制作から経営企画まで。広報を軸に活躍する 鈴木早百合さん #Beee!な人々
“絵が上手”な女の子が美大を出て広報の仕事にたどりつくまで
じりー:すーさんといえば、広報でありながら、クリエイティブなことから経営企画業務までこなせる、右脳も左脳もフル活用の印象があります。改めてどんなキャリアを経て、今どんなお仕事をしているのか伺えますか?
すーさん:はい。PVを創る人になりたくて、美大のグラフィックデザイン学科に進学し、ゼクシィの制作をする企業を経て、人材会社の広報になりました。今年の初めから、キャラットという写真スタジオ運営などを行う会社で広報と経営企画室業務をしています。最近では、(下記の写真のような)セルフ写真館をよくご紹介いただいています。
じりー:そうなんですね。写真素敵です!!いきなり聞きたいポイントがたくさんあります。PVを創りたかったところからゼクシィの制作をする企業をファーストキャリアに選んだ経緯がまず気になりました。
すーさん:実は、PVの現場の仕事には美大にいた頃にアルバイトでチャレンジしていたのですが、女性が一生の仕事にするには体力的に無理だなーと思い、諦めました。あと、その現場で自分より向いていると思う人も目の当たりにして、向いていないなと思っちゃって。
そのうえ、就活している時にリーマンショックが起きまして。氷河期オブ氷河期で、デザイナーってそういう時に真っ先に切られるような職種でみんな就職先がなかったんです。デザイナーになろうと思うと本当に茨の道で、いっぱい落ちました。
じりー:ああーそうでしたね(※)。大変でしたよね。
※実は私とすーさんは就活した年度が同じ。
すーさん:それで視点を変えようと。私、デザイン苦手だったんです。美大のデザイナーを目指すような同級生の方々と比べると、私は5mmの差を詰めるような緻密な作業をして1人で何かを創り上げるというのが、得意じゃなかった。もっと大雑把だったんです。
じりー:なるほどー。
すーさん:それよりも、「人の心を動かす」コミュニケーションには興味があって、入社してすぐ新人研修でマーケティングを一通り教えていただけて、めちゃくちゃ売れている式場にはちゃんと理由があるということを知って、それがすっごく面白くて!!
私もともと「センス」っていう言葉が苦手なんです。「センス」って知識であり蓄積だと思うんですけど、フィーリングというか、好み的な意味で使われることが多いんですよね。
好みではなくマーケティングの知識を駆使してタイアップページを編集・制作していくのはやりがいがありました。
イラレの知識が役立って裏表紙デザインしたり本当にいろいろな経験をさせていただきました。
じりー:その気付きはいきなりすーさんっぽい感じで面白い!そこから転職した先で広報になったんですよね?
すーさん:もとは同じような制作の仕事を別のジャンルでやってみたいと思って転職したんですが、1年ほどで退職することとなりました。
で、まさに今日退職する、という日に親会社である人材会社のトップに辞める人の意見も聞いてみたいと言われて面談することになりまして。その面談で「広報のアシスタントが足りないからもし興味あったら電話して」といわれ、携帯の番号を渡されました。
じりー:えー!?辞める日に、社長と面談して誘われたんですか!?どこから突っ込んだらいいかわからないけど、ドラマチックすぎる展開です。
すーさん:そう、だから実は10日間だけ退職していたんです(笑)言われた通り連絡してみた結果、未経験ながら広報アシスタントになりました。ところが、3ヶ月後に先輩が辞めてしまいました。
じりー:えええ!?
すーさん:特に引継ぎもなく、メンバーが増えることもなく、もともとPRに対する方針もなかったので、実質的には1人であんまりよく知らない会社の広報を立ち上げていくこととなりました。
じりー:未経験からの広報立ち上げ!いきなりハードモード。どんな広報をしていたんですか?
すーさん:最初は、PRと広告の違いもわからない状態で。メディアリストにも3人くらいしかいなくて。
記者クラブに行ってみたら御社は違いますと言われたり、最初はイラレでプレスリリースを書いてたり。でも広報の研修に通わせていただき、RPGのクエストみたいな感じでまずは電話番号ゲットするところから始まって、紹介をつないでいって、少しずつメディアとのリレーションも広がり、仕事の面白さもわかってきました。そして気付けば6年。
じりー:6年ということは、結果として制作よりも広報の方がキャリアとしては長くなったと思うんですけど、広報の仕事は自分に合っているという実感はあったんでしょうか?
すーさん:はい!PR会社というものを就活で知っていたら受けていただろうなと思うくらい、「たどりついた感」がありました。これまでの経験を総動員できているような感覚です。
小学生の頃、クラスで何キャラだったかってあるじゃないですか。私はいわゆる「絵が上手」キャラで、絵を描くことが大好きで、絵を描いて友達と仲良くなっていました。
でも私は最近は、全然絵を描いていないんです。それで、私が楽しかったのは、コミュニケーションをとることそのものだったんだと気付きました。言葉を使うよりも絵を描いてコミュニケーションをとる方が得意だったからそうしていたけど、絵でなくてもよかった。
それが仕事にできるってなんて幸せなことなんだろうと思っています。
工数4割で続々テレビの取材依頼が届く秘訣とは?
じりー:そして今年の初めに今の会社で働き始めたということですが。広報と経営企画の仕事をしているんですよね?
すーさん:はい。経営企画業務の方が割合は高く、広報は4割くらいしか工数を割けない状況です。
じりー:なるほど。ベンチャーとかはそういうケースも多そうです。
そんな中でも、すーさんが入社してから、テレビで取り上げられている機会が増えてますよね?
すーさん:そうですね、ありがたいことに入社してから8回ほどテレビで紹介いただきました。
じりー:やっぱり!!一体どんな工夫をしているんでしょう。
すーさん:私の力というより、プロダクトの力が大きくて。世の中が求めていることにも合っていたので、ほぼリリースからのプル型のみで、取材が決まっています。
たとえば、「フォトウェディングが好評」ということをトレンド情報として発表した結果、リリースを見に来てくれる人が増えたり。
じりー:いやいや。すーさんが広報担当として、時流をとらえて、会社の情報を編集して、ちゃんとPRできているからこそできることだと思います。それが広報の力なのでは!?
もっとその秘訣を知りたいんですが、印象に残っている仕事はありますか?
すーさん:最近1番うれしかったのは、防災の日に合わせた取り組みとして一緒に発案した写真スタジオのサービスが「Nスタ」の取材に繋がったことです。
じりー:すごい!いわゆる季節ネタで、企画から携わって生まれた取り組みなんですね。どんなサービスなんですか?
すーさん:万が一の災害の時に、寂しい想いをする人を減らしたいということで、持ち歩ける家族写真「かぞくの防災キーホルダー」をプレゼントするサービスを期間限定で行いました。
絶対にやったほうがいいと思ったので、キャラットが運営する写真スタジオのなかで、親和性のありそうな子ども向けブランドに声をかけてみました。社内に企画を説明したところ、ぜひやろうと一緒に実施していくことになった時はうれしかったです。その後テレビに出て反響があったことで、他の写真スタジオでも同じサービスを行いました。
じりー:すごい!やっぱり、工数を十分に割けないから最低限やるだけのことをやっているというのではなくて、しっかり事業の企画にまで入っていって、その結果が取材につながっているんですね!
話をうかがっていると、このサービスをやりたいと思ったすーさんの気持ちの源には、単に広報担当として成果を出したいということを超えた、もっと切実な思いを感じます。
すーさん:写真スタジオは家族の大切な瞬間を形にするのが生業です。私自身も2人の子どもがいて、もともとユーザーペルソナが自分に近いことをPRしたいな、という思いがあってこの会社に入らせていただいたのもあったので、入社当初から家族を守る取組みが必要だとずっと思っていました。
そんな時に、東日本大震災を経て作成された災害時の持ち出し品リストに「家族写真」があるという記事を目にしました。その時にこれだ!と思ったんです。
じりー:その思いがあって何かできないか考え続けていたからこそ、そのニュースを発見でき、社会にとって本質的に必要なことだからこそ、プレスリリースを出したときに大きな反響に結びついたんですね!!
小手先でないPR活動、ぐっときます!!
Beee!はちゃんとGive & Takeができる場所
じりー:転職して間もないタイミングでBeee!にも参加していると思いますが、Beee!にはどういう経緯で入ったのでしょうか。
すーさん:これまでは広報のコミュニティ的なものに入ってなかったのですが、広報PRの実践について他の人はどうしてるか、あまり知らないまま6年やってきて、その間に出産・子育てもしていて、世間と距離ができていくのが非常に怖かったんです。コロナのタイミングでより分断されちゃった感もあって誰かとコミュニケ―ションとりたいと思っていました。
そんな時に縁あってBeee!のことを知り、でんちゃんのnoteを読んで、ここなら実務レベルで相談できる場なんじゃないかと、すごく面白そうなことをされているなと思いました。
じりー:実際どうでしたか?
すーさん:思った通りでした。みなさん、PR広報とちゃんと向き合っている方が多いと思いました。あとは、少人数ながらいろんなタイプの広報さんがいて。そして課題を持っていくと、真摯に回答をもらえます。
世の中には、繋がっていることだけが目的化しているようなコミュニティもあると思うんですが、そういうのではなく、ちゃんとGive & Takeができる場が心地よいと思いました。
じりー:すごくわかります!私も激しく同意です!!
全てが繋がって今があるから。これからも優しくありたい。
じりー:美大を出て、編集や制作の仕事をして、広報になって、今は経営企画室の仕事もこなして、縁を大切に、求められることに応じて柔軟に幅広く経験を積んで今に至っていると思うんですが、これからどうしていきたい、と思い描いているようなことはありますか?
すーさん:そうですね、広報は続けたいなと思っています。広報を軸にしながら、えり好みせず、未経験の仕事でもチャレンジしていきたいです。
20代の頃の私は美大を出たのにデザインが全然できなくて、デザイナーのような仕事に就いていないということについて引け目を感じている部分がありました。ただ、様々な仕事を経験して、30代になって、命を懸けて守りたい家族もできて。その全てが今の仕事に繋がっているんだと本当に思えるんです。あの頃の気持ちも浄化されたというか。
この年齢で未経験の仕事に挑戦できることをとてもありがたく思っていますし、またいつかこうして今やっている仕事も未来にどこかで何かに繋がったらいいなーと思っています。
じりー:素敵なお話ですね!私はすーさんとほぼ同年代ということもあって、広報PRの仕事観を超えて、30代の女性の生き方についても考えさせられます。
すーさん:そうですね。30代になってからの方が生きやすくなったなと思います。他人に過剰な期待もしなくなって、気にしていたこともまぁ仕方ないかなって思えるようになって。あと、思うことはこれからも人に優しくありたい。強さより優しさ。人が目の前で傷ついたりしているのは嫌いなので。
じりー:「優しくありたい」。簡単なようでとても深いテーマ!!最近私も思うんですが、人に優しくあるためには、まず自分自身が自分の生き方を肯定できる必要があると思っていて。
すーさん:そうなんです。すごくわかります。最近、自分の芯の部分ができてきからこそ、改めて優しくありたいと強く思います。
じりー:そんなすーさんの優しさが、新たな縁を導き、これからも会社と社会を繋ぐ架け橋になるような広報PR活動に結びついていくんだろうなとわくわくしました。
編集後記
気付けば3時間ぶっ通しで話し続け、最後には謎のカタルシスを感じていた最高のインタビューでした。(泣く泣くカットしたエピソードがたくさん)
すーさんが同じ場にいると、空気がまあるくなって不思議と居心地が良くなる感覚があったのですが、それがなんでなのか、このインタビューを通じて少し見えて来たように思います。
また、話の中にもあったように、広報にはいろんなタイプの人がいて、それぞれのやり方で成果にアプローチできるのが面白いと思うのですが、すーさんのような会社と社会に優しく寄り添うような広報PRの在り方もこのインタビューを通じてお伝えできたらと思っていました。
すーさん、素敵なお話をありがとうございました!
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