Hello, Devine Family! 〜オーストラリア紀行 その2〜
2023年6月、ビーエコスタッフHがオーストラリアの地で、Bee Eco Wrapの作り手、Devine(デヴァイン)一家に会いに行った際の紀行日記、「その2」です。
渡航時からすでに1年が経っていて申し訳ないですが・・・
今回はいよいよデヴァイン一家が住む土地と案内してもらった内容です。
作り手のMatt(マット)が住んでいる町のことや、彼が出店しているマーケットの話、いよいよ彼らの家にお邪魔します・・・というところまでのお話はこちらの「その1」をぜひ読んでいただけたら嬉しいです。
木が多い茂る森の中を抜けた先の、突如開けた土地。
そこがデヴァイン一家の住まいでした。
もう、広い!以外の感想出てこない。
どこからどこまでが敷地なのかわからないくらいです。
建物がいくつか建っているんですが、その1番奥に見える建物の近くまで車を走らせます。ここが彼らが生活している家。
到着するとすぐに中から人が出てきてくれました。
奥さんのGeraldine(ジェラルディン)、お子さんたち3人がフレンドリーなハグで出迎えてくれます。
マット同様、昔から知っているような感覚で温かくなります。
どうぞ、ともらったビールを開けつつ、家の前にあるベンチに腰掛けながら午後のひと時をご一緒させてもらいました。
上の子2人は進学を機に別のところへ移ってるからこの家にはもういないの。今は娘3人が家にいて、みんなこの地域でホームスクールを受けているのよ、とジェラルディン。地域の子どもの保護者がそれぞれ得意な分野の講師となって一緒にホームスクールをするそう。詳しいシステムは伺えなかったのですが、ここにはそんな選択肢もあるのか・・・と感銘を受けます。
座ってるベンチの目の前には池と森という広々とした空間。
池を指しながら「ついこの前完成したんだ」とマットが紹介してくれます。「この子達も嬉しくてさっきまで泳いでたみたいだよ」と。確かに足につけるフィンとゴーグルが置いてある・・・
え?完成?
思わず「作ったの?!」と聞くと、そうそう、と軽快な返事。
穴を掘り、水を引っ張ってきて循環するシステムを作り、岩を集めて、睡蓮を植えて・・・本当に最初から最後まで自分たちの手で作ったといいます。
ご縁があってとっても素敵な岩を仕入れる場所が見つかったの〜とジェラルディンが話してくれます。
そしてこれから魚を放つ予定だから、それまでは泳いで楽しむらしい。
この広大な敷地を自分たちで守り開拓してきたことは承知の上でしたが、ついこないだ完成したのものを目の当たりにすると凄さを改めて認識します。ソーラーシステムや生活使用水をイチから作る、きちんと循環させ管理する、環境と調和しながら生活しパーマカルチャーやバイオダイナミック農法を活用して有機農産物を栽培して暮らす。何をどう始めるのか見当もつかない私でも大変な手間と苦労がかかるということが想像できます。
BeeEcoの作業場はどんな感じ?
そんな話や身の上話をひとしきりした後にマットから「作業場、見る?」と提案がありました。ぜひにも!!!と食い気味で返事をした私を案内してくれます。
作業場は「今住んでいる家」と紹介してくれた建物のすぐ脇にありました。なんならこの家も作業場も彼らが建てたそうで・・・
この家の前は別の場所、といっても同じ敷地、に建っているお家に住んでいたそうです(後ほどご紹介しますね)。
作業場の横にはマットが育てている盆栽が飾ってあります。彼の「日本好き」が現れていて嬉しくなります。
さて、肝心の作業場!
蜜蝋ワックスをかける作業台の下には裁断を待つ布がたくさん並んでいます。
そしてその横の台には蜜蝋ワックスの塊がたくさん!
蜜蝋100%の塊と、蜜蝋・コールドプレスホホバオイル・樹脂を混ぜた蜜蝋ワックスの塊が両方並んでいるんですが、面白いことにミックスされた蜜蝋ワックス塊の方に蜂たちが寄ってくると教えてくれました。「なんでなのか、不思議なんだよね」と。
週2回マーケットへ出店しているのでその日は作業お休みなんだとか。ということで残念ながら本日の作業はお休み。(マーケットの様子は「その1」に書いてあります)
作業をしてるところを見せてもらえたら良かったのですが、それはきっとまた次の機会に・・・
「1週間のほどんどは家や土地のメンテナンスばかりでこれが中々大変。マーケット日はそれをしなくていいから僕の休日だね」と笑います。
現在は1週間に100枚以上、ピーク時になると1週間に1000枚作ることもあるようで、作業内容はというと:
布をサイズごとに裁断
布の皺を伸ばすために一枚一枚アイロン掛け
蜜蝋、ホホバオイル、樹脂を混ぜ合わせ、BeeEcoのみつろうラップの決め手となるワックスを作る
独自のワックスを布に一枚一枚丁寧に塗り込み、1日かけて乾燥させる
全ての工程はかなり重労働で、ワックスを均一に塗るためにも集中力がいるそう。
この作業を一人で?!と聞いたところ、「前は5人ほど手伝いに来てもらっていて布の裁断と別のマーケットへ出店してもらっていたんだけど、今は僕たち夫婦だけでやっているよ」とのこと。
以前はオーストラリア国内外の約70店舗へ卸販売をしていたそうなんですが、原材料の高騰が理由でほとんどの卸販売を停止し、現在は繋がりのある僅かなお店にしか卸していないそう。
その数店舗とマーケット、オンラインショップ以外には日本のみの販売となっていて「日本に送る一枚一枚を全て手作りで作ってるよ。日本に3年住んでいたこともあってとても親しみを感じているんだ。僕の手で作ったBeeEcoが日本のプラスチック削減に貢献できるということは人生を満たしてくれてると言ってもいいかもしれない。日本での経験はたくさんのものをくれたので、そのお返しができるのは良いよね。」と教えてくれました。
果樹園
作業場を後にして庭(という規模ではない)を案内してくれます。
池を背に少しだけ上がっていくとポツリポツリと木が植えてあります。こちらは果樹園。オレンジやレモン、珍しいところだとレモンマートルという爽やかな香りがするオーストラリア固有の木も。アボカドの木もあって、毎年たくさん実をつけてくれるのだとか。
羊の放牧もしていたけど、どうしても植えた木や野菜を食べてしまうから羊達は引き取ってもらい、今はこの果樹園に方向転換したと言っていました。
「この土地は1代だけのものではなく、子どもたち、さらにはその子どもたちと受け継がれていくところ。その時彼らにたくさんの恵を与えくれるよう、今たくさんの木を植えているんだ」
The Tea House
果樹園をぐるっと周り、車で入ってきた方へ向かっていきます。
「ここがTea House(ティーハウス)だよ」と教えてくれます。そう、ここが先に書いた「前の家」。ここで本当に最初のBeeEcoが始まったそうです。今の家を建てる前はここで全ての作業をしていたとのこと。
とっても趣のある建物!
歴史を感じる建物ですが、丁寧に手入れされていて、窓やランプ、壁などがお洒落。手の込んだ職人が作ったであろう空間にずっといたくなります。
さて、ティーハウスとは・・・?なんでその名前なの?と聞いてみます。
元々、イギリス人が戦地へ出向いた時の報酬としてこの土地を持っていたことが始まりだと言います。そのイギリス人が、この場所を通過する旅人の休憩所としてお茶を振る舞うために建てられた家だそう。
今は空き家ってこと?と尋ねると、「もうすぐリノベーションが完了するから、そうしたら〈Away from everything(全てから離れる)〉時間を提供するAirBnBを始めたいとのこと。スマホやテレビから離れ、火を起こして食事をし、星空を見ながらシャワーを浴びる。
それはとっても贅沢な宿泊施設!ぜひとも訪れたい!と伝えると、日本の皆さんにも来てもらいたいよ、と言っていました。
木と森の管理
そんな素敵なティーハウスから今度は木材などが置いてある場所へ移動します。
この資材は何か建てるように購入して置いてあるのかな?と考えていると、「この土地の木を切って木材用に保管してるんだ」と説明してくれます。
木を?切る?自分で?結構な高さよ?
と驚いていると「自分で伐採してノコギリでカットして。それも仕事のうちなんだ」と。そう言いながらオーストラリアの自然と人間の営みについて話してくれました。
マットたちが住むヌーサは洪水が発生したり、山火事に見舞われる土地。昔はそれほどの頻度ではなかったはずが、今では毎年のように災害が起こるそうです。これまで保たれていた生態系や循環が人の過度な介入よって壊され、自然破壊につながっていると言います。
また、火災の観点からも伐採は必要とのこと。これは地域の消防からも言われていることだそうで、一度自然発火が起こってしまうと一面焼けてしまうような土地ということもあります。それを未然に防ぐためには木を定期的に間引いて森を管理することが必要なのだそう。アボリジニ先住民族だけが暮らしていた頃は生活用に木の伐採を行ったり、土地や種を守るという意味で意図的に火災を起こしたりして大規模な山火事を防いでいたそう。植民地となった後に「火入れ」は禁止となり生態系のバランスを崩す原因の一つとしてなってしまっているそうです。
この土地とこの森を守ることは使命だと感じているよ、と話してくれます。
ひとしきり聞いていて思ったことは、色々な分野に関しての知識が豊富ということ。
自分たちの住んでいる土地の歴史、環境、自然がどんなものかを熟知していて、それを今の彼らなりの方法で継続しているということに感銘を受けました。
私は自分の住んでいる町のことや歴史をどれだけ知っているのだろう、とハッとさせられます。
ぐるっと歩きながら案内してもらい、また家の方まで戻ります。
同じ敷地内に、ソーラーシステムが備わっている小屋やオープンピザ窯のあるテラスなどもあったりして聞きたいことも山ほどありますが、残念ながら夕飯の時間も迫ってきていたので今回はここでお別れです。
お互いに持ってきていてたお土産を交換して、最後に写真撮影。「またすぐに会おうね」と言い交わして、元来た道を戻ります。(帰り道、来た道と違うところを通ってしまったようで、分岐点なんかあったかな?と言いながら、少し迷いました笑)
自然と共に生きる、ことを1/10も体験したわけではないですが、自然の風と音と空気を存分に味わい、デヴァイン一家の温かみと想いに触れた1日となりました。
彼らの描く未来像とは
今回マットとお話しした中で印象的だった会話があります。
欲しいものは何もないんだよね。全て持っているから。
愛する家族がいて、自然を思う存分吸収できる場所と家がある。あとは将来、僕らの子ども達とその次に続く世代へと受け継がれていくこの土地で、不自由なく暮らせる場所を作っていくことができればいいんだ。
何かの拍子にこう言われて「さて、私はこんなことが言えるだろうか・・・」「もっとこれが欲しい。こうなりたい、が最初に思い浮かぶな」と思ったのを覚えています。
心からそんなことを言えるようになるにはまず、周りの環境や習慣、そして今の自分を知ることから始めようか、と考えさせられた言葉でした。
下記の文章は、帰国後この土地に移住した理由をもう一度詳しく聞いた時のマットからのお返事です。彼らの生活と未来像を綴ったもので今回の記事を終わりたいと思います:
僕たち、特に子供たちの人生に対する未来像は、自然の中で自給生活をすること。食料を
育て、太陽光発電で電力を作り、雨水を自分たちで汲み上げる。完全なる自給自足。そんな生活を維持するためには、家族、農場、ビジネスのバランスを見つける。BeeEcoラップを作り、自然に寄り添いながら生活できることにとても感謝しています。
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