全話見てからのスティーブン・ユニバース#1「Gem Glow」
2020年3月27日、アメリカでスティーブン・ユニバースが完結しました。
それから、ひと月が経つものの、私の心は整理がついていません。
私はスティーブン・ユニバースの感想を見るのが好きです。色んな方の初見時の感想を見るたびに、自分もこのときこう思っていたな、と体験を振り返ることができます。そしてそれ以上に、エピソードをある程度見終わってから見直した際の感想も好きです。過去と未来のエピソードが常に相互補完されていく物語の中では、初見時には思ってもみない視点が加わっていくからです。
『Steven Universe』『Steven Universe:The Movie』『Steven Universe Future』全てを見終わった今(日本未放送分は北米iTunes等でリージョンフリーの配信をしています)、心の整理をするため、全話見終わってからの視点で、いくつかのエピソードで気づいたことを書いていこうと思います。
-----------以下、全話のネタバレを含みます------------
#1「Gem Glow」
~「Cookie Cat」に積み重ねられた意味~
記念すべき第一話。大好きなアイスクリーム「クッキーキャット」が製造中止となって悲嘆する主人公スティーブン。共に暮らすジェムズが「クッキーキャット」を買い占めてくれていたことを知ると、彼は喜びのあまり歌いだします。
カチカチアイスのクッキーは♪
宇宙の果てからやってきた♪
宇宙戦争から逃げてきた♪
たどり着いたのは近所のスーパー♪
クッキーキャット♪お腹の親友♪
クッキーキャット♪めちゃくちゃおいしい♪
クッキーキャット♪家族と別れてきた♪
クッキーキャット♪
「クッキーキャット」は、無邪気な子供の歌でありつつ、エピソードを重ねていくごとに示唆する対象が増えていきました。
① 「クリスタル・ジェムズ」
物語を追う中で、スティーブンと共に暮らすジェムズのバックグラウンドが徐々に示唆されていきます。(アメジストを除く)彼女らが「宇宙の果て」からやってきたこと、故郷に反乱を起こして壮絶な「戦争」を繰り広げていたこと、ガーネットとパールは数少ない生存者であること、アメジストは戦争の「副産物」として生まれたこと、主人公の母ローズ・クォーツこそが反乱の指導者であったこと。
② 「ローズ・クォーツ」
更に、スティーブンの母であるローズの人生とより深く、直接的につながっていきます。SU#146「Single Pale Rose」では、ローズの過去が明かされます。ジェムズの故郷の星(ホームワールド)の指導者、ピンク・ダイアモンドが「家族」の抑圧から逃げ出し、地球で新しい人生を送るための姿こそがローズ・クォーツでした。「クッキーキャット」のカラーリングはまさしく、彼女の2つの姿を象徴しています。
③ 「スティーブン・ユニバース」
そして、最終的にスティーブン自身と重ね合わせられます。最終話(SUF#20)「Future」でスティーブンは、製造中止となった「クッキーキャット」を自分なりに作り、それを見たジェムズはクッキーキャットの歌を口ずさみます。ガーネットが「家族と別れてきた。」と呟くと、スティーブンはジェムズとの別れを切り出すのです。
④ 「視聴者とクリエイター」
直接的な物語の描写を離れてみれば、ファンに対するメッセージとして解釈することもできます。SU#1「Gem Glow」で大好きな商品が製造中止となって悲しんでいたスティーブンが、SUF#20「Future」でまがりなりにも自分なりに作ろうとする姿は、作品が完結したことに悲しむファンに対して、この作品からのバトンを受け取って、あなたなりの作品を作ってほしい、と感じました。SUのクリエイターであるレベッカ・シュガーが熱狂するファンとの関係について聞かれた際に、自身もまた過去に何かの作品の熱狂的なファンであったこと、その時は一方的だった想いが、自身がクリエイターになることで、双方向的に変化できたと、いつかのインタビューで語ってたことを想起します。(リンクを張るべきですが、どの媒体か失念してしまいました。)
○冷凍庫の中のブレスレット
エピソードごとの繋がりという点で、冷凍庫の中にちらりと映るブレスレットは特筆すべき描写です。#7「Bubble Buddies」では、パレードで見かけた少女(コニー)が落としたブレスレットを、スティーブンが拾って、いつか返そうと冷凍庫にしまっていたエピソードが語られます。時系列では#1以前の出来事なので、#1の冷凍庫にブレスレットがあることは、とても自然な描写ですが、#1の話自体には全く関係がない描写です。エピソード間の繋がりを示す些細な描写は、枚挙にいとまがありませんが、SU世界のリアリティを担保するディテール、この世界を信じ得る重要な要素だと思います。
(次回は#13「So Many Birthdays」をとりあげます。)
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