ニコニコの利用状況データの推移をまとめた2023
今年もまとめました。
ニコニコ動画の運営会社の社名について
2014年9月までは株式会社ドワンゴ、2014年10月に株式会社KADOKAWA・DWANGO、2015年10月にカドカワ株式会社、2019年7月に株式会社KADOKAWAへと社名が変わります。今回は基本「ドワンゴ」で表記します。
参考:ニコニコ動画とは(ニコニコ大百科 wikipedia ピクシブ百科事典)
データ参照元
基本的にKADOKAWAの決算資料ページを元に作成。データはgoogleスプレッドシートに手打ち。
・決算説明資料|IR情報|KADOKAWAグループ ポータルサイト
・ドワンゴの決算説明資料(IR資料)のリンクまとめ(2014年以前)
会員数
決算発表資料の推移で計算方法が変わっています
表中の登録会員数(ブルー)とID発行数(オレンジ):おそらく違いはない
有効会員数(グレー):ID発行数から退会者数・不正ID数を除いた会員数
モバイル会員数(イエロー):ガラケー版ニコニコ動画(docomo、au)
有効会員数がもうすぐ1億人に届きます。ちなみに、ニコニコ動画PC上で確認できるID発行数(退会者数・不正ID含む)は今日時点で1億3200万アカウントくらいです。
重箱の隅を突くんですが、2013年第2四半期の時点で、計算上日本の20代人口よりもドワンゴ発表の20代ユーザー数のほうが上回ります。詳しくは過去記事をみてください。
会員数から現在のニコニコの実体を推し量ることはできないように思われます。
会員数(ニコニコユーザー数)を推計してみる
これの日本の人口推移と、これの"主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率"表(2014年調査開始)からニコニコユーザー数を推計します。
青線が「13歳~69歳までのニコニコ利用率を参考に、日本の総人口あたりのニコニコユーザー数へ、拡張して計算」したもの。赤線が「13歳~69歳までのニコニコ利用率を参考に、日本の10代~60代までのニコニコユーザー数を計算」を計算したものです。実際の会員数は青線と赤線のあいだだと思われます。会員数は横ばいの気配かもしれません。
業績概況
プレミアム会員数の前にこれを差し込みます。注目は図の赤枠です。営業利益は、2022年1年間と比較して41.3%減少しています。今回の第3四半期(10月-12月)のみに着目しても、2022年3Qは878(百万円)の営業利益、2023年3Qは418(百万円)と営業利益が半減しています。
資料内では26/3期からプレミアム会員数反転を目標としているとのことです。
プレミアム会員数
2016年頃にピーク(256万人)を迎え、その後は減少が続いています
2023年12月4日にプレミアム会員費の値上げのweb告知、翌5日には告知の公式ニコニコ生放送が行われています。
プレミアム会員の減少トレンドは変化ありません。変化があるとしたら次回第4四半期での結果になると思います。ただ、決算説明資料によると値上げ公表による退会数は運営の想定内に収まっているとのことです。
アクティブユーザー数
DAU(デイリーアクティブユーザー)
1日平均訪問者数、DAU(新ロジック)、ログインUU DAU、ログイン+非ログイン視聴UU(DAU)、Google AnalyticsによるUU DAUが公開されています。
新ロジックについては『従来の集計ツールでは新サービス/デバイスへの対応が不十分だったため、今回の開示より、新ツールでの集計を開始し、精度を改善』とのこと。2018年2月28日以降はPCでの動画視聴がログイン不要になりました。Google AnalyticによるUU数がカドカワ発表のログイン+非ログインUUの倍くらいあります。全体としてDAUは減少傾向です。
MAU(マンスリーアクティブユーザー)
MAU(旧ロジック)、MAU(新ロジック)、ログインUU MAU、ログイン+非ログインUU MAU、Google AnalyticsによるUU MAU数が公開されています。ログイン+非ログインUU MAUは微減の傾向です。
10代MAU(マンスリーアクティブユーザー)
直接データがあるわけではなく、計算して算出しました。A="MAU(旧ロジック)"または"MAU(新ロジック)"、"ログインUU MAU"、"ログイン・非ログイン含むMAU" として、10代MAU=A×10代シェアで計算しています。減少が続いていますが、10代のログイン・非ログインMAUの減少傾向は去年よりわずかに緩んでいるかもしれません(去年の記事で、このままだと50万人切るって書いたので)。
各世代ごとMAU(マンスリーアクティブユーザー)
A="MAU(旧ロジック)"または"MAU(新ロジック)"、"ログイン・非ログイン含むMAU"のいずれか最大値 として、各世代MAU=A×各世代シェアで計算が1枚目。B="MAU(旧ロジック)"または"MAU(新ロジック)"、"ログインUU MAU"のいずれか最小値 として、各世代MAU=B×各世代シェアで計算が2枚目。20代30代に比べて10代MAUが非常に低位に推移していることがわかります。なお2枚目の"ログインUU"プロットについては、2021年通期を最後に公開されていませんでしたが、2024年第1四半期より再び公開されました。
年代別シェア
ドワンゴ発表版と総務省発表版があります。
ドワンゴ発表版:ニコニコユーザーの中での、各世代の内訳(数値を全部足すと100%)
総務省発表版:日本国民の中での、各世代ごとのニコニコ動画の利用状況。訪問留置調査。(情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査より)
年代別シェア(ドワンゴ発表版)
ニコニコユーザーの中での、各世代の内訳(数値を全部足すと100%)になります。1枚目と2枚目はグラフ表示形式が違うだけで、データは同じです。
(参考:大百科(ニコニコ動画)ページにも同じデータがあります)
10代ユーザーの割合が減って、30代ユーザーの割合が増えてます。
なお、去年同時期の資料(2023年3月期 第3四半期)では10代利用率は4.4%です。去年の記事で「この傾向が変わらない場合、2023年12月末で10代ユーザーの割合が4%を下回るよ」って書いてて、その通りになってます。あきらかに低すぎますが、考察を後述します。
年代別シェア(総務省発表版)
グラフは、日本国民の中での、各世代ごとのニコニコ動画の利用状況です。10代の項目は厳密には13~19歳とのこと。下記の集計時期は調査年のことで、発表は翌年の夏頃。
10代利用率が、2021年で急激に減少していたのが、2022年で持ち直しています。そのほか、40代でのシェアが落ちていますが全体的には横ばいのようです。
なお、現在最新資料(令和4年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査)の表(pdf11p)では10代利用率が27.9%となっています。youtubeの96.4に比べると低い数値ではありますが、存在感はある結果になっています。
ドワンゴ発表版と総務省発表版の差異を考察
2つの発表の差異がなぜ出てくるのでしょうか。
確実な根拠はありませんが、原因の一つとして以下が考えられます。
・スマホアプリ版のゲストログインでの利用が多いため、ドワンゴが生年月日の情報を取得できていない。
2019年07月25日以降、スマホのゲストログインが可能になったため、新規ユーザーが生年月日を設定していない可能性があります。また、数か月おきに行われるニコニコの満足度調査には生年月日の申告欄がないため、現在ドワンゴはニコニコの年代構成がうまく集計できてないかもしれません。
ただ、総務省のデータが正しいとも限らないので注意が必要です。体感では、総務省版の発表のほうが、twitterでの反応や動画内のコメントの雰囲気を見て、しっくりきています。総務省の発表版について、2021年の数字が下がってから2022年に持ち直した件については、twitterやtiktokでボカコレアプリやボカコレイベントの広告を打った効果が出ているのではないかと考えます。youtubeへのボカコレアプリ、ボカコレイベント、ニコニコの宣伝は、2021年2022年ではなく、2023年にかなり見られたという印象です(ここあたりの露出の情報があれば歓迎します)。
総務省発表版についておまけ
総務省発表資料の内容が面白かったので共有します。(令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書,pdf13p,11p)
ニコニコ、Netflix、ABEMAが同程度の利用率ですね。Tverが各世代まんべんなく利用され、存在感が増して生きているように感じます。
男女比
男女比は平成20年中間期(2008年)~2020年通期まで公開されていました。ほぼ男:女=68:32くらいで推移しています。
ニコニコチャンネル
全チャンネル数、月額有料チャンネル数、月額有料会員数が公開されています。月額有料会員数は2020年まで上昇、その後成長がグズついていましたが、近年ではわずかずつ増加しています。プレミアム会員費の収入減少をチャンネル収入がカバーしています。
年別動画投稿数と年別再生数
ニコチャートの総合カウント(http://www.nicochart.jp/total/)よりデータを拝借しました。データで見るボイチェビさんのツイートと、同じ結果になっています。年別の動画投稿数は2011年がピークの後、現在はほぼ横ばい。年別の再生数は2016年がピーク、その後再生は落ち続け、現在は2007年と2008年数字の中間地点にいます。このままだと来年は2007年の再生数を下回ることになりますが、(プレミアム会員費の値上げという不安要素もあるが)スマホ版ニコニコ動画アプリのUI変更が1月29日(視聴画面)に実施済み、春にホーム画面の更新と予定されているので今後上向く可能性もゼロではありません。
なおボヤキなんですが、このデータを取り上げたかやさんの「ニコニコの2023年再生数、ガチでヤバい…」動画内で「滞在時間を見てみないとなんとも言えない」というコメントがありましたが、平均滞在時間は2007年8月で約3時間14分、2008年9月で2時間38分、2010年8月で36.6分、2011年2月で39.2分なので、ちょっとやそっとの滞在時間の増減でニコニコの勢いを語るには、過去が強すぎてなにもできないと思います。
まとめ
今年は去年と比べ、業績概況のスライドを1枚差し込んでみました。また、年別動画投稿数と年別動画再生数のグラフを自作しました。
10代利用率については、ドワンゴ版資料では非常に低位たる数字ですが、総務省版資料を見る限りでは回復しています。総務省版の数字を信じるならば、他サイトでのニコニコ関連の広告効果が功を奏していると推察できます。
しかし、年別の総再生数では、2007年次の再生に迫る勢いで今なお減少が続いています。個人的な予想では、年別再生数は今後上向くと思いますがニコニコ動画というサイトが今後も存続できるかは、全く楽観できないと思います。
過去まとめ記事リンク
・2022年のデータまとめ
ニコニコの利用状況データの推移をまとめた2022
・2021年5月時点のデータまとめ
ニコニコの利用状況データの推移をまとめた - 駄(ておりあ(@_theoria))
(↑インスパイア元です)