初めての試み《潜在保育士・保育の経験者》とのベイビーシアター創作に込めた思い。
ーー今回の企画「潜在保育士、保育の経験者とつくるベイビーシアター 『What’s Heaven Like?』」はどんなきっかけから始まったのでしょうか。
弓井:まずベイビーシアターについて少し説明しようと思います。乳幼児期の0歳、1歳、2歳を対象とした赤ちゃん向けの演劇公演を「ベイビーシアター」と言い、ヨーロッパで約30年前から始まった公演形式で、社会の中で赤ちゃんの地位を向上させる運動の一つでもありました。
日本では20年ぐらい前からやる人が出てきた、とっても新しいジャンルの芸術です。
今まで赤ちゃんは、演劇を観れるとは思われていなかったんです。未就学児はお断りという傾向もあるので、劇場に赤ちゃんを連れて行く発想自体がないかもしれません。
私達はむしろ赤ちゃんにフォーカスして、赤ちゃんに向けた演劇を作っています。2016年から活動を始めて、全国の劇場やホールで公演を行い、まだ担い手の少ないベイビーシアターの実践者たちを繋いでネットワーキングを行ってきました。
その中でさまざまな俳優に出会いましたが、皆さん本当に素晴らしくて。その一方で、どういう人たちとベイビーシアターをつくれると発展し広がるのだろうと、ずっと考えてきました。
そこで思いついたのが「保育士」さんの存在で、今回の企画に繋がります。
ーー子どもと関わる職業の人たちと、ベイビーシアターを創ってみたいと思ったのですか?
弓井:そうですね。「ベイビーシアターにとって良い俳優ってなんですか?」という質問をよく聞かれるのですが、私が答えることは一つで、それは「あかちゃんと演劇がつくれる俳優」なんですね。それがやっぱり一番です。
赤ちゃんは何かを働きかけると、必ず返してくれますから。さらに何かを出して返すというコミュニケーションですよね。そのやりとりが柔軟にできる俳優であることを、これまで大切にしてきました。
普段の公演では、赤ちゃんの捉え方やコミュニケーションの訓練から稽古を始めるんです。
それもあって、保育という専門性を持つ人たちなら、もっと赤ちゃんとのコミュニケーションを深められるかもしれない。そう思いました。
自分の子どもを保育園に通わせているのですが、保育園のプログラムの中に演劇の要素がかなりあるんですね。
演劇という言い方はしないけど、紙芝居とか、おままごとか。子どもたちに前に立ってもらって、その日やることのロールプレイをする姿を見たこともあります。演劇的な要素って、かなりあるんですよね。
英語で演劇は「PLAY」と言いますけど、赤ちゃんや子どもは遊びとしてPLAYを自然にしている存在なんです。
ーーそう思うと、演じることの捉え方も変わってきますね。
弓井:「保育の中の演劇性」を私達も学びながら、今回のプロジェクトを進めたいと思っています。参加する保育士さんからも学びたいし、教えて欲しいですね。
私たちが赤ちゃんと一緒に演劇を作る手続きや方法論が、保育の中に新しい気づきをもたらすフックになるかもしれないとも思うので、良い相乗効果になれば嬉しいです。
ーーすごく新しいアプローチですね。違う業界の方同士、創作を一緒に行うことが実験的で、共創のように感じます。
弓井:共創、そうですね。本当にそうだと思います。違う業界の人たちがそれぞれ持ち寄ってクリエイションして。
ーー今回保育士さんが応募するにあたって、演劇や表現活動の経験がなくても参加できるのでしょうか?
弓井:OKです!できると思っています。創作過程そのものがこれまでと違うものになると思います。
作品はBEBERICAのレパートリーから『What’s Heaven Like?(ワッツヘブンライク)』をやるんですけど、即興要素が強くて、俳優に委ねられている作品なんです。
赤ちゃんとどう接するか、どう引き出して一緒に演劇を作るか。俳優と違うアプローチが出てくるのではと、楽しみにしています。
ーー即興要素が強くて、赤ちゃんとのコミュニケーションができる保育士さんだからまた違った展開が考えられるということですよね。面白いです。
弓井:どんな作品になるかはもう、未知数ですね。わかっていたらやりません。(笑)
今回の企画は来年2月に茨木クリエイトセンターで行う公演なのですが、茨木市は子育て世帯が多く住むベットタウンで、自治体としても子育て支援に力を入れているんです。BEBERICAは、茨木クリエイトセンター主催のもと、今年で3年目のベイビーシアター上演を迎えました。
過去2年では、地域の方から「稽古見学をさせてくれないでしょうか」という問合せやご相談をいただくことが多くありました。保育の仕事をされていて、元はアートをやっていた方が茨木に多かったんです。
保育補助の仕事をされている方や、子ども向け教室をされている方もおられるでしょうし。募集の間口は広く捉えています。
ーー茨木市という地域そのものにも、可能性を感じているわけですね。
弓井:ゆくゆくは、この公演をきっかけに地域でベイビーシアターが生まれてくれたらすごくいいなと思います。
ーー茨木市がモデル都市になって、色んな自治体に展開していくと良いですね。高知の芸術士という事例もあります。
弓井:確かに。保育士という名前ではなくて、「乳児演劇士」とか。いやあ、夢が広がる。今回はとにかく第一歩なので、対話を重ねながらやっていきたいと思います。
保育士の方がどういう日々を送られて、毎日どんな課題を感じているかなど、参加者からお話していただくイベントも公開でやろうと思っていまして。リサーチにも重点を置きながら、やっていきたいと思っています。
ーー最後に、参加の検討をされている方にメッセージをお願いします。
弓井:お子さんがおられる方で、参加を希望される方も多いかなと思っています。
子どもがいながらでも活動できるように、稽古やリハーサルはなるべくご都合に合わせて組もうと思います。どれぐらい参加できるか不安な方もいると思うんですけど、ぜひ応募していただきたいです。
ーー弓井さんも2歳のお子さんがいて、7月に静岡で上演した「あ、くーあ」公演では稽古を1日3時間で乗り切ったと聞きました。
弓井:あのときは、出演されていた俳優のお2人もお子さんがいて、他に仕事を持っているから時間のやりくりが大変な現場でした。でも、そのクリアを目標の一つにしていました。
あの時は新作でしたが、今回はレパートリー作品なので、余裕はあると思います。みんなの負担にならない稽古のあり方を、日数も含めて考えていきたいので、そこはご相談させていただきたいなと。
面談では、ベイビーシアター講座とワークショップを一緒にやるので、良い出会いの場として、気軽にワークショップを受けるつもりで来てもらえたらと思っています。
■応募フォームはこちら👇【11月21日(日)締切】
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