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【DTM】基本あってのツールなので・・・・

音楽経験がなくても音楽が作れる、それがDTMのいいところです。いまではSwitchのKORG Gadgetのようにゲーム機でもそこそこ音楽制作ができるので、ただ音楽を作りたいっていうだけなら本当に敷居は低くなりました。
ところが、「自分の歌を作り上げたい」となると、話が急に違ってくるんです。



「Logic Proの機能で歌をMIDI化すればいいのでは?」

ある生徒さん(音楽経験なし、楽器経験なし)は歌の構想があり、とりあえず録音する機能を使いこなせるようになってデモ仮歌(歌のみ)を録音できるようになった。
そして「Logic ProにはFlex Pitchという機能があり、録音したものがMIDIになって便利なのではないか?」と思い立ってLogic Proの体験版をインストールしてみた。
ところがうまく曲のようにMIDIが出力されない。「どうしたらいいですか?」と質問をいただいた。

「クリック聴きながら録音しましたか?」と問うと、「それはやってない」ということで色々察したのだが、、、、、生徒さんにはBPMの概念もなければ、符割りや小節という概念も、理解はしているが重視していない様子だった。
Flex Pitchはそもそも歌メロがDAW内で成立している状態で、クォンタイズ・ベースでメロディを識別する機能だ。つまるところ、メロディの音符がしっかり確定しているとき初めて役に立つ
録音は小節線をかろうじて意識しているが符割りは曖昧で、歌も調やベースがない状態で歌っているのでぴったりくるピッチを検出できるはずもない。結果、Flex Pitchが出力するのはシェーンベルグばりの不協和音となっていた。Flex Pitchの問題ではないのは言うまでもない。

そうかなるほど。音楽経験のない人にとって、作曲が符割りを決め切ることだという考えから教える必要があるのか。
僕は少し心を入れ替えて、紙の五線譜を引っ張り出してきて「とりあえず楽譜を写して書いてみてください」と課題を出した。簡単な楽譜だったが、1コーラス書き写したところで徐に僕は話しはじめた。

「音楽ツールって元々、音楽ができる人に向けて設計されているんですよ。符割りだとか音程とか、テンポが決まった状態で使われるのを”前提”にしています。だからその基本的な部分が理解できてないままFlex Pitchを使っても、ずっと同じような出力しかされないでしょう。歌が上手くなるとか以前に、作曲がメロディのリズムと音程を決めて”固定する”ことだと理解する必要があります。そんなに難しいことではないですよ、いま楽譜を写してもらった『その状態』で初めて作曲になるってことです。歌うたびにメロディが変わっちゃわない、そこでやっと作曲は完了するんです」

理解って、なにかを100点にすることではなくて、実際にやってみた実感のことかもしれない。実際に手を動かして、すごく時間がかかるけど、それで書き上げた譜面が作品になるという経験。そのまず第一歩をナビゲートするくらいしか、僕にやれることはなかった。

気楽にEDMとかテクノを作ってDAWに慣れる方法がDTMレッスンの王道なんだけど、あいにく生徒さんはそういう音楽に興味がない年代のようで・・・・・悩ましいところです。
けどこういう経験をさせてもらって、僕自身も「ちゃんと作曲しなきゃな」という原点を見つめることができました。生徒さんに感謝、遠からず生徒さんも自力で作曲できるよう指導していく所存です。




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