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帰国してからのお仕事②-1

どうもべちおです。

幼なじみから誘われた僕はしばらく考える時間をもらうことにした。
今の仕事については特に副店長の思考回路以外は問題なかったし、給与面でも満足していた。そして何より飲食業にしてはかなりのホワイトだったからだ。昨今の飲食業界でもかなり珍しいといえるだろう。漂白剤でも入れてるんじゃないかと疑うくらい。(後々聞いた話によるとどうしても取れない漆黒なシミもあったみたいだが)

そして幼なじみが店長を務めているお店の労働条件が
・月休4~5日
・就業時間10:00~23:00
・休憩約1時間

それに幼なじみから聞いた話をプラスするとボーナスはないし、有給なんてあってないようなもんだし、ケータリングオーダーが入った時には休憩や休日返上で仕事をしなくちゃいけないし、イベント関係の仕事が入るとまず終電では帰れない。店泊(店で寝ること)なんてしょっちゅうとのこと。

ただ、それでもそれを超える楽しさと、自分でお店を作り上げてる感覚がたまらないとのこと。

そんなん聞いたら心揺らいじゃいますよねー笑

そして一晩考えて答えを出して、幼なじみに電話した。
「そっち行くわ」
それからその日に現職場の店長に話をし、本部にも退職届を提出した。実際の退職は今日から1ヶ月後。まだポジション的には下っ端の僕は誰かに引き継ぎを行うこともなかったし、比較的平常通りの仕事をして、最後に棚卸し業務という月一のめんどくさい仕事だけやり終えて最後には送別会もしてもらった。まぁ、その送別会も副店長が好き放題していたので、見るに耐えれず、始まって早々トイレに行くふりをして店長にLINEを入れて帰宅した。

1週間ほど休みができた形にもなったので、毎日ダラダラ過ごすこともできた。

ちょうど休み明けに幼なじみからの連絡で一度うちの社長と、面接ではないけど面談してほしいと言うので、すぐにお店に向かった。
お店に入ると幼なじみが出迎えてくれた。幼なじみとは1年ぶりくらいだろうか?実は僕が帰国した際に、当時一緒に住んでいた姉が連れてきてくれたのがこの幼なじみのやっているお店だった。

当時からお店の雰囲気がずば抜けて良くて、どこか海外の雰囲気も漂い、知ってると自慢できるかっこいい、そんなお店だった。その雰囲気のおかげか、よくドラマの撮影の打ち上げパーティーに使われたり、結婚式の二次会で1ヶ月の予約帳の半分は埋まってる。それでも平常営業の際はいつもスカスカで仲間内しか来店がない。そんなお店だった。

その当時の僕の感覚だけど、あまりにもお洒落すぎたり、落ち着いたりしすぎると客の立場としては寄りづらくなっちゃう。ファッションブランドのyouji yamamotoやジュエリーショップのHarry winstonなんかに入れないのはそのせいだ。

幼なじみに個室に案内してもらい、10分くらい待つと社長がやってきた。
社長といってもまだ35歳、元モデルでとにかくお洒落でなによりいい匂いがした。
口髭をはやしたその口から発せられる声もとても優しく、包み込んでくれるようなあったかい声だった。会って2秒でこの人の器の大きさがわかるような感覚だった。

そういえば、帰国した際にこのお店にきた時も社長の話になって、幼なじみがここで働く決定的な理由がこの社長に惚れたからだと言っていた。

そして僕もその一人になった。

面談で給与の話や肉体的にはかなり辛いし、最初の数ヶ月はキッチンスタートということも告げられた。確かに聞いた内容は辛いけど、この社長の元で働いてみたいという気持ちの方が大きくなった。

「何卒よろしくお願いいたします。」

面談後にその場にいたスタッフみんなに紹介され、その日を終えた。

いよいよ当日

当日は少し早めに行き、設備案内や仕込みの内容など様々なことをメモしまくった。
落ち着いたランチタイムを終え、まかないの時に改めて紹介してもらったりした。僕が店長の幼なじみということもあり、周りと打ち解けるのにも時間はかからなかった。

当時はランチもディナーも基本暇でいつも店長や料理長たちと何が売れるかとか、おもしろそうな企画を考えては実行し失敗というトライアンドエラーを繰り返していた。

そんな中、アルバイトだった男の子から石焼きローストビーフ丼のアイディアが出た。今ではもうありふれていて、どこにでもあるメニューだったが、お店がある界隈ではまだそこまで有名になっていなかった。おもしろい!とみんな面白いものにはすぐに取り掛かるタチだったので、その日のうちに試作品を作った。その後、ローストビーフにあうお肉を厳選して選び、もちろんローストビーフから仕込み、タレから何から全て自分たちで仕込む。その作業を毎日深夜まで行った。基本キッチン業務が嫌いだった僕だったが、なぜかこういう実験的なことに対しては全く疲れを感じなかった。1日に2〜3時間寝られればそれで十分だと感じていた。

そして当店謹製、ローストビーフ丼が完成した。




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