見出し画像

【短編小説】猫とプラモデル

「ガチャン!」

棚の上のロボットのプラモデルが床に落ちた。

ロボットの右足が股関節から折れてしまった。

「こーら。マル。危ないだろ。」

マルはウチで飼っている灰色の猫だ。

マルはよく、棚の上のものを猫パンチで落とす。

「あー、関節が折れちゃってるから接着剤でくっつけるしかないな。」

手だれのモデラーなら、関節が動くまでに復元できるのだろうが、自分にそんなスキルは無い。

右足を接着剤でくっつけたことによって、関節が動かなくなってしまったプラモデルを棚の上に戻す。

次の日

「ガチャン!」

マルがまたロボットのプラモデルを落とした。

今度は左足が折れた。

ため息をつきながら接着剤で左足を固定し、棚の上に戻す。

次の日はプラモデルの腰が折れた。

その次の日は右腕。

次は左腕。

最後は頭が取れてしまった。

「全くなんでお前は何回も同じプラモデルを落とすんだ。」

マルにそう言ってプラモデルを棚の上に戻す。

何度も何度も同じ位置に。

接着剤で全く動かなくなったロボットのプラモデルを。

いいなと思ったら応援しよう!

BECK
スキ、フォロー、チップすべて励みになります!