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第1回:終わりなき情報整理を巡る旅のプロローグ
さて、ついにはじまりました倉下さんとの共同連載の「情報整理ダイアローグ」。どんな連載になるのか今からワクワクが止まりません!
事前にそれほど厳密に企画を固めずにスタートしており、お互いどういう記事を書くか、どういう掛け合いが発生するかが全く未知数なところがあります。
企画会議的な話は以下の動画でやっていますので、ご興味がある方は是非この動画の33:40あたりをご覧下さい。
本記事では導入として、今後どういう”お話”を書いていきたいかについて、そのバックグラウンドも含めて説明してみたいと思います。
Evernoteに全てを集めようとして挫折した過去
この企画をはじめるにあたり、僕がEvernoteというツールに抱いていた理想と、その理想に挫折した話は避けて通ることはできません。
Evernoteと出会った2009年頃から、Evernoteを「第二の脳」とすべく、あらゆるメモやノート、ライフログ、日記、Webクリップ、PDF資料等などをここに集めようとしていました。
僕がEvernoteに熱狂した最大の理由は、「全ての情報がここに集められる」という感覚が非常に強かった点にあると思います。APIが解放され様々なアプリからEvernoteへの情報の保存・活用が可能で、専用のメールアドレスからノートを作れることから自動での情報集約が非常に容易だったのです。
FastEverでメモを取り、Macのクライアントアプリでメモを整理しノートを取ることで、それなりにデジタルメモの母艦として機能していました。タスクは即座にリマインド化してNozbeに登録するワークフローも非常に優れていました。
気に入ったWebクリップを片っ端からEvernoteに保存し、PDFを突っ込み、iftttで可能な限りのライフログを流し込みました。Gmailのフィルタ機能を駆使して、ライフログ的な何かをメールで片っ端からEvernoteに転送。
重すぎるクライアントアプリに辟易しながら、使いづらいノートリンク機能がいつか改善されると信じて、あらゆる情報をEvernoteに集め続けてきてある日ふと気付いたのです。
第二の脳ってこういうことだっけ?
いえいえ、勿論、Evernoteは僕のメモシステムの根幹をなす優れた場所であり、Webで見つけられる確率0%の「僕だけのアーカイブ情報」を引っ張り出せる可能性のある場所であることは間違いありません。
しかし、「情報を集める」こと、しかもそれを「Evernoteに集約」することによってEvernoteが「第二の脳」となることはついぞありませんでした。
いや、これはEvernoteが悪いわけでは無くて(いや、30%位はリンク機能が雑魚なEvernoteが悪い😆)、僕が悪い。僕が勘違いしてたんですよ。
情報を集めれば「第2の脳」が作れる
っていう幻想を抱き続けて十数年、遂に僕はその勘違いに気付き新たな一歩を歩み出すことが出来たのです。無論、Evernoteと共に、です。
第二の脳を作るのでは無く、自分の脳を補うためのデジタルノート
今の僕の「仮説」は、デジタルノートツールを使う目的というのは「第2の脳」を作ることでは無く、「自分の脳を補う」ことであろうというものです。
そもそも「第2の脳」とは何だったのか?
本当はEvernote社の過去の発言を引用すべき所ですが、面倒なので僕なりの解釈を述べておくと「短期/長期記憶を人の代わりに記録しておいてくれる場所、或いはそれらを想起させる情報がある場所」ではないかなと。
短期記憶、すなわち今この瞬間覚えてすぐに思い出せる必要がある情報。これらを収容する「人の短期記憶の容量であるマジックナンバー7±2の容量を増やしてくれる文明の利器」はデジタルノートツールが生まれる以前から存在しています。
古くは備忘録メモであり、Todoリストであり、人が話してるときにポイントをメモすることであり、今日の予定を手帳に記すことでもあります。
今この瞬間、忘れたら困ることを書き留めておくことはとても重要です。どんなに記憶力のいい人も、そういった類いの情報が10も20もやってくれば、いくらかの情報が短期記憶から欠落してしまうからです。
実はもう一つ、「考える」という行為についてもこの短期記憶がちょっとしたボトルネックになります。
頭の中だけで考え事をしていて、ぐるぐると同じ事を考えてしまったり、論理展開の矛盾に気付けないことってありませんか?いや、もし無いとしたら、あなたは超弩級の天才か、ただ勘違いしているだけだと思います。
紙のノート、アウトライナー、テキストエディタ。ツールはお好きな物をお使い頂くのがよろしいかと思いますが、こういったノートツールに書き出すことで、短期記憶の容量以上の事を考えられるようになります。
長期記憶と書いてしまうと、少し意味合いが異なるかも知れませんが、今すぐ必要ないけれど必要な時に取り出したい情報というのは、デジタルノートツールと抜群に相性が良いと言えそうです。
僕は一日に平均4,5個の打ち合わせに出社して、開発中のシステムに関して日英様々なトピックで話をしなければいけません。これら全てを事細かに記憶しておくというのは無理がありますし、打ち合わせや作業毎に頭を切り替えていく必要があります。
打ち合わせ前や冒頭に、前回の打ち合わせのメモを読み返すことは、議論を再開するために非常に重要で、こうやって「こまめにセーブ/ロード」を繰り返すことによって、次の瞬間には全く違うことに頭を使うことが出来るのです。
また、後から使いたい/参照したい資料などがあれば、それを引っ張り出しやすい形でフォルダ分け/タグ付けをしておいたり、仕事以外では家族との思い出を思い出せるように仕組み作りをしておくなんてのも、長期記憶の保管場所に期待したいところです。
万人向けではないかもしれませんが、自分の知識をダンプする場所というのも長期記憶の保管場所への根強いニーズの一つです。自分が識っていること、その意味合い、知識と知識のつながりなどをノートに可視化していくことは、知識を積み上げながら「こまめにセーブ/ロード」することに他なりません。
そう、賢明な皆様なら既にお気づきの通り大事なことは「情報を集める」ことではなく、「情報を記録して、取り出す」ことであったのです。
短期記憶の容量不足を補い、長期記憶を「セーブ&ロード」することによって、頭を切り替え、大切な思い出を想起し、知識を積み上げていく、そういった「自分の脳を補助する」ことにこそデジタルノートは真価を発揮するというのが、僕が十数年経ってようやく気づけた事なのです。
目的に合わせてノートを使い分けるようにノートツールを使い分ける
Evernoteに全てを集めるという僕の作戦は、10年前であればそれ程悪いものでは無かったかも知れません。如何にEvernoteのクライアントアプリが激重で、iPhoneアプリが永遠に起動しなかったとしても、それでも全ての情報をEvernoteに集めることによって得られた心の平安は確かにありました。
しかし、デジタルノートツール戦国時代と呼んでも良い今日、特定の用途であればEvernoteを遙かに凌駕する優れたツールが乱立しています。
いや、人によっては「Notion最高ヒャッハー!!」とか「Appleデバイスで固めてるのに何でApple純正メモ使わないの?」とか思う人もいるとは思います。
はい、それ、全て正解です。僕的には。
大事なことは「手になじむツール」を使うことであって、誰かがお薦めしてるからとか、高機能だからとか、憧れのYoutuberが使ってるからとか、そういうのは全部捨て去って下さい。(逆にEvernoteをこきおろす人のことを僕は無視しています。)
で、話を戻して、ここ1年ぐらいで僕は「Evernoteに全てを集めたくなる病」からは抜け出して、「Evernoteは情報をキャプチャするメモシステムの入り口兼アーカイブする場所」としてシステムの一部という位置づけとなっています。他の使い分けているツールをざっと書き出すと
・メモ/ノートツールとしてのEvernote
・Daily Note、考え事、ネタリストとしてのWorkflowy
・PKMとしてのObsidian
・ブログの下書き〜執筆の場所とのしてのUlysses
ScrapBoxも公開ノートとして使っていこうかなとは思っていますが、まだこちらは試行錯誤中なので、まずはこの4つだけを紹介しておきます。
多分、一番大きかったのは、餅は餅屋ということで、シングルペインアウトライナーでやった方が便利なことはWorkflowyに、知識を蓄積/ネットワーク化するのはObsidianにと切り出したことかと思います。
新しいメモを作るという動作をするとき、Ctrl+Option+Command+Nで新規メモWindowを立ち上げ、書いたメモはとりあえずInboxに保存されて、後から適切な場所に保管するというワークフローがEvernote上でできあがっている以上、Notionでこれを置き換えることは想像し難い。
Appleの純正メモは、紙のメモ帳(後Evernoteにキャプチャ)の代わりを期待していますが、Fast Everやたすくまからのメモを受けられない以上、メモの集積地としては力不足です。
しかし、なんだか永遠に完成しないアメーバ状態のアイデアや思考を置いておく場所として、Evernoteはやや固定的すぎるし、ノート間の情報移動が速くはない。そこはシングルペインのアウトラインプロセッサーがEvernoteの100倍効率的(自分比)なのです。
同じく、(自分の言葉で書くために)ゼロベースで書き始めて、情報と情報のリンクを貼っていくPKM(Personal Knowledge Management)において、わざわざリンクシステムの勝手が悪いEvernoteを使わず、ObsidianかRoamかScrapboxを使う方が良いというのが今の僕の考えです。
Evernoteは「今必要なメモ(短期記憶)」「後から参照したいメモ/ノート/資料(長期記憶)」を集積しておき、検索で引っかけるか、他のツールからURLで呼び出してやる。メモの集積地としての優秀さと、全てのメモにURLが与えられるObject Storage的特性を最大限活かす方向で、Evernoteは今も僕の情報整理システムの根幹を担っています。
ここまで書いたのはあくまで僕の例であって、どういうノートツールをどういう用途で使っても良いと思います。どのノートツールが優れているみたいな宗教戦争に首を突っ込むつもりはありませんし、喧嘩をふっかけられてもスルーします。
ただ、Evernoteに全て集めようとか、Notionを使いこなすとか、そういうのは一旦脇に置いて、紙のノートだったら当たり前にやっている「用途に応じてノートを使い分ける」という視点を持つことは、デジタルノートを使う場合にも有用じゃないかと十数年迷走してきたおっさんは思うわけです。
【今日の締め】永遠に完成しない「僕の最強のノート術」とお付き合い下さい
ということで、初回から5000文字程度とぶっ飛ばしすぎました。次回からはこの半分ぐらいのボリュームで書きたいところですが、筆が乗ると制御が効かないので、今後も長文になってもお付き合い頂ければ幸いです。
今回は文字だけで割と概念的な話中心で書いてしまったので、次回以降は「こういう用途で、このツールを、こう使ってる」という話を中心にお届けできればと考えています。
ぶっちゃけ、「僕の最強のノート術」はまだ未完成で、これからもずっと試行錯誤と改善を繰り返したり、新しいツールとの出会いと分かれを繰り返して未完成であり続けると思います。
なので、この連載ではサグラダ・ファミリアよろしく、永遠に完成しない「僕の最強のノート術」を酒のつまみにツマミに「Beckまたやってるよwwww」位の感覚でお付き合い頂ければ幸甚です。