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せっかく決まった仕事を1日で辞めたワケ

どうもべちおです。

前回、7ヶ月ぶりに仕事が決まったという記事を書かせていただきました。

>>面接結果の連絡がきた

その面接には成功率100%の面接テクニックも持参しました。

>>明日は面接だ(採用率UP面接テクニック)

5月の14日に採用決定の電話をいただき、6月1日入社と伝えられた。

ちなみに今回採用してくれた企業の募集要項は

こんな感じです↓(販売職です。アパレルじゃないよ)
髪型、髪色、ネイル、服装も自由!
★店舗は駅チカ!通勤もラクラクです!
◆学歴・職歴は一切不問
◆業績手当(売上手当&オシャレ手当3万円)・その他報奨あり
◆昇進・昇給は随時あり
勤務時間10:30~20:30(実働8時間)
★昇給随時
★昇格随時
★賞与年2回
★売上手当
★社会保険完備
★退職金制度
★交通費全額支給
★社割制度あり
★屋内原則禁煙(喫煙専用室設置)

あとで説明するためにいくつか太字にしています。

内容としては悪くないと思いますよね!僕もそうです

「お、条件めっちゃいいやんっ!」って思って面接の応募をしました。

特に太字の部分、

髪型、髪色、ネイル、服装も自由!
◆業績手当(売上手当&オシャレ手当3万円)・その他報奨あり
勤務時間10:30~20:30(実働8時間)

この3点ですね。

髪型、髪色、ネイル、服装も自由!

まず一番は服装が自由って部分です。正直18歳のときに高卒で不動産に入社したときにスーツで働いていましたが、半年でしんどくなり辞めました。それ以来スーツで働くのはもうこりごりです。

★オシャレ手当て3万円

なになにこのワードって感じですが、要は服装自由だからお洒落にお店に立ってほしい、だからその3万円でおしゃれな服装してきてね。ってことでした。

勤務時間10:30~20:30(実働8時間)

勤務時間については満員電車を回避できる時間という点と、会社まで1時間以内で行けるという点で「ええやん」ってなりました。


そして6月1日・・・初出勤の日

とうとうやってきた6月1日。

緊急事態宣言が解除されてこの日が出勤の人も多いはず。

10時半に銀座店にくるように伝えられていたので、念には念をで10時に銀座につくように電車の時間などをセッティング。(心配性なだけ)最寄りから遅延もなく、しかも予想通り満員電車でもなく、ソーシャルディスタンスを保ったまま座ることができ、最高の初日の通勤を迎えることができました。

「はぁ、いよいよ始まるんだぁ(ほわぁ)これで少しでも妻に恩返しできるかなぁ(ふわぁ)なんとか20時半まで頑張るぞ!」

ってあったかい気持ちと言葉が心の中で聞こえたような気持ちがしました。

だけど・・・

この日の19時に僕の口から出た言葉は

「これ以上ここで続けるのは難しいです。辞めさせていただきます。」

銀座に到着し、お店がある場所までは土地勘があったので、僕の予想通り10時10分には店のある通りにくることができました。ここで近くのショーウインドウで自分の身なりを最終チェック、あと水を飲み、フリスクを食べていざ出勤!

と思ったのですが、フリスクの吐息がマスクの間を通り抜け、目がシバシバする状況に。少し落ち着かせてから再度参ります、いざ出勤!

「おはようございます!」

自分なりに元気よく声をだし、お店に入るとそこには痩せ身の30代?の男性Aさん(主任)と小さめなこちらも30代?の女性Bさんが立っていました。

その場で今日からお世話になりますという簡単な自己紹介だけ済ませた後、Aさんから「では奥に社長がいるので挨拶お願いします」と案内され、奥にあるスタッフルームに。

ノックして入るとこじんまりした大体8畳くらいのスタッフルームにデスクが一つ。

そしてそこには自ら寄せないとここまで似ないだろうというくらいアパホテルの社長に似た女社長の姿が。※帽子は着用しておらず

「初めまして、社長のNです。君がべちおくんね。楽しみにしてたわ」

社長っぽい発言すぎて思わず「おぉっ」てなりましたが、しっかりと

「本日より入社させていただきましたべちおと申します。何卒よろしくお願いいたします!」と挨拶をしたあと、社長から

「それでは朝の出勤確認のために表参道にいる統括部長に出勤しましたと電話を入れてください。」

ふむふむ、どうやらここの会社ではタイムカード的な物や、出欠を表す札みたいな物はなく、毎朝社員一人一人が統括に一回ごとに電話をし、「〇〇です。出勤しました」と報告するシステムのようです。ちなみに統括は以前面接の記事でも書いたRIKAKOさん。※>>面接に行ってきた参照

正直、効率悪いな。せめてLINEかメールかクラウドでええやん。と心の声と「?」が漏れそうでしたが、マスクのフィルターにかかって社長に聞こえることはありませんでした。

出勤報告の電話後、朝礼をするためペンとノートを持ってスタッフルームから店内に移動。

朝の朝礼では昨日の売上、本日の目標、今月の目標を共有。その後に社訓的な文言を社長が唱えた後に復唱。その内容を簡単にいうと

1、店頭に立つときは社名と販売目的を告げる

2、また来たいと思われる接客をする

3、クーリングオフ関係の話をする

4、愛される店作り、社員が会社の看板だと自覚をもって働く、、、

などなどです。

これを復唱したあと、「本日もよろしくお願いいたします!」と全員で一礼して終え、さぁいろいろ聞こうかなーっと思っていたら、A主任もBさんもなんとダッシュで店頭に向かうではありませんか!

え?なに?なんなん?とよく見ると2人の手にはお店のチラシが。

A主任&B「〇〇でーす!販売してまーす!」と通りを歩く人にかたっぱしからビラ配りを開始。

僕「え?これからこれするん?ビラも大事なのはわかるけど、これからこれするん?」

すこしパニックになってしまいました。すると社長からスタッフルームに来るよう言われ、再度スタッフルームに。

社長からの会社の説明

スタッフルームに入った僕は座るように言われ、社長直々にこの会社の仕組みについての説明会が始まりました。会社の基本的な構造とRIKAKOさんの立場などもここで改めて知ることができました。

ここでも少し驚いたことがあったのですが、会社概要説明や就業規則に関する書類は全て社長の手書きで作成されていたことです。もしかしたらそういう会社はあるのかもしれませんが、初めての経験だったのでまた一つ頭に「?」が増えてしまいました。

会社の説明が終わり、質問タイムになり、「オシャレ手当てはどのような感じなんですか?」と投げかけると、

社長「オシャレ手当ては例えばべちおくんの月の売上が120万円以上達成すれば3万円発生するわ。元々ついてくる物ではないわよ。要はインセンティブ(成功報酬)の呼び名を変えたものね」

なるほど初耳でしたね、、、つまり

◆業績手当(売上手当&オシャレ手当3万円

⬆️これについては元々ついてくるものではなかったのか。そうだよね、業績手当てって書いてるもんね。ただ、一次面接でも二次面接でも説明がなかったことを思い出すと、自分の思い込みもあったけど、言葉のあやな感じもしましたが、まぁ、納得しゴクンと自分の中に呑み込みました。

質問が終わり、入社時に必ずする、扶養控除の書類が配られましたが、その中にあるはずの書類がありません。

「すみません、入社するに当たっての正式な就業規則の書類、契約書はございますか?」と社長に聞いてみると、

社長「ないわよ」

と一言。「え?どーゆーこと?(心の声)」 

社長「だってあなたまだ社員じゃないじゃない。こちらが設けた研修期間が終わるまではあなたは社員じゃないわよ。」

と社長は続けます。

「なるほど、では僕がこちらでお世話になってる間の研修期間中の就業規則や、給与面などがわかる書類はいただいてもいいですか?」と再度尋ねました。だってそうですよね?一応採用通知の電話の際に額面は言われましたが、それはあくまで口頭によるものです。簡単にいうと口約束みたいなものですし、もちろんその電話の内容を会社が録音しているわけでもありません。

そんな中いつ終わるかわからない、社長のさじ加減ひとつで終わる研修期間になんて臨みたくはありません。

金はあとからついてくるとかっていうのもすごいわかりますが、コロナ禍の影響で実質の収入がゼロになってた人たちからすると来月、来週、はたまた明日のことを心配しながら生きている人たちだって大勢いるはずです。

そして、僕もその1人です。

なので働くからには全て納得した上で、しっかり頑張りたいと思っています。しかし社長からの返事は

社長「だからないって。研修期間終わったらちゃんと契約書渡すから。もしくはそんなに必要なら、総務に言って書面作ってもらいましょうか?」

「書面を作ってもらう」ってことはそもそも書類自体はなかったということがここで判明してしまったので、入社1時間で僕の心はどんどんこの会社から離れていくのが感じました。

この段階ではまだ辞めると心の中では思っていません。

ひとまず、その書類を作ってもらうとお願いし、やっと実際の仕事内容に取り掛かることができました。

もともと今回の仕事のジャンルとしては好きなジャンルだったので、仕事内容やそれに関わる資料の勉強などはとても楽しくうけることができました。

資料内容は個人で読んどいてということだったので、店内にいながら邪魔にならないように移動しながら商品資料などには一通り目を通すようにしていました。

お昼休憩

社長「じゃあべちおくんお昼行ってきて」

と資料を読んでる僕に社長からお昼休憩のアナウンス。外はその日生憎の雨模様。せっかく妻が前日から仕込んでくれていたお弁当だったのに、泣く泣くスタッフルームで食べることに。すまんよ、、妻。。。

ちなみに社長に「お昼休憩は何分ですか?」と尋ねると

社長「あー、食べたら出てきて」

とのこと。あれ、何分とかじゃなくて本当にお昼食べるためだけの時間なの?全部でスタッフが僕と他の社員含めて3人いる中で、1時間の来店数がだいたい1〜2人のこの業種でこれなの?って強く感じてしまいました。朝一からビラ配りをしてもお昼過ぎまでの入店数が3〜4人ってのは本当にビラ配りの意味あるのかなって正直思ってもいました。

とにかく、お弁当にはしっかり手を合わせ感謝をして、美味しくいただきました。少し一息ついたとしてもそれでもお弁当を食べる時間ってどんなに遅くてもだいたい10分~15分ほどです。

妻には出社前にお昼休憩で一度連絡すると言っていたのでA主任に少しだけ外出ていいか確認すると「どちらに行かれるんですか?社長の許可はとりました ?」と言われたので、一瞬だけ銀行行ってきます!とだけ言いその場を離れました。

あー、めんどくさい。

妻に連絡をし、お弁当のお礼と今こんな感じっていうのを3分くらいでまとめて話して5分以内で店に戻りました。もどって社長に休憩時間の決まりを確認すると、社長曰く、「手が空いてる時に私から個人個人で休憩かける」スタイルらしいです。

あ!ここで大切なことを見落としていたことに気付きます。

いや、正しくは見落としてはいませんでした。だってそもそも見えていなかったんです。

再度募集要項を確認してみます⬇️

髪型、髪色、ネイル、服装も自由!
★店舗は駅チカ!通勤もラクラクです!
◆学歴・職歴は一切不問
◆業績手当(売上手当&オシャレ手当3万円)・その他報奨あり
◆昇進・昇給は随時あり
勤務時間10:30~20:30(実働8時間)
★昇給随時
★昇格随時
★賞与年2回
★売上手当
★社会保険完備
★退職金制度
★交通費全額支給
★社割制度あり
★屋内原則禁煙(喫煙専用室設置)★屋内原則禁煙(喫煙専用室設置)

お気づきだろうか。。。休憩時間の記載がないことを。

ちなみに今思うと勤務時間の10:30~20:30って合計で単純計算して10時間なので実働8時間としているいうことは2時間の休憩があるってことですよね。

ちなみにお仕事の休憩時間ってのは法的に定められています。

休憩時間の最低ライン
労働基準法では、労働者がとる休憩時間の最低ラインが以下のように明記されています。

労働時間が6時間以内、最低休憩時間は0分
労働時間が6時間から8時間以内、最低休憩時間は45分
労働時間が8時間を超す場合、最低休憩時間は1時間

この会社の場合、社長がアナウンスで各社員に休憩にいくように伝えます。その後、よくよく見るとその他の社員はタバコ休憩でちょこちょこ出て行ったりするものの、自分に与えられた休憩時間は2時間に一回、約5~10分ほどでした。うまくやればちゃんと労働基準の休憩時間を与えらるのかもしれません。(それでも合計2時間は無理)会社がお客さんのいない暇な時間を勝手に休憩と呼んでいる可能性もあります。しかしそれも明確になっていません。

ちなみに主任には出勤時間などの詳細を確認したのですが

主任「平日は10:00~20:30で、土日は9:00~20:30ですね」

おっと、募集要項と著しく違うじゃないか。あまりにも違うので主任に

「この会社の定時をお教え願いますか」と聞くと

主任「定時?」

と逆に質問されました。新卒で入社するとその会社の環境が正解になってしまうという話はよく聞きますが、彼もその中の1人のようです。

主任がいうことをまとめると、本来は平日の場合、開店時間が11時で出勤時間が10:30なのですが、社員は10時に来て店の掃除を行い、また土日は10時に開店なので9:30に出勤時間のはずなのですが、これまた社員は9時に出勤し掃除をするとのこと。

じゃあ出勤時間から開店時間までの30分はなんやねんって話です。

ちなみに30分早く来て掃除をするのは社長命令らしく、またその間の時間外賃金は発生しないと主任の口から聞きました。

林修先生もびっくりの初耳のオンパレードです。

もちろん募集要項には記載があるわけもなく、就業規則にも・・って

あ、そもそも契約書もまだ見れていないわけですからね笑

ということで頭の中に「?」をたくさん抱えながらその後の業務につくことになりました。一通り商品資料にも目を通せたし、次はなにしよーっと思ってたところに、ちょうど1人のおじいさんが入店。70歳半ばでしょうか?主任がビラ配りからなんとか入店まで漕ぎ着けたという感じでしょうか。

一通り店内を見た後におじいさんが「私お金ないんで失礼ますね」というとすぐさま主任が「カードでも払えますよ!銀行もすぐそこにありますよ!」と返し刀のようにグイグイ攻めていく。おじいさんの顔を見ればすぐに困ってるのが分かります。この場から離れたい気持ちがすごく伝わってきます。おじいさんは少し引きながらも「カードは持ってないし、現金も少ししかないんです。」と。

もうええやん。見てるこっちが可哀想になるからもう帰らしてあげてよ。。

しかし主任は止まりません。挙げ句の果てには主任から強烈な言葉が・・

「じゃあ今いくらもってますか?」

いやいや、嘘でしょ?中学生のカツアゲじゃないんだからそんなことお客さんに聞くなんて信じられませんでした。しかしおじいさんは圧に負けて答えてしまいます。

「今財布に3000円しか入ってないよ。。」

主任「じゃあポストカード買えますね!」

もうおじいさんは買わないと帰れないと察したのか、じゃあ、それ一枚だけもらおうかなと手にとります。ちなみにポストカードは1枚1000円。そしてそこにとどめと言わんがばかりに

社長「じゃあ今日は特別に4枚で3000円で大丈夫ですよ」

とスタッフルームにいた社長が出てきて、おじいさんに向けてミサイルが放たれました。おじいさんはもうこの場からいち早く抜け出したい気持ちが100%になってしまったのでしょう。「じゃあそれでいいので3000円置いておきます。」とそそくさとポストカードを4枚受け取って逃げるように帰っていきました。

この一連の流れを見て、とても悲しい気持ちになりました。自分がやりたかった仕事ってこれだったっけ?こんな間違いばかりのことしてお金もらって何が嬉しいんだろう。

僕には理解できません。そして僕がやりたい仕事ではないです。僕がやりたいのはお客さんと一緒に盛り上がって双方が買ってよかった、売ってよかったというWIN-WINの関係です。

よく接客業などで使われる表現として

あなたがしたいのはオ◯ニーかS◯Xかどっちですか?

という表現があります。自己満足で自分のやりたいことを自分ヨガリで仕事や業務を行うのが好きなのか、互いに高め合って結果気持ちよくなるかどっちが好きですか?僕は後者です。実際に独りよがりで接客などしてもなんも価値は生まれません。

そしてこの会社の人たちは社長を筆頭に全員前者の人間だと思います。それに付き合わされるお客さんの気持ちを考えるとどうですか?吐きそうなくらい気持ち悪いですよね。

ビラ配りから見てもその様子がよく分かりました。そのおじいさんが帰った後、少しだけビラ配りを頼まれ、Bさんと一緒に店頭でビラ配りをしていましたが、そのビラ配りの方法が、お客さんの進路上にたち、ビラを見せ、少しでも反応した人には、通せんぼをして「一つだけ見て欲しい物があるんです!見て欲しいのがあるのでどうぞ中に入ってくれませんか??」というかなり無理やりな方法。自分自身がその方法でビラ配りに捕まったら、二度とその通りは歩かないと思います。

もうこの時点では確実に僕の中に「退職」という二文字が幅をきかせていました。

それでも我慢

それでも我慢して続けないといけない理由がありました。それは妻の為。

7ヶ月間無職の期間があり、そのうちの2ヶ月間においては実質の収入がゼロ。そんな中、妻は自身の身銭を切って生活費にあててくれていました。仕事をしていた時となんら変わらず優しくしてくれました。でもきっとその何倍も心配で不安だったと思います。そして何より迷惑をかけていたと思います。いやかけてました。

そんな妻にもう悲しい思いをさせたくない。

だからこんな半ば、カツアゲまがいの行為を行ってる人たちの下でも我慢さえすればお給料もらえるんだったらやるしかない。自分の感情なんて殺して、ただたんたんと業務をこなしていこう。

そこにはもう仕事に対するモチベーションなんてありません。

なんだか自分の身体を流れる血の温度が少し冷たくなった感じがしました。


それは言ったらアカンやつ

妻のため、自分を殺してでも続けよう。そう心に決めた矢先、社長から再び耳を疑う発言がありました。

モチベーションがなくなった僕は本当にたんたんと棚を整理したり、微妙にずれてる商品を整えたりとただ時間が過ぎていくのを待ってるだけの状態でした。

もし自分が経営者サイドでこんな奴見つけたらめちゃめちゃ怒ってると思います笑

あのおじいさんが逃げるように帰ってからもう何時間たつでしょうか。外はぼんやりと暗くなってきました。あのおじいさん以来、来店客の姿もありません。僕はあまりにもすることがなかったため、午前中に一度読んだ商品資料を再度手に、店内の商品と見比べていたところ、そこに社長が通りかかりました。

社長「あ、そうだ、べちおくん。大切なことを伝えるの忘れていたわ。うちの会社には、商品を売ってはいけない、接客をしてはいけない人っていうのが存在するの。」

僕の頭の中では、ブラックリストのことかな?と勝手に解釈していました。実際に様々な業種を経験した中に、確かにブラックリストに載る人ってのは一定数存在します。

前職だったアートギャラリーでは、ほぼ毎日のようにイチャモンをつけてくる男性や、傘でオブジェをつつく人、女性スタッフに対してセクハラ発言やタッチを繰り返す人もみんな出入り禁止にしてました。またその対策として防犯カメラを設置するなど対策もしていました。

ってなんで向こうが悪いのにこっちが費用払って対策しなくちゃいけないんだ!って毎度思ってましたが。

話を戻して、この会社にもそのブラックリストあるんだー。なんやかんや大変やなー。そんなことを考えながらも社長は説明を続けます。

社長「うちが商品を売ってはいけない、接客をしてはいけない人なんだけど、まずは地方からきた人・障害者・75歳以上の老人・年収240万以下の人間などの、まぁ、俗にいう弱者って人たちね。」


衝撃でした。

僕は社長の口から出たその言葉に、せっかく冷えた血が煮えたぎるような怒り、ムカつきを覚えました。このご時世によく、こんな人種差別ヨロシク発言ができるんだ!?

しかもそれを弱者という一つのジャンルとして括りにしているその発言に吐き気さえ催すほどでした。

僕の表情や、血の気が上がっていることはマスク越しでは社長に伝わることなんてなく、社長は説明を続けます。

社長「まず地方からきた人っていうのは、ほら、お金もってなさそうでしょ?田舎なんて賃金自体も安いし、どうせ来店しても買わないから、だったら最初から相手しない。その次に75歳以上の老人、年金生活の人がもし高額商品なんて買ってしまったらそのあとその老人の家族からクレームがくるからトラブル回避のためにも相手しない。また年収240万以下の人間はそもそも買わないからね。そして障害者。これも家族からクレームきたり、あとはそもそもお金ないからね。そうそう言い忘れてた、24歳以下もダメね。理由は一緒でお金持ってる人少ないから。ま、こんな感じかな?」


はい無理〜〜〜

完全に心折れました。もう泣きそうでした。きっとその時の僕の目は少し充血もしてたかもしれません。社長の言葉を理解するのに少し時間がかかるくらい、一瞬、無の時間が生まれました。

そして自分の中ではっきりと「退職」という2文字が1000%にギチギチに広がり、体から飛び出していました。


僕がなにより嫌いなこと、それは差別と偏見といじめです。

僕自身ハーフということもあり、根拠もない差別的発言をされたこともあります。

アメリカ留学中には当時流行していたテレビゲーム「CALL OF DUTY」という戦争ゲームの敵として日本がでてくるので、熱心なゲームファンからは日本人は嫌いだと馬鹿にされたこともあります。

また小学高学年〜中一まではチビでデブでトラブルメーカーとズッコケ三人組を1人で担えるんじゃないかというまさにいじめっこからしたら、いいカモだったので、いじめられていた時期もありました。(ちなみに中学一年生の夏休みで身長が10cm以上伸びたことでいじめっこ達より背が高くなったことでいじめは無くなりました笑)

先ほど挙げた弱者という言葉、goo辞書さんで調べるとこう記載がありました。

雇用・就学の機会や人種・宗教・国籍・性別の違い、あるいは疾患などによって、所得・身体能力・発言力などが制限され、社会的に不利な立場にある人。高齢者・障害者・児童・女性・失業者・少数民族・難民・貧困層などが社会的弱者となり得る。

やっぱり弱者という言葉はなんか辛いね。悲しくなります。

確かに弱者という言葉は存在します。情報弱者、社会的弱者など、いろいろなカテゴリにおいて弱者と呼ばれる方達は存在します。

それを十分にわかった上でも社長の口からのこの発言は自分にはもう対処できないほど言ったらアカン発言でした。

だって社長の説明は上の引用文も元にしたこの社長個人における価値観を元にした、ただの決めつけでしかなかったから。

そしてなにより、なにより、辛かったのが社長の言った

そして障害者。これも家族からクレームきたり、あとはそもそもお金ないからね。」

というこの発言。決めつけにも限度があります。この記事を書いてる今時点でも気持ち悪くなってきます。

僕には大切な家族、親戚がいます。そしてその大切な人たちの中に障害を持ってる親戚がいます。重度認定を受けている障害を持っています。でも彼は週に5日、朝から仕事に行き、一生懸命働き、仕事の楽しみを見つけ、貯金をし、自分の好きな物を買ったり、友達と遊びに行ったり、毎年お正月には両親とお姉ちゃんにお年玉を渡し、会う度に楽しく仕事の話をしてくれます。コロナ禍の影響で仕事がお休みの時には、電話で早く仕事行きたいと自粛期間が解かれるのを楽しみにしていました。


彼は僕の義理の弟です。


この社長、いやもうこの女性Nがこの話をしている時から僕の頭の中には妻と義弟の顔が浮かび、こんな考えを持つ社長がいる会社に入社してしまった自分の愚かさと、妻と義弟に対する申し訳なさで胸が締め付けられる思いでした。

どんな顔をして妻に今日ただいまって言えばいいんだ。そればかり考えていました。

しばし茫然としながらNから質問があるか聞かれ、

そもそもどうやったらそんな判断や見分けがつくのかを聞くと

N「トークの中で探って、あとは勘ね。実際に次来店客が来たら主任の接客をご覧になって参考にしてみて。」

そういうとスタッフルームに消えていきました。

「こんな会社辞めてやる!!」

と強く言えないのが自分の弱いところなのは昔から知っています。

とにかく今のこの状態での自分は絶対に人前に出ていいオーラではなく、むしろバトルオーラを放っていたため、自分から申し出て休憩をもらうことにしました。

しかし、休憩に行こうとしたタイミングで来店があり、休憩のタイミングを逃してしまいました。だったらと思い、主任がどういう接客をするのか確認するため、また資料を読むフリをしながら店内に残ることにしました。

入ってきたのは若い女性。

主任「どうぞ是非一度お店の中をぐるっとご覧ください。」

客「ありがとうございます」

主任「お若そうに見えますが何歳ですか?26歳とか?」

僕(いきなり年齢聞くか普通。。)*心の声です。

客「いやいやもっと上ですよ笑」

主任「そうなんですね!」

と言ってそこから27?28?29?と聞いて行きます。

僕(いや、失礼やで、ヤメときや)

客「もうっ34ですよ」

主任「えー!見えないですね!34歳で銀座歩いているってことは相当稼いでますね!」

僕(なんでそうなる?)

客「そんなことないですよ。普通です。」

主任「お住まいは都内ですか?」

僕(めっちゃ聞くやん。会話広げずに端的に質問したらあかんやろ・・。)と関西出身者としてはツッコミたくなりましたが、マスクの中で我慢。

客「そ、、うですね」(困り顔)

この時点でこの会社の設ける接客、販売してOKな人のフィルターをクリアしたので、主任が動きます。僕からしたらNからさっきの話を聞いたので一刻も早く逃してあげたいのですが。

主任「今ご覧になった中で買う買わない関係なく、購入したいなーって思った商品ありました?」

客「んー。強いていうならこれか、な?」

主任「ですよね!最初からそれ選ぶだろうな!ってわかってたんですよ!とてもお客様っぽいし!」

僕(口から出任せ営業トーク・・・。)

そういうと主任は椅子とテーブルを用意し、その商品をテーブルに置き、女性に座るように促します。しかし女性も気づいたのか、(とっくに気づいてるか)着席を拒否し、「大丈夫です」といって出口のほうに歩いて行きます。すると店頭でビラを配っていたはずのBさんが待ち構えていて、

B「でしたらこのポストカードだけでもどうですか?」

とさっきのおじいさんと同じ手法を取ろうしてきたのです。女性客は「この後用事があるんで失礼します」といっておじいさん同様逃げるように帰って行きました。

また嫌な気持ちになりました。胸がキュゥッっとなる感覚です。

女性客が見えなくなるのを確認したあと、僕は再度休憩のお願いし、店の外に出ました。

店を出て店頭でビラ配りをしているBさんが見えなくなる角を曲がった瞬間に妻に電話をしました。

妻「はいはーい、おつかれさんっ」

僕「ごめん、聞いて欲しいことがあって・・・」

そういって事の経緯を説明しました。本当はどんなことがあっても我慢して、耐えて、安定した収入を得なければいけない、そんな自分の置かれている状況なのに、どうしてももう我慢ができない。許せない。そう伝えました。

妻は泣いていました。そして

妻「もう帰ってきていいよ。そんな辛い思いしてまで我慢して働かなくても世の中にはまだまだたくさん仕事はあるから、また2人で探そ?」

そう優しく言葉を投げかけてくれました。

電話を切った後、少しの間自分なりに考えました。

妻とは僕が無職の7ヶ月間の間、ずっと毎日一緒にいて笑いあったり、時には喧嘩したり、馬鹿なことを家でやったりを毎日繰り返していたことにより、妻と僕にはウソをつくという行為自体がないものになってました。ずっと正直にいられる、ありのままの自分でいられる、だから24時間一緒の空間にいても息が詰まったことや1人で出かけたいと思ったことなんてなかったんです。

でもこの会社で今後働いていくってなった時に、自分は1日に何回自分にウソをついて、何回妻と義弟のこと考えて苦しくなるんだろう?

そもそも仕事をするのはなんの為、誰の為なのか。妻と幸せになるために、安心させる為に働くんじゃないのか?じゃあ今のこの職場どうなん?

自分にウソをつきながら、会社が勝手に決めた価値観で人の足元を見て、相手が障害を抱えているというだけで、勝手に接客・販売はしなくてOKという烙印を押しつけるなんて、こんなの全然違うじゃないか。

こんなのは差別、偏見でしかありません。この会社にいて妻を含め大切な家族を幸せにできるかどうか自分にはわかりませんでした。

そして、社長に

「お話があります」

そう切り出し、スタッフルームで話をすることに。

N「どうしたの?」

僕「はい、まず質問なんですが、この会社における出勤時間において先ほど主任に聞いたのですが、確認の為に再度この会社の定時を教えてもらえますか?」

なんとか平静を装い質問します。もちろんNからの答えは主任と同じような回答でした。時間外労働についても同じ回答でしたが、Nはそこに

N「時間外なんて全てのサービス業が同じことしてるし、第一、本当に稼ぎたい人はそんな30分のことに対してなにも言わないわよ」

また決めつけです。そして全てのサービス業が時間外労働をしているワケありません。実際に過去に勤めたレストランやギャラリーなどは1分単位で時間外賃金が支払われていましたので、Nのいうことは嘘になります。

そして再度確認として、言い間違いであれという微かな望みを抱きながら、

「改めて商品を売ってはいけない、接客をしてはいけない人に対してご説明いただいていいでしょうか?」

Nの回答は先ほど挙げた内容と寸分違わず、同じでした。

N「結局何が聞きたかったの?」

そう聞かれたのがちょうど夜19時、僕の口から出た言葉は

「これ以上ここで続けるのは難しいです。辞めさせていただきます。」


なぜかNはびっくりしていました。それには僕もびっくりです笑

N「え!なんで!?」

社長が少し荒げるような声で言いました。僕は全ての理由を包み隠さず伝えました。就業規則、カツアゲ的な販売方法、就業時間、休憩時間、差別的な発言、義弟のこと。

Nはやっと理解したのか、大人しくなりました。

N「仕入れ元のY社長もべちお君のこととても楽しみにしていたのに。。とても残念です。」

仕入れ元のY社長?誰だか知らなかったのですが、すぐに教えてもらった名前でわかりました。僕が統括のRIKAKOさんとの面接をする前に行った、1次面接で面接官だった男性が実はこの会社の親会社にあたる仕入れ元の社長だったのです。とても気さくで話しやすかったのをとてもよく覚えています。

そうか、楽しみにしててくれたんだ。悪いことしたな。。

とにかくもうここの会社には用は無いですし、Nと同じ空間にも居たくないので、「それでは、ありがとうございました」といい、出て行こうとすると、Nから会社概要説明や就業規則の書類の返却を求められました。

そうです。手書きの説明書類です。すぐに返却し、ドアの前に立ち「失礼します。頑張ってください」と告げ、店を後にしました。無作法だったのは自分でもよくわかっています。

妻に電話をし、辞めたことを報告すると妻は少しホッとした声色で

「うんうん、辞めてよかったよ。なんかすごく安心した」

と言ってくれました。妻の優しさに涙を堪えるのに必死でした。

妻との電話後に、さっき店を出る前にこっそり控えた仕入れ元会社の電話番号に電話をかけ、Y社長に繋いでもらいました。Y社長には今回の事情と経緯を全て伝え、お礼とお詫びをさせていただきました。Y社長からは

Y社長「辛い思いをさせてしまって本当に申し訳ない。私の管理不足だった点もあるので今回のことについては、Nの代わりに私から謝らせてほしい。本当に申し訳ありません。」

この人のいる仕入れ元で働けたらよかったな。。そう思えるくらいの真摯な姿勢でした。

電話を切り、銀座から電車に乗り、最寄駅に。その間ずっと妻のことを考えていました。そして絶対にこの状況を打破しようと揺るぎない決意を再確認することができました。

この日は一日ずっと雨でした。

でも最寄駅についた時には雨は上がっていました。

家に帰ると玄関先で妻が「頑張ったね。」っと少し潤んだ瞳で僕を強くハグしてくれました。

僕は申し訳なさから泣き崩れました。

妻は「今日は一日大変だったから大好きなフィリピン料理にしたよ!」

と僕の大好きなフィリピン料理を用意してくれていました。

妻「なんとかなるよ。だから今日は美味しいもの食べてぐっすり寝よ!」


本当にこの人と出会えてよかった。


外には雲の合間から星が見えていました。










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