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『クローズEXPLODE』と『HiGH&LOW』って異親兄弟みたいだね

異親兄弟ってそれもう他人だろとかいう話ではない

『クローズEXPLODE』

ご存知、日本不良映画界一の不発核弾頭である。

ザッと検索すれば出てくる批判の数々。
基本的に「映画は加点方式」で褒めて伸ばすタイプの俺ですら当時は幻滅したものだ。

"あの傑作"『クローズZERO』シリーズの続編である。
それだけで俺含む当時の男子は浮き足だった。

今度はどんな熱いドラマが繰り広げられるのか、どんなアクションが観られるのか、新キャラは?既存キャラは?原作キャラは?etc…

それらは尽く砕け散った。
まぁここで批判するのはやめておこう。誰も得をしない。

とにかく上映後は友人達と無言で解散した切ない思い出がある。

先日、公開ぶりに流し見をする機会があった。
これがなかなかどうして面白かった。

俺が成長したのか、覚悟ができていたか。
常にジェネリックハイローを求めている飢えからかもしれない。空腹は最高のスパイス。

そしてようやく合点がいった。

「これはLDHの試金石だったのではないか?」

(以下、愛を込めて『〜EXPLODE』を'EXP'と呼びます。長いし)


思い当たる節は山ほどある。
まずはキャスト陣(敬称略)だ。

岩田剛典、早乙女太一、遠藤雄弥、ELLY、野替愁平、柳俊太郎、一ノ瀬ワタル…

コブラちゃん、劉、KOO、ICE、パール、カイト、関ちゃん…という圧倒的なメンツだ。

彼らが不良の世界で殴り合いをしている。
見覚えがあるのは当然である。

話の流れもどこか似ている。
鈴蘭だけではなくライバル校の「黒咲工業高校」や卒業生の牧瀬&拳さん周り、暴走族やら果てにヤクザの跡取り云々まで絡んでくる。
これを当時の俺は「エピソードが散らかってんな」と思っていた。

デジャブか?

俺は知っている。
走り屋、スカウトマン、不良高校生、スラム街、テキ屋、パリピ、囚人、ヤクザが一斉に出てくる映画がある。比ではない。

雑多さ、混沌さはまさしくHiGH&LOWだ。

なのにこうも変わってくるのはZEROシリーズからバトンを受け取った監督の作品色の違いだろう。
そして「LDH」という軸があるかないか、皆が同じ方向を向いているがどうかもある。

前作や原作で見えない規制が敷かれてしまったEXP、ゼロから自由に世界を創れるハイローでは構築の難易度も桁違いなハズだ。

それでも「無駄だった」と切り捨てたくはない。
しっかりと脈々と受け継がれる遺伝子はこの頃から見て取れる。

ハイロー勢、特に岩ちゃんの精神性はまるでコブラである。
終盤でタイマンを張ることになる因縁の相手が途中で立ち去る背中を眺めながら「あいつはあいつで何かを見つけたんだろう」と優しく呟く。
考えてみればその相手は「ヤクザの若手」であり「高校生に暴行を振るうヤバいやつ」であり、なにより「自分に火を付けてきた男」である。聖人か?

しかしここの「何言ってるかわかんないけど良いムードで終わらせよう」感は紛れもないHiGH&LOWの味だ。EXPにはこの味や匂いが度々紛れ込む。

見所のひとつとしてキャラ紹介を兼ねた鈴蘭喧嘩偏差値発表がある。(後の全日ステークスですね。良い)

なんとここで「一ノ瀬ワタル vs ELLY」が拝めるのだ。

手前が一ノ瀬ワタルさんね
共に鈴蘭生だったのは感慨深い〜

もちろん後に「関ちゃん」「ICE」として因縁が組まれる2人である。おそらく意図的。

前世から殴り合いを演じていたなんてもはや運命である。RADWIMPSが流れてもおかしくはない。


幸い「EXPLODE」はパラレル作である。
原作の一年前を描く「ZERO」シリーズ、原作のその後の世界の「THE WORST」と違って唯一時間軸が「クローズ」と丸被りなのである。
(冷たい言い方をすれば「傑作が公式」と言える)

ファン的にもクリエイター的にも半ば黒歴史と言っていいかもしれない。良くないかもしれない。

言うなれば『EXPLODE』は梅雨である。
ドラマ的にも湿度が高い。どこか陰惨とした、暴力を「哀しいもの」と捉えている節がある。

比べて『HiGH&LOW』は快晴の真夏日である。
どこまでも晴れ上がり、曇り空は見えない。雨が降るとすればそれは容赦ないスコールである。
そしてそれが終わればあっという間に乾き切る。
終幕の頃には降り注ぐ日差しのみが残る。新たな息吹の予感を感じさせて。

「EXPLODE」がなければ「HiGH&LOW」はなかった。今ならそう言い切れる。


せっかくなので見返して思ったEXPの良いところ。

・キャラの立ち具合
これは心から思う。キャラ造形は最高だ。

この手の横並びはアガるよね

主人公の「鏑木旋風雄」(かぶらぎかぜお、すごい名前だ)は立ち姿からして異形である。
髪を染めているわけでも奇抜なファッションをしているわけでもない。
それでも目を引くのは圧倒的に日本人離れした長身細身の体躯。
人が吹っ飛ぶパンチを持っている変な説得力がある。
併せて「喧嘩嫌いだけど鈴蘭にきた」というキャラ設計も素敵だ。不良性のない外見とマッチしているし、ドラマも十二分で主役を張る引きがある。
「じゃあなんで来たの?」に答えがなかったのは残念だけど。

「強羅徹」(中央右)も最高だ。
新たな"鈴蘭の王"としての佇まいが完成している。
眼力、オーラ、戦闘力…どれを取っても惚れ惚れする。
怪優と呼ばれる柳楽優弥が演じているのも納得だ。
あっさり旋風雄につくのはよくわかんないけど。
あと芹沢の二番煎じは禁句な

「小岐須健一」も最高だ。
"鈴蘭最小派閥のリーダー"なんて設定、見たことあるか?加えて主人公の相棒役だ。美味しすぎる。
クレバーな三枚目、人気が出そうなキャラだ。
「落ち方おデブ〜」には当時爆笑した。
中の人が世代的にはZERO年代の演者陣に近い勝地涼なのも安心して見られる。

その他にも「ブラックダイナマイト」「王の切り札」「王の懐刀」「狂気の部外者」「黒咲の銀龍」…誰も彼もが魅力的なキャラばかりだ。
異様とも言える二つ名に燃えない男はいない。
きっとハイローもそうなのだ。成分を感じる。

個人的イチオシが「全員の名前に"島"が入ってるから」という理由でチームを組んでいた「五島劣闘」だ。
そう、明らかな「三中トリオ」「中中一派」の前身である。

ザXでは難しいかもしれないが、いつか「分断された定時と全日が手を組む」なんてド熱い展開が為された場合には是非観てみたい。

忘れがちだけど三中トリオはそれぞれ番長経験あり、中中は全日とはいえ鬼邪高の一年を仕切ってる実力者なのでたぶんその辺の不良じゃ相手になりません。舐められてからの瞬殺返り討ちが似合うね

まだまだ拾える要素はある。

強羅の両翼の「本多保」「高木哲次」なんて今すぐにでもハイローに輸入できるレベルの佇まいをしている。
「新聞配達で生計を立てているメガネリーゼント」と「ド直球オラつきヤンキー」だぞ??最高だ。
中の人のネームバリュー的にもそれぞれ「ミュージカル名優」と「DA PUMP」だ。最強か??
ぜひぜひこの手のジャンルにバンバン参戦してほしいところ。

いろんな意味でこの機会に見返してみると面白いかもしれない。
最近ではすっかり我が家のプレイリスト入りです。
皮肉抜きでオススメだよ!
ブレイク前の広瀬すずも出てるし!!


おまけ。

名前に「雄」つく王が多すぎない?
名は体を表すの??

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