香水。
「モルヒネ」のお話の続き。
15日に主催の1人が逝去されてからというもの情緒不安定な日々を過ごしておりますが、あれから色々とありまして落ち着いてる時間のほうが長くなってきました。
ひとえに他の主催者4人から色んな話を聞けたのが1番大きいかな、「彼との思い出」だったり「彼に伝えたいこと」とか「今の自分の思い」とか「今後の活動への思い」とか話してくれて。
そこに自分が聞きたかったこととか、言いたいこととかが全部詰まっていてすごい安心した。
主催者4人のほうが彼との関係が長いし深いし精神的に相当キツいはずで、それを思うとあの早さで話をしてくれたこと自体が私達に対する気遣いや愛情や願いや祈りに他ならなくて。
こんなときに誰よりも負担かけたくないと思ってる4人に気を遣わせて、そうまでさせてしまったことに罪悪感もかなり大きいけど。
今後の話をできる状態になるのを待つ間、ずっと内省しながら過ごすことになるだろうな…と重すぎる気持ちを抱えてたのも本音だから本当に感謝しかない。
でも、落ち着いてきた理由がもう1つあって。
それが個人的に衝撃的で意外な結末になったのが悟りに繋がったから話していきたいと思う。
彼を亡くしてから自分の頭を埋め尽くしたのは「これからどうやって生きていけばいいだろう」てことだったの、そういう未来も有り得ることを本当に想定したことすらも無かったもので。
戻らないものは戻らない、それは受け入れてくしかないんだけど「モルヒネ」で話したように私は日々の生活の色んな場面をその存在に支えてもらってたし「代わり」なんて無くて。
無理して立ち直る必要は無いと思ってるけど、立ち直るとか以前の問題でこの精神状態が長く続けば自分で自分の人生ブチ壊しそうだなと。
それで、なんか拠り所を持っていないとなと。
で、彼の使ってた香水をお願いすることした。
自分のチョイスが流石に気持ち悪すぎるよなとお願いしてからも1人で悶絶してたけど、意外にもすごい早さで送ってくれて手元に届いて。
見覚えのある瓶、普段香水付ける人ではなくて当時「こういうの使ってる」と見せられた経緯も「興味無さそう」と周りがイジったからで。
私自身の記憶の中でも香水付けてるイメージは無かったし、どんな香りか気になるのもあるし今後ずっと誰に話すでもなく弔っていくことになるだろうから拠り所にできそうだなと。
届いて早々に使ってみたんだけど。
私の感想はどうだったと思いますか?
(何を思ってコレ買ったんだ)の一言に尽きた。
私の苦手とする匂いだったんだよねー!(笑)
トップノートはチープな刺激臭、私達にとってすごい懐かしい香りで昔ヘアセットするときに愛用してたヘアスプレーの鼻を突く香りで一瞬で泥臭い活動してた当時の記憶が蘇ってきた。
あの匂いがする香水が存在するとは…!
楽屋がこの香りで充満して気分悪くなって外の空気を吸いに出たりしたな、あのヘアスプレーには散々にお世話になったけど今は廃盤で無いからここでもう一度味わうとは思わなかった。
私達の原点と共にある香りといえばそうだけど香水にしてまで纏っていたいものでもないな。
刺激的な香りが過ぎ去った後にきたのが、私の苦手とするサンダルウッドとイランイランで。
要するに白檀、これお線香の香りなんだよね。
この組合せは一時期オリエンタルだウッディーだと持て囃されて、リラックス効果もあるとか流行ってたことがあるけど私には完全に仏壇。
彼は何を思ってこれを買ったんだ!?
私の記憶の彼とはだいぶ違いすぎた。
終末の無垢な祈りを思わせる。
あまりにも静かなミドルとラスト。
この香りは時間が止まる感覚がするんだよな、全ての終わりに辿り着いた人への寛容と労い。
そんな死生観を持ち合わせてるような性格ではなかったんだ、出会った当初から終始一貫してカッコつけたがりで「Rock」が口癖だったの。
ハンドサインもド定番のメロイック。
「孤高のアウトロー」に憧れてて自分自身をどう見せたがってるのかが周りから見てても分かりやすかったし、逆にそこに対する拘りぶりが夢を追いかける少年の雰囲気を出しちゃってて。
そのピュアさのせいで可愛さが滲んでる。
イメージ戦略を微妙に失敗してるんだよ(笑)
そういうところをよくイジられていた。
退廃的なイメージであれば彼は好んでたけど、このタイプの清廉な静けさとは縁遠かった人。
この香水の中には私の知る彼は感じなかった。
彼が持っていた香水であることは間違いないという事実と、この香りから感じられる人物像が私の記憶とはかけ離れてて情緒が大混乱した。
けど彼の性格を振り返り照らし合わせてるうちに(もしかしたらそれが正解ということかも)と思ったんだよね、たぶん彼は私に見せたい自分しか見せてはいなかったんじゃないのかなと。
「お前は知らなくていいんだ」
…と…この香りに言われてるような気がする。
ご希望どおり、私にはサッパリ分かりません。
少なくとも私の記憶の中にいる彼は違ってる、その理由が彼が見ていてほしかったものだけで私の記憶が構成されているがゆえのことならば今この結果は彼にとって大正解で大成功の形。
私は「彼の目指した彼」の概念を正しく記憶した媒体として完成している、ということなのか。
それだけ大切にしてくれていたということでもあるんだろう、遺したいものだけを持たせたいと17年間も意地を張るとは彼らしさの極み。
(あの性格だったし…納得できるけどここまで徹底してやられるとは意外と少年ぽくて浅い人でもなかったんだな)と失礼なことを思った。
もうちょい単細胞野郎なのかと思ってた。
ともかく私この匂いは苦手でさ、本人がこれを私の前で付けてることなくて本当に良かった!
「臭い」とかボロクソに言うところだったかも!
まさかこんな展開するとは思わず何も考えずに使ったから寝具にも匂いが移っちゃって、香水が付いたかもしれないものはひと通りは洗濯を済ませたけどまだどこかからサンダルウッドの香りがしてきて場所の特定を急いでいる。
どこだー!仏間の香りがするー!
天気いいから換気できるけど、苦手すぎるから対抗してホワイトセージの香を炊いてみるなどしていて合わなさすぎたの本当にウケてる(笑)
次からは使い方を工夫してみます。
そしてこのヘアスプレーの香りは覚えてない人はいないはずだから、皆に会うときに彼の香水だとは話さずに嗅いでもらって話題に使おう。
たぶん一笑いできるんじゃないのかなって(笑)
だいぶ重い気持ちで香水を引き取ったのにね、文字通り蓋をあけたら「彼には全く似合わないうえに臭い」という結論になるとは想定外で。
いつかあの世で彼に会ったとき「あれなに?」て第一声で聞いてしまいそう、今の私には本当にこの香水を彼が気に入ってたのか色んな意味でわかりかねる。
だいぶ思ってたのと違ったなぁ…
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