雨なんだって。
もうすぐ降りそうだね。
わたしは、雨なんだって。

まとわりつく水。
体と外界の境界線が曖昧になる。
空がどんどん降りて来る。

ねむる時の雨は好きだな。
なにか柔らかい薄皮に覆われているような、水の中にいるような。
このままでいいよと
守られているような。
お母さんのおなかの中に似ている。
小さい頃、眠れない時はよくお母さんのおなかの音を聞いたっけ。
寝てるお母さんの足の間に潜り込んで、左耳を当てるとサァサァコポコポと不思議な音がしたな。

雨は人々に寄り添う。
空から溢れた水。
わたしから溢れた感情たち。
怒ってる雨、悲しんでる雨、喜びの雨。
雨は、表情豊かだ。

おばあちゃんが亡くなった時、集まりの度にたくさんの雨が降った。
お母さんが移動中に、悲しい悲しいって言ってるね、と幼い私に言った。
私はそこで、全てのものに感情が宿っていることを知った。
大人になった今も、そう信じている。

雨は人々に寄り添う。

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