プラごみの行き着くところは…?
プラスチックについて No.3
ビーエコフレンズの皆様、こんにちは。
2022年もどうぞよろしくお願いします!
さて、新しい年最初のスタッフコラムは「プラスチックについて」の最終章、「私たちが出したプラごみは回収された後、どうなっているか…」について書いていきたいと思います。
第3弾となる今回の内容はどうしよう…と悩んでいたところ、スタッフNから「結局のところプラごみってどうなってるのか知りたくない?」と提案され、確かに私も気になる…と思い調べてみることにしました。
少し長くなりますが、お付き合いくださいませ。
【本題の前にちょこっと前情報】
まずはインターネットに聞いてみます(笑)
するとプラごみの行方を調べれば調べるほど「プラスチック容器包装法」という単語がよく目につくことに気づきました。
そこで、前情報として「プラスチック容器包装法」に関して簡単にご説明。
環境省のホームページによると:
「家庭から排出されるごみの重量の約2~3割、容積で約6割を占める容器包装廃棄物について、リサイクルの促進等により、廃棄物の減量化を図るとともに、資源の有効利用を図るため、平成7年6月に制定され、平成9年4月から本格施行された法律です。」
要は、容器包装のごみがとっても多いので(家庭から出る約6割はかさばる包装材!)、それを減らす&再利用するために作られた法律です、ということです。
さて、その内容なんですが、かなり要約すると:
①私たち「ゴミを出す人」がそれぞれの地域のルールに沿って分別
②それぞれの地域(市町村)が分別回収
③ガラス、ペットボトル、紙製容器包装、プラスチック製容器包装のいずれかを使って商品を製造している事業者の再利用商品化の義務。
この3番目の義務に関しては細かいルールがありますが、商品を製造や販売をしている企業は、ゴミとなってしまう自社商品の一部は自社・委託するなどして再商品化してくださいね〜というもの。
元々各自治体で資源回収のシステムが整っていた日本ですが、この法律によって商品をつくる人と消費する人それぞれがより責任をもって分別&回収するという仕組みができました。
詳しいことは以下を見てみてください:
環境省のHP
http://www.env.go.jp/recycle/yoki/a_1_recycle/index.html#recycle_02
農林水産省 日本財団食品産業センター
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/youki/y_gimu/pdf/data06.pdf
日本容器梱包リサイクル協会HP
https://www.jcpra.or.jp/container/system/presen/tabid/129/index.php
【ここから本題:プラスチックごみの処理ってどうなってるの?】
地域によって分別種類は様々ですが、プラスチックごみは前述の法律にそってそれぞれの市町村でルールが設定され回収&処理されています。
先ほど、「家庭から出る約6割は包装材」と書きましたが、その内訳はというと
・プラスチック39.4% ・紙類18% ・ガラス、金属、その他2.7%と、半分以上がプラスチック類となっています。
容器や梱包ゴミの約4割はプラごみということです…
では今回のテーマ、回収されたプラスチックごみは一体どこへ行くんでしょうか。
まずは数字を見てみましょう。
家庭と事業からでるプラスチックごみの有効利用率はなんと86%。(図1参照)
日本優秀!
・・・と思うのはまだ早いようです。
プラごみの最終形態は本当にほとんどが有効利用?では実際どんなものに利用されているの?と今回のテーマが頭に浮かびます。
有効利用の内訳はこんな内容のようです(図2参照)
1. マテリアル(素材)リサイクル=使い終わったプラスチックを溶かしてもう一度使う。素材そのものを再利用
2. ケミカル(化学)リサイクル=化学の力を用いて「物質」を変えて再利用
3. サーマルリサイクル(熱)=使い終わったプラスチックを溶かして発生する熱を使う方法
やっぱりリサイクルされてる!って思いますよね?
ですが、この3種のリサイクルのうちの「サーマルリサイクル」というのはマテリアルやケミカルリサイクルに適さない廃棄プラスチックを燃やすという方法。焼却時に出た熱を利用するものです。
しかし、国際的にはリサイクルと認められていないのが現状のようです。
先ほどお伝えした通りプラスチック有効利用率86%を誇る日本。上記の理由からサーマルリサイクルを抜いてみると残りの有効利用率は一気に27%になります。
実はここにカラクリが。
この有効利用27%には「輸出」という項目が半分(14%)以上含まれるんです。(図3参照)
なぜかというと輸出相手先でマテリアル、もしくはケミカルリサイクルされるのを前提として輸出しているためにここに含まれるそう。しかし、輸出先で「リサイクルされている」実態の詳細は私たち日本にはわかりません。輸出先で物質にも熱にも変換されずに単に燃やされている場合もあるかもしれません。そうなると日本国内で熱利用以外で材料リサイクル、もしくは物質の再利用がされているのはプラごみ903万トンのうち、たった14%…
また、2017年までの大半の輸出先国は中国でしたが2018年からは中国がプラごみの輸入禁止を始めたため、その後は東南アジアなどに輸出されています。
問題視される海洋プラの多くはこれらの国が排出国と言われていますが、実は上位に入ってる排出国に、日本はプラスチックゴミを輸出しています。
他人任せの上に、日本が排出しているといっていいのです。
日本の分類で分けた詳しい割合を見てみると、国内で何らかの形で再利用されているプラスチックごみは72%、14%は輸出ということでした。今回調べてみて、初めてしっかりした数字と事実を知りました…
【では地域レベルも同じでしょうか?】
これを調べ始めた当初から自分の関わる地域はどうなってるの?と気になっていました。
同時進行で私の住む自治体と勤務している自治体(どちらも東京です)にも詳細を問い合わせていました。
聞いたのはこの2点:
①ホームページには「プラごみは様々な形でリサイクルされます」とあるが具体的には?
②プラごみ全体のどのくらいの割合でそのリサイクルがされているの?
まず、私の暮らす自治体の回答です(一部抜粋)
①収集されたプラスチックは手選別により異物を取り除き、容器包装プラスチックとそれ以外のプラスチックに分別されます。
容器包装プラスチックは民間の再資源化工場でコークス炉化学原料化法によるケミカルリサイクル(プラスチック原料、コークス代替物、ガス化して発電)を行います。
それ以外のプラスチックは、民間の再資源化工場で熱分解ガス化改質法によりガス化され発電に利用されるか、固形燃料化によりサーマルリサイクルされます。
②令和2年度実績では1897tあり、処分量としては、容器包装プラスチック1298t、その他のプラスチックと異物が701tとなります。
材料プラスチックになるのは白色トレーのみで、令和2年度実績では410kgとなります。
「①」の回答は結局はどの手法も一旦燃やされているということ…?と聞いてみたところ「容器包装以外のプラスチックについては、ガス化して発電する場合と固形燃料化してサーマルリサイクルする場合の両方とも最終的には燃焼されることになります。」
とのこと。
数字から見るとサーマルリサイクルは68%、それ以外のリサイクル(材料プラスチック)はプラごみ全体の0.02%ほどという回答でした。
お次は勤め先の自治体からの回答:
①プラスチックごみは大きく分けて「容器包装プラスチック」と、製品として使用されている「製品プラスチック」に分類されます。
容器包装プラスチックは再商品化事業者に引き渡しリサイクル、製品プラスチックや汚れているプラスチックは焼却処理をして熱回収しています。
②再商品化事業者への引き渡し実績量は1531t、ケミカルリサイクルのガス化という手法で分解し、アンモニアと炭酸製品を生成しています。
平成28年実施の調査では可燃ごみの16.1%、不燃ごみの8.3%がプラスチックごみで重量は約11,547tになります。
したがって回収されたプラスチックごみのうち1割程度をリサイクルしている計算です。
予想はしていたものの、どちらの自治体もやはり大半のプラスチックごみは焼却され熱利用されているとのことでした。
(余談ですが、どちらの自治体もとても丁寧に対応してくれました。また、どちらも「回収されたごみは手で選別している」との返答が・・・!
毎日大量なごみが回収される中、膨大で大変な作業だと驚き、分別の大切さも改めて確認しました)
一方で、焼却率を減らすために自治体が活発的に取り組みをしているところもあります。
その一つが徳島県の上勝町。ご存知の方も多いのではと思いますが2003年に町としてゼロ・ウェイストを宣言し、13種類45分別(2016年~)を実践している町です。45分別とはすごいことですが、この町は何年もかけて町民の理解を得て分別を徹底しています。
その結果、平成29年度のゴミ総量285tのうち228tがリサイクル資源、57tが焼却。
なんと79.7%がリサイクル資源となっています。
プラごみの総重量とその割合など詳しいことまでは調べられていませんが、プラスチックだけでも6種類に分別されているということは、それぞれ資源、もしくは適切な処理をできる回収先があるということです。
詳細はこちらをご覧ください:
https://zwtk.jp/separate/
(たくさんのアイディアや事例も載っています)
【調べてみて思ったこと】
今回のテーマ「プラごみの行き着くところは…?」の結論は、回収されるプラごみ全体の約72%が国内で素材・物質・熱となりリサイクルされ、約14%は曖昧な輸出、ということでした。
なんとなくは聞いていましたが、こうなっているんだ・・・という発見となりました。実際にどう処理されているか、その内容はどんなものなのかを知ることができ勉強になりました。こうして数値化したゴミの量を見ると、改めてその膨大さがわかります。
このような処理方法が主流な中、奮闘している町もあり、一人一人が「ゴミを減らせる」という事実を知り行動すれば、課題である大量の焼却量を減らすことも可能、ということも発見になりました。
生産者はゴミを「燃えるか燃えないか」で考えるのではなく、「リサイクルできるかどうか」。消費者はゴミを「どう処理するか」ではなく、「そもそもゴミを出さないようにするにはどうしたらいいか」、といういう意識改革が必須ということを改めて認識しました。
こんなに長い文章を最後まで読んでくださったビーエコフレンズのみなさまにも、「そうなんだ!」「これからこうしよう」というような意識と行動変化への機会になったら嬉しいです。
HH
参考:
NHK大学生とつくる 就活応援ニュースゼミ
1からわかる!プラスチックごみ問題
https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji17/
解説委員室「プラスチックはどこへ行く?」(時論公論)
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/367843.html
一般社団法人 JA共済総合研究所 共済総研レポート No. 170
プラスチックごみ問題の現状と対応(PDF)
https://www.jkri.or.jp/PDF/2020/Rep170ishimaru.pdf
一般社団法人プラスチック循環利用協会
プラスチックとプラスチックのリサイクル(PDF)
https://pwmi.or.jp/pdf/panf4.pdf
農林水産省 株式会社廃棄物工学研究所
容器包装リサイクル法の手引き
http://www.riswme.co.jp/youki/pdf/pamphlet.pdf