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【超大作】もう、筋膜・内臓アプローチで開業する時代は終わって良いんじゃない?【元信者】

世はまさに整体院開業時代。
身の回りでも整体院を始めたという方が多いのではないでしょうか。

整体院で行うサービス内容は千差万別であり、とても個性豊かな事業形態だと思います。

なのに、ほとんどの整体院が「筋膜」と「内臓」の清一色。個性豊かとは一体?しかも、この2つを売りどころにすると違反行為になりかねないリスクがあります。

ということで、今回は整体院経営において「筋膜」や「内臓」への介入をオススメしない3つの理由ご紹介します。

①医師法・あはき法に対する違反性が高い

急に法律の話し?と思うかもしれませんが、めちゃくちゃ重要です。

簡単に言うと、筋膜・内臓よりの介入を全面に打ち出しすぎると業務停止命令が下るほどの強い違反として捉えかねないということです。

まずは、医師法とあはき法についてご紹介します。

【医師法 第十七条】
医師でなければ、医業をなしてはならない。
引用:e-Gov
【あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第一条】
医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。
引用:e-Gov

えーと、ただ紹介されるだけだと意味わかりませんよね?
てことで、以下に整体院でやったらダメなことをまとめました。

・疾患名を付けたり疾患に対する治療はダメ
・症状の改善を目的とした画像所見や血液検査の活用はダメ
・指圧(治療を目的に手や指で押すこと)はダメ
・疾患に対して道具を用いた物理療法を行ってはダメ

まとめていた私自身の率直な感想は「整体院って何にもできないじゃん?」です。ちなみに「腰痛」や「肩こり」などの症状に対する介入は黒よりのグレーです。それが疾患から起因するものであればアウトだと思われます。

整体院が本当に顧客として扱っていいターゲットはめちゃくちゃ少ないです。

ここら辺はめちゃくちゃ調べた結果で分かったことがあります。保険下で自分の武器として振りかざしていた強みは保険外ではほぼ全てダメになるということです。

整体院では”健常者に対する症状の改善を目的としない整体やトレーニング”であれば、業務として行っても良いという解釈ができそうです。

②理論も効果も十分に実証されていない

セラピストあるある、徒手療法系はエビデンスあるなし問題になりがち。

てことで、そんな話を筋膜・内臓でもやります。
今回は筋膜・内臓について以下の4つの問題に論点を当てて書いてみました。

Ⅰ.【筋膜はゆがむのか問題】
Ⅱ.【筋膜・内臓は徒手的に動くのか問題】
Ⅲ.【筋膜・内臓の評価は適切なのか問題】
Ⅳ.【筋膜・内臓への介入は効果があるのか問題】

Ⅰ.【筋膜はゆがむのか問題】

結論:ゆがむと証明された基礎研究などは無いため、証拠不十分

Fascial distortion model(筋膜歪みモデル)という概念があります。これは、すべての筋骨格系の障害の原因は筋膜の変形やゆがみであることが基盤となっている概念です。

1990年代に発案されたモデルではありますが、これを証明する臨床研究はおろか、基礎研究すら見つからないようです

引用:Christoph Thalhamer:A fundamental critique of the fascial distortion model and its application in clinical practice,Journal of Bodywork and Movement Therapies,2018

Ⅱ.【筋膜・内臓は徒手的に動くのか問題】

結論:そんなもん動くわけねーだろ

なんとも辛辣な意見。ちなみに、これは私の意見ではなく引用した論文に近いことが書いてあったので書いてみただけです。攻めるならこの論文の著者を。

今回紹介する論文は(論文のタイトル)です。これはめちゃくちゃ面白い。
リリースは筋膜を引き伸ばして癒着を解消するものですが、筋膜を1%圧迫するのに800kg以上、引っ張るのに必要な力は420kg以上と言われています

引用:Hans Chaudhry ft al:Three-Dimensional Mathematical Model for Deformation of Human Fasciae in Manual Therapy,JAOA,2008

横綱力士くらい強くなったら筋膜リリースが出来るのではないでしょうか?

今回用いられているのが、あくまで数学的モデルなので人体でも同様の結果になるとは限りません。また、モデルに用いたのが足底腱膜なので筋膜としては強固だった可能性はあります。

Ⅲ.【筋膜・内臓の評価は適切なのか問題】

結論:触れてすらいねーから無駄な努力はしなくていい

こちらも論文の考察部分で書いてあったことです。無駄な努力っていう表現は中々すごいですね。

この論文は胸椎を徒手的に動かす際に、どの組織がどの程度動くかという研究です。
結論から言うと、施術者が胸椎に指が引っかかった(hookした)感覚は、あくまで皮膚の上を指が滑っているだけで筋膜も骨も動いてないということでした。

引用:David E.Bereznick et al:The frictional properties at the thoracic skin–fascia interface: implications in spine manipulation,Cilinical biomechanics,2002

これは個人的に結構ショックな論文でした。今まで筋膜リリースだけでなく関節モビライゼーションやカイロプラクティック、オステオパシーなども学んできました。

それが全て錯覚だったと言わんばかりの内容だったので、受け入れるまでに時間がかかりました。

Ⅳ.【筋膜・内臓への介入は効果があるのか問題】

結論:効果はあるとは言えず、エビデンスレベルは低いため調査の継続を要する

この論文では筋膜リリースが筋骨格系疼痛にもたらす効果を検証した論文を集めて、効果があったかどうかを見たものになります。

結果は、痛みや機能障害に対する有意な効果を認めることができなかったとされています。

引用:Katri Laimi et al:Effectiveness of myofascial release in treatment of chronic musculoskeletal pain: a systematic review,Clinical Rehabilitation,2017

ここで扱った論文はバイアスリスクが高いものが多く、現状では筋膜リリースを臨床で用いるのは得策では無いと言えそうです。

また、筋膜マニュピレーションに関しても突っ込みどころがあります。

改善メカニズムは「筋膜内のゲル化したものをゾル化するために炎症を起こして筋膜配列などを正す」とありますが、ゲル(固体)がゾル化(液体化)するのに必要な温度は85℃。

これを徒手的な摩擦で引き起せたらガスコンロいらないよね。
しかも、タンパク質の変性が約60℃で起こるので、ゾル化する前に筋肉が死ぬんですがそれは…という状態になってしまいます。

内臓アプローチに関しては、触る際に皮膚・脂肪・筋膜などを介して触るため疼痛に対してゲートコントロールやDNIC(広汎性侵害抑制調整)が働くと考えられます。

つまり、「内臓アプローチした=痛みが良くなった」ではなく「内臓を触ろうとして色々なものを介した=そのおかげで痛みが良くなった」と言えます。

※ゲートコントロール(理論)
触刺激により痛みが抑えられるメカニズム
➡「痛い痛いの飛んでいけ」で痛いところを触ると、痛みが緩和される現象
※広汎性侵害抑制調整(DNIC: Diffuse Noxious Inhibitory Control)
疼痛部位と異なる身体部位に侵害刺激を入力することで疼痛部位の閾値が上昇する現象
➡痛くない場所をつねってたりして、本来あった痛みを感じにくくする現象

まとめると、現状では効果も評価も「気のせい」としか言えないものを何故売りにしているの?と疑問に思うような内容ばかりということです。このままでは、筋膜・内臓アプローチは神話のままで終わります。そりゃ信者も増えるわけだ。

③健康被害の危険性

整体院による健康被害は2007~2012年の間に825件報告されています。

その中の報告内容としては以下の通りです。

施術を受けて危害が発生したと明確に判別できる相談が少なくとも4割以上を占めた。
危害程度の回答があった640件のうち498件(77.8%)は危害発生後に医療機関を受診していた。
危害部位は、腰部・臀部(でんぶ)や首、胸部・背部が多かった。
引用:独立行政法人 国民生活センター Q&A

ちなみに、理学療法士・作業療法士はあくまで「医師の指示のもと」の資格なので、整体院に関しては「法的制度の無い資格」に分類されます。

あと、私の実体験ではありますが近隣の整体院・接骨院で筋膜・内臓にアプローチしているところがあります。そこでは「やった直後は痛くて気持ちが良いし身体が楽になるけど、その後は痛みが強くなり何回通っても全然良くならない」という意見が結構多いです。

筋膜・内臓系の介入は深部まで圧をかけることも多く、ワーファリンなどの抗凝固薬を飲んでいる方は内出血を起こしかねません。

お客さんは良い嘘を付いてくれます。やるならちゃんと事前評価・モニタリングを行いましょう。

④【筆者談】元筋膜・内臓信者の洗脳が解けた時

多方向のセラピストを敵に回しそうな本記事を書いている私ですが、実は元筋膜・内臓アプローチ信者です。


2016年までに出版された日本語・英語の筋膜関連の書籍は全て持っていたと思います。また、論文は200部以上は少なく見積もっても読むくらい盲信していました。なんなら、筋膜性疼痛症候群学会というものにも所属していました。

筋膜・内臓を勉強し始めた理由はただ一つ。アイデンティティが欲しかったから。
目に見えない・感覚的な介入・患部から離れた部位からの治療で改善する

当時の私の3大信仰要素を満たしたそれらは、私のアイデンティティを潤沢にし、後輩を中心に「筋膜最高宗教」を各地でキャンペーンしました。

しかし、ある日臨床でいつものように筋膜リリースしていてふと気付きました。

「私の治療、効果低すぎ…?」

私は回復期で所属していたので最大6か月担当患者と付き合うことになります。その場の治療では良くなることが多いのですが、数か月単位で見ると運動機能がほぼ変わっていないことに気付きます。

そして、今回のように筋膜・内臓関連の論文を調べまくって効果が無いと知り、普通の運動療法をするとめちゃくちゃ良くなったので、洗脳が解けたというわけです。

当時の私と同じ境遇の方は必ずいると思います。これを機に自分の介入を見直すのもいいのではないでしょうか。

⑤今後の「筋膜」「内臓」整体院の末路

長かった筋膜・内臓物語。ここが終点になります。

今後の筋膜・内臓には以下のような環境が待っていると思われます。

Ⅰ.【筋膜・内臓関連の広告規制】
Ⅱ.【エコーや振動刺激機器の使用規制】

Ⅰ.【筋膜・内臓関連の広告規制】

ここからは整体院を開業している方にとっては良い情報だと思います。

結論から言うと、令和3年度に整体院の広告に規制が入る可能性があります。もしかしたら、そのタイミングで業務の取り締まりも起きるかもしれません。

厚生労働省が現在規制を検討しているもの一例としては以下の通りです。

・料金表示
・煽りなどが入った挨拶文
・利用者の声
・実績や資格の表示
・医療を彷彿とさせる単語 など

です。上記の内容を完全に載せないか条件付きで載せるのは現状では分かっていません。ただ、今の整体院の広告の99.9%くらいは規制対象になるかもしれませんね。

つまり、HPやチラシなどで筋膜リリースやってます!というようなアピールが規制される日が近いということです。
近々来るこの流れに乗り遅れないように、今のうちから準備しておくのが良いのではないでしょうか。

ちなみに、この内容の一次情報は探せばあるのですが、気になる方は自分で探してみて下さい。今後も整体院を経営するつもりであれば、このような情報を自力でリサーチ出来ないと生き残るのは難しいと思います。
ぜに、この機を境に自分の職域に関するルールや動向を探す癖を付けてみて下さい。

Ⅱ.【エコーや振動刺激機器の使用規制】

整体(医療類似行為)は基本的に道具を用いない手技的な介入ですので、エコーも振動刺激系の道具も、診療の補助(疾患に対する治療など)を目的に使用するのであれば違法対象かもしれません

ちなみに、疾患や症状の改善を目的としなくても健康器具を扱うこと自体が医療類似行為として取りしまった事例もあります。八方塞がりじゃん

※整体院経営を批判する気は一切ありませんが、利用者に誤解を招くような広告や責任が取れない程の危険に晒しかねないサービス提供を平然とやっている事に疑問を感じたため本記事を作成しました。
地域リハビリに関わっている身として、整体院などによる健康被害を受けた利用者も多いので、これを機に経営方針を見直していただけると幸いです。

ということで、今回の筋膜・内臓論争は終わりです!

筋膜・内臓は短期間にのみ効果があると主張する論文もあるので、筋膜治療をする➡短期的な効果を感じて顧客満足度が上がる➡でも症状が再発してリピートが増やせるといった「筋膜・内臓式健康破壊サイクル」を作れます。

整体院と(ある意味で)相性が良い介入なので、今後も増え続けていくと思います。
ちゃんとしたヘルスケアサービスが世の中に拡がっていくことを願って締めさせていただきます。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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