虚無感が音もなく通りすぎる
2022.11.4(金曜日) loquacious
よく喋る男に会った。
1時間ほどずっと喋りっぱなしだった。まるで喋るのをやめると死んでしまう新種の生き物かなにかのように喋り続けていた。
疲れた。
その男の言葉の98%は私の耳の右から左に足跡も残さず去っていき、1時間後に唯一残った言葉は「僕の話、聞いてますか?」だった。
私は聞いてなかったけど「はい、聞いてます」と嘘をついた。
お喋りの男は苦手だ。
間を上手にもて遊べない気がする。会話には間が空く時があって、その間に相手の感情などを推し測りながら話は進んでいくものだ。
その『間』が大事です。
よく喋る男と分かれてから、飲み直しをする。飲み直しといってもお茶のことだ。違うカフェに行ってひとりでお茶をする。若者たちの賑やかな声が響いているが、さっきの男のひとり語りより若者の意味のわからない流行り言葉の方がまだマシだ。
あぁ、せっかくの先日から良いテンションが続いていたというのに少し下がり始めたような気もする。
*
デパ地下で晩ごはんの食材などを買って帰宅する。
家の近所まで来たら、やけに同じようなシャツを着た若者がたくさん歩いている。何となんくみんな同じような雰囲気の人たちばかり。誰かアイドルのイベントでもやっているのだろうか…?
私の近くを歩いていたおじさんが興味を持ったのか、歩いている女子に声をかけていた「何があるの?」女子はびっくりしていたが丁寧に答えていた。
私はその答えの部分が聞き取れなかったけど、おじさんは「はぁ〜そうなの」と返事をしていた。私でさえ若い女子に声をかけるのはこんな時世ゆえ戸惑うのだけど、怖いもの知らずのおじさんだ。
結局何があるのかわからないまま、私が家に着くまでその若者たちの列は途絶えることはなかった。
お昼ごはんに食べようと思ってデパ地下で買ってきた玄米おにぎりを食べたら、硬くてぽそぽそしてて美味しくなかった。これはよっぽど歯の丈夫な人じゃないとダメかもよと思う。捨てるのは勿体無いのでお茶をかけてちょっとふやかしてお茶漬けにして食べた。なんとか食べれた。
もうあそこで買うのはやめよう。
*
今、書いている小説の主人公の名前をどうするかずっと悩んでいたんだけど、さっき思いついた。
「砂里(サリ)」
名前が決まるとイメージか掴みやすい。胸につかえてたものが胃の中にすっと落ちた感じ。嬉しい。