ジャニーさんとカズ(日経コラムより)
まさかと思ったが、カズさんがジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川社長について2019年7月19日付け日経新聞朝刊コラム「サッカー人として」にてコメントをした。
カズさんと言えば、大のトシちゃん好きとして有名で、それこそJリーグバブルの頃、試合→打ち上げ→カラオケの時代にはテーブルの上に乗って大熱唱していたらしい。
なので、カズさんからジャニーさんについて触れるのはトシちゃんとのことかと思っていたが全く異なっていた。
私の中でカズさんが、ある意味で(それはある種よくないことだとは分かっていても)神格化されるきっかけとなった98年のフランスワールドカップ選考から漏れたときのエピソードだった。
イタリアのホテルにいる僕のもとへ、一本の電話がかかってきた。1998年、ワールドカップ(W杯)メンバーから落選し、4日ほど日本から離れていたときのことだ。ジャニー喜多川さんが、どうしても話したいことがあるという。
「みんな、カズの味方だから。みんな応援している。心配しなくていい」
自分をコントロールしないといけないよ。そう伝えたかったのだと思う。外れたことへの愚痴、ねたみ、恨み節、「なぜ俺が」などと負の感情に身を委ねてはいけないよ、と。「大丈夫です。記者会見もしっかりやります」と僕は応じた。
一つの言動や振る舞いが、人の心をつかみ、あるいは逆なでし、人生の風向きを変える。経験からよく分かっていたジャニーさんは、僕に道を踏み外してほしくなかったのだろう。
このことが無くても、カズさんは、きっと最初はなんでだ?という怒りみたいなものが起こりつつも、これは自分に至らない点があったのだと腹の奥で理解するところまで落とし込み、サッカーの神様がもっともっと上手くなって、成長しろと言っているんだ、と気持ちを切り替え、更に高め、進んできたんだと思う。
カズさんとはそういう選手だ。
だからこそ、人を惹きつける。
ただ、とは周囲では理解しえない、思いであり、体験であったことは間違いない。それぐらい、大きな出来事だ。
そんな時に、まさか、あの大物であり、全く業界が違い、普段は何の縁もないジャニーさんが、色々なつてをつかって、国際電話をかけてきたことに、何とも言えない気持ちになる。
あの頃、世間は正直二分していて、賛否両論があり、仮にカズの大親友、先輩、同僚であっても、掛けられる言葉はなかったと思うし、そんなことをされることは本人も望んでいないと勝手に、それこそ空気を読んでしまい、何も行動できなかったのが普通だと思う。
そこに、部外者であるジャニーさんが、サッカー界の英雄、間違いなく日本プロサッカー界初のスタープレイヤーに対して、スター論、スター学の第一線で活躍する(いや、活躍させる裏方の、いわば監督)という意味においては同業者として、カズさんにアドバイスをされたのだと思う。
それにしても、カッコイイを作る人は、本当にメッセージもカッコイイ。
人生のどん底にいる人に、前向きになってもらうためにこんな一言がいえるなんて。
「みんな、カズの味方だから。みんな応援している。心配しなくていい」
その後のカズさんを尊敬し、楽しみに生きれたことは、間違いなくご本人の今も変わることのない真摯な姿勢と努力だけれど、きっと、いや絶対ジャニーさんの一言も影響しているはず。
ファンだから分かる、そういって間違いないと思う。
ジャニーさん、ありがとうございました。
※この後のジャニーさん評も興味深いので是非記事をご覧ください。
カズさんがとトシちゃん(田原俊彦さん)とのエピソードはこちら
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