容器などです。消毒方法は大きく分けて2つです。
消毒剤を使用する
煮沸消毒する
煮沸消毒ができれば良いのですが、王冠以外はほとんど難しいものです。その為、消毒剤を使用することが多くなります。以下に代表的な消毒剤を紹介します。
【キッチンブリーチ】
洗浄用具でも紹介しましたが、一番安価で消毒できる方法です。一旦沸騰させた水ですすぐことをおすすめしますので、それが面倒であれば、水道水ですすいだ後に、他の消毒剤と併用すると便利で安心です。ただし、「混ぜるな危険」です。人によっては、水道水ですすぐだけで問題ないと言う方もいらっしゃいますので、その点は各自にお任せいたします。
【消毒用エタノール(消毒用アルコール)】
スプレー式の消毒用エタノールや、消毒用アルコールが便利です。しっかりと洗浄した後、スプレーで噴きかけるか、浸すなどしてください。その後はしっかりと乾燥させることが重要です。個人的には、食品にも安心して使えるパストリーゼ77などが良いのかと思います。
【ヨードチンキ】
ヨードチンキを規定通りに希釈して使用します。10分ほど浸けておけば消毒できますが、病院臭がするそうですので、一旦沸騰させた水ですすいだ方が良いようです。着色の心配や匂いが嫌いなので、僕は使用したことがありません。。。
【Star San】
アメリカのホームブルーワー用に、Star sanという商品名で売られている、陰イオン性酸の消毒剤です。19ℓの水に対して30mlのStar sanを入れ、2分ほど浸けておけばOKです。その後は水などですすぐ必要がありません。泡が気になりますが、無害ですので心配ありませんが、説明には乾燥させるよう記載があります。僕は乾燥させたことはないですが。。。少量のStar sanと水を混ぜてスプレーボトルに入れておくと、スプレー式の消毒剤としても使用できますのでとても便利です。また、ボトルの消毒にも使用できます。 僕は、このStar sanを非常に重宝していて、必ずといっていいほど使用しているのですが、日本での取り扱いがないのでとても残念です。ちなみに、アメリカから飛行機で受託手荷物の中に入れて持ち込もうと思いましたが、酸素系という理由で没収されてしまいました。。。少しでも量をセーブする為、僕のStar san使用量は、説明よりも大分少ないです。その代り、キッチンブリーチをした後よくすすいでから、Star sanを使用するようにしています。
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