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ChatGPTは人間になりきって仕事ができるのか | 上司と部下のメールを通して見るLLMの可能性

はじめに

ChatGPTでビジネスメールのやり取りは可能なのだろうか。人間が介在しなくても仕事をしてくれるのだろうか。仕事のシーン、特によく使われるメールをつかったコミュニケーションにおいて、ChatGPTを活用するとどのような活動が行われるのか気になったため、検証してみました。今回利用しているのはGPT-3.5です。

テーマは小難しいと思われるかもしれませんが、ここでは実際のビジネスシーンを書き上げ、リアルなシミュレーション形式でご紹介します。小説を妖夢ような気持ちで眺めてみてください。

シナリオ作成

ここでは架空のシナリオを作成しました。IT企業で働く上司と部下のプロジェクトスコープに関するメールのやり取りです。いかにもありそうなテーマを書いてみました。

まずは上司からスタートします。事前にいくらかの背景情報を記載しています。これはメールの文章がより意図したものになるようにという理由で付与しています。

後半には部下との関係性や状況を記載しています。これを元に部下へのメールを作成してもらいます。

上司から部下へのメール:1通目


まず上司ヤマダさんから部下に送られたメールがこちらです。

まず気付くところが、文体に違和感かもしれません。「拝啓」「敬具」といった部分は上司と部下という関係では使わないですね。
前提事項でいくらかの情報を与えたものの、このあたりは人間にはなりきれないようです。

一方で懸念点自体はしっかりと伝えられています。少し圧がある気もしますが、最後にはサポートが必要であればと気遣い的なことばも追加されていますね。

部下から上司への返信:2通目

続いて部下、サトウさんのターンです。

こちらもまずは背景情報の付与から行なっています。
上司に対して軸を部下側の目線に移しています。

そして上司へのメール返信を作成します。ここでは特に細かい指定をせず、シンプルにメールを返信してもらいました。

ここで送信されたメールがこちら。

やはり文体は上司同様違和感が残りますね。文章が全体的に固いです。実際に部下からこのようなメールが来たらちょっと怖いですね。
一方で問われた部分、要件についてはしっかりと現在の状況や今後の方針を返信しています。まずまずではないでしょうか。

上司から部下への返信:3通目

続いて、上司の返信です。ここでは少し補足を入れています。

実はこの前に単に返信するだけの内容で試してみたところ、同じようなメール内容の堂々巡りになってしまいました。そこで、より具体的な内容についての感覚を付与しています。

そして上司によって送信されたメールがこちら。

文体については割愛します。確認内容は少し直接的な表現と感じる人がいるかもしれませんが、明記されています。また、その前後には感謝の言葉や期待などを伝えていて、全体としての構成は悪くないように思えます。

部下から上司への返信:4通目

さて、部下はどのように反応するでしょうか。

ここでは補足情報なく、シンプルにメールを作成してもらいます。

指摘内容についての返答が記載されています。受け取り方次第ですが、少し曖昧な気もします。「指摘事項は認識しました、しっかり対応します」という形ですね。上司側の目線では、人によっては煙に巻こうとしていると受け取る場合もありそうです。

上司から部下への返信:5通目

次に、上司によるメール返信です。

ここでも少し補足を入れています。補足がない場合、前回と同じメールになってしまったため、少し掘り下げるために指示内容まで記載しました。

これを元に送信されたメールはこちら。

当たり前ですが指示内容を盛り込んだ返信になっています。強めの指示にしたためか、メール文面にも緊迫感がありますね。こんなメールが送られてきたら温度感が急上昇しそうです。


メールを受信した部下に対しては、具体的な内容を返信するように補足しました。

部下から上司への返信:6通目

部下より返信されたメールがこちら。

指示の甲斐もあって、しっかりと具体的な日付を回答しましたね。メールの文章構成としては少し冗長な気もしますが、悪くないと思われます。

まとめ

本記事でのテーマはこちらでした。

ChatGPTでビジネスメールのやり取りは可能なのだろうか。人間が介在しなくても仕事をしてくれるのだろうか。仕事のシーン、特によく使われるメールをつかったコミュニケーションにおいて、ChatGPTを活用するとどのような活動が行われるのか気になったため、検証してみました。今回利用しているのはGPT-3.5です。

架空のシナリオを通じた上司と部下のやり取りを通してどう感じましたか。
人間が介在しなくとも、ある程度はビジネスコミュニケーションが成り立ちそうでしょうか。

個人的には、メールのやり取りという骨子に関しては過去に類を見ないほど丁寧で具体的な内容が生成されると感じています。
指示内容だけでなく、一般的なシチュエーションも盛り込まれています。例えば丁寧な言葉使い、感謝や期待の伝達、冒頭と結びの文書などが補完されています。この辺りは非常に有用かもしれません。

一方で、文体に関しては少し難易度が高そうです。上司と部下の関係である程度カジュアルな関係性を伝えたにも関わらず、取引先に送るような固い文章になってしまいました。もう少し深く指定することで改善されるかもしれません。

また、メールの質疑に関しては曖昧なところが多い印象でした。シナリオ自体が具体的ではないので仕方ないかもしれませんが、「懸念があります」「検討します」のようなフワッとしたコミュニケーションに留まりました。ここに関しても、より具体的な内容を与える必要がありそうです。

ただし、シナリオの段階で全ての指示を与えることは難しそうです。人間の頭の中では、「こういう状況だったらここを確認する」といったように、条件とその結果ごとに質問が変わります。これらをすべて事前に与えることは現実ではないため、都度軌道修正をする必要があるように思えます。

さて、今回の記事は以上です。
ビジネスシーンにおける大規模言語モデル(LLM)の可能性や課題について、少しでも何かを考えるきっかけになれば幸いです。
感想など、冒頭のツイートにコメントしてもらえれば嬉しいです。

関連書籍

ChatGPTに関する書籍はここ最近多く出版されています。
一方でその内容は利活用に終始したものが多く、ITリテラシによらないターゲット向けに書かれているという印象です。

そのような書籍が不要な層にとっては、何をインプットすれば良いのでしょうか。具体的にはChatGPTなどを使ってみてその可能性や課題をその身で感じることが良いと思います。本記事のようにさまざまな発見があるはずです。

それ以外の選択肢としては、仕組みの中を知ることだと思います。ITエンジニアの中では下記書籍が紹介されることがあります。LLMまでは理解できずとも、関連する技術エリアとして基本的な仕組みは学んでおいて損はないと思います。私も購入しました。


おまけ

今回、最後の部下からの返信はどうなっていたか覚えていますか。この記事は4/30に書いたのですが、部下からは5/10までに返信する記載がありました。

さて、部下のサトウさんはゴールデンウィーク中に働くのでしょうか。気になりますね。メールのやり取りの続きを見てみましょう。

まず、上司ヤマダさんからの返信です。

休暇を取る場合は教えてくださいとあります。少し不明確ですが労働しなさいという雰囲気があるような気もします。不穏ですね。

これに対する部下サトウさんの返信がこちら。

5月10日までの納期については、ゴールデンウィーク中もプロジェクトの進捗に取り組む予定であります。休暇を取る予定はございませんので、ご安心ください。

…………祝日返上で労働してしまいました。社畜の鏡ですね。彼らの世界観では祝日は休まないようです。日本の社畜マインドがしっかり根付いていますね。




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