追憶のバニラアイス
「カランコロンカラン」心地よく鳴るドアベルの音。
深〜く息を吸い込みたくなるコーヒーの良い香り。
キラキラのステンドグラス、綺麗に塗装された木製の家具、紅いベロアの座席。
「いつものでいい?」祖母に問う低く優しい声。
静かで少し大人っぽい雰囲気に浸りながら、よそ行きの顔を作るわたし。
白くて甘くて、しあわせの塊のような丸いあの子は、今日も透き通ったガラスの器に入って運ばれてくる。
真っ赤なチェリーと白っぽいウエハース。
まん丸なあの子は、今日はチョコレートのリボンをまとっている。
「なんてキレイ…」5秒ほどじっと見惚れてからゆっくり口に運ぶ。
幾度と食べさせてもらった味だけど、毎回感動してしまう。
「やっぱり美味しい…」
スーパーのカップのアイスクリームも、八ちゃん堂のソフトクリームも
美味しいけれど、違う。
綺麗な器に盛って飾ってるから特別そう思うのか?
いや、確実に味が違う。
この濃厚な味わい、鼻を抜けるミルクの香り、舌に少し残るザラつき、
このアイスクリームは一体何者なんだ!?
わたしに強烈な記憶を刻み込んだそのアイスクリームは、
謎を残したまま、喫茶店と共になくなってしまった。
店主の手作りだったのか、業者から仕入れたものなのか。
お店の名前は思い出せないけれど、
あのアイスクリームの味は忘れられない。
喫茶店のドアベルの音、コーヒーの香り、話好きだった祖母、美味しい物が大好きだった祖父。
もう30年以上も経つのに、あのアイスクリームの味は、幼少期の幸せだった記憶とセットになって昨日のことのように目の前に広がる。あの頃の五感で感じ取ったすべてのものが。
わたしの目標は「楽しかった!」と記憶に刻まれるような、好奇心や五感を刺激するような、「思い出となるもの」を子どもたちに届けることです。
勝手な使命感から「50ice cream」が誕生しました。
アニメーションは只今準備中です。
少しでも早くお届けできるように、日々頑張ってまいります。