オルフェ観劇レポート 〜ベイビーシアターに行ってみた!〜
12月を目前に控えた冬の始まり…のはずが、この日はまだ日差しが暑いくらいの快晴!そんな中、ベイビーシアター『オルフェ』へ参加するべく向かったのは、大阪府にある茨木市市民総合センター。こちらは「クリエイトセンター」という愛称でも親しまれているそうです。
上演の会場は多目的ホールですが、受付と事前のワークショップは別の部屋で行われます。
受付を済ませ部屋に入ると、腹這いでそわそわした様子のあかちゃんや、よちよち歩いている子、ちょっと緊張気味にお母さんにくっついている子など、さまざまな子どもたちが待機中でした。スタッフの方たちによる声かけのおかげか、まるで児童館や保育園のようなホンワカとした雰囲気に包まれています。
あかちゃんを連れて演劇を観に行く…、というと少し身構えてしまう方もいるかもしれませんが、気軽にふわっと参加しても全然OK!、なんですね。
待合室の隣の部屋には授乳・おむつ替えスペースが設けられています。「直前に授乳しておいた方がいいかも?」「あれ?もしかしてオムツがパンパン?!」…などの2大不安要素を取り除けるのは非常にありがたい!(筆者もつい最近まで0歳児を育てていましたが、外出中は常にそればっかり気になっていました汗)
しかもこのお部屋、開演前はもちろん、開演後も利用することができるんです。さらにさらに、会場となるホールにも別途同様のスペースを確保しているとのこと。急な事態にもすぐに対応できるんです。すごい~!!
さてさて、そうこうしているうちに公演前のワークショップが始まります。
『オルフェ』の演出家・よこたたかおさんの自己紹介、そして「オルフェウス」のストーリーに関する簡単な解説を聞きます。
その次は、スタッフさんも交えて、おとなとあかちゃん全員で身体を動かします!「今回一緒に作品を鑑賞するみなさんと挨拶してみましょう」、とのことで、あかちゃんに合わせておとなもハイハイで移動し、出会った人とご挨拶。おとなたちがザワザワするのに合わせて、あかちゃんたちも「なんだなんだ」と心なしか目が輝いている様子…!挨拶のあとは手を使ってちょっとしたリズムを加えて再びご挨拶タイムです。
一段と場が和んだところで、今度は何やら「筒」が登場。なんとこれ、公演中にみんなで使うんだそうです。とあるシーンが来たら「ドコドコドコドコ…」と床を叩くということで、軽く練習します。あかちゃんもブンブン振り回したりして楽しそうでした!
ワークショップが終わり、ついに公演の舞台へと移動します。
まずは全員が一列になって、スタッフさんからお花を一輪渡されます。実はこれ、亡くなったエウリディーチェを弔うお葬式の列なんです!
そのまま会場のホールへ粛々と進み、ぐるぐると舞台の中をゆっくり回ります。低く唸るような物々しい音楽が流れる中、黒い服を着た俳優さんたちも一緒に歩いており、なんだか不思議でちょっと神秘的な感じでした。あかちゃんたちも心なしか不安そう…?!
そしてお花はエウリディーチェの元へと集められ、いよいよお話が始まります…!
葬儀が終わり、愛する妻のエウリディーチェに会うため、オルフェウスは冥界へ行くことを決意します。しかし死者の世界には悪霊たちがうようよ……。
変わった動きで舞台を歩き回る悪霊たちですが、あかちゃんたちは怖がるよりも、じっと様子を見ていたのが印象的でした。最初から最後まで多くのあかちゃんたちが集中して観ていましたよ!
オルフェウスは「愛する人を返してくれ」と歌に願いを乗せて悪霊に語りかけます。今回は鈴木あゆこさんによる生歌唱ということで、テントのように覆われた舞台に響く歌声はとても心に響く体験で、心身にビシバシ波動を感じました。
さて、歌に魅了された悪霊たちはオルフェウスをエウリディーチェの眠る楽園へと導いてくれます。楽園に着くと、不思議な灯りが周囲を照らします。
そんな中、俳優さんの持つ照明の小道具に興味津々なあかちゃんたち。ある一人の子がそれを手に持って離さなくなってしまいましたが、どこからともなく別の照明が登場!
無理に取り戻すのではなく、別の新しいものをおとなが事前に用意しておく…。なんだか普段の育児にも通じるものがありませんか?(by もうすぐ子どもがイヤイヤ期に突入しそうな筆者より…)
無事に愛するエウリディーチェと再会したオルフェウスですが、神との誓いを破り、その姿を振り返ってしまいます。再び死の世界へ戻ってしまうエウリディーチェ。オルフェウスの悲痛な歌声が響く中、物語は幕を下ろします。
愛する人を失い、「私は、どうしてこの世に生まれてきたのだろうか」と嘆く歌詞にちょっと涙腺が緩んでしまいました。うう…。
上演が終わると、その場で記念写真撮ったり、俳優さんとお話したり、しめやかな終演とは打って変わって、わきあいあいとした空気が流れていました。終わってからも舞台上で作品の余韻に浸れるのが良いですね!
<おわりに>
今回の公演『オルフェ』は「死」がテーマに含まれているため、ベイビーシアターと聞いてイメージするような明るく朗らかな作品とはかなり異なった、ちょっとダークで少し恐ろしささえ感じる、ある意味でめずらしい公演だったのではないでしょうか。
けれど、生命は生きている限りその別れや終わりとは必ず向き合うもの。
それを覆い隠してしまうのではなく、あかちゃんという「生」のエネルギーに満ちた存在とこっそり垣間見る…。そんなとても貴重な経験をしたなあ、と思いつつ会場を後にする筆者でした。
そんなわけで、この記事を読んでベイビーシアターに興味を持った方々、ぜひチャンスがあれば訪れてみてくださいね!
【公演情報】