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レシート渡し選手権

はじめに

 私は現在1人暮らしをしている。大学生になって実家を出て、今年で大学3年生という事で1人暮らし歴は3年ということになる。1人暮らしを始める前は親や友達から「生活力がない」だの「1週間で部屋が10年風化しそう」だの言いたい放題言われてきたが人並みに生活することができ、3年間で部屋を5年風化させるに留まっている。
 そんな私だが1年生の頃から何と自炊を行っている。男子学生で自炊を行っているなど相当珍しいのでは無いだろうか。あまりの珍しさに絶滅危惧種と言っても過言では無いように思う。実質オオサンショウウオだ。
 さて、自炊をしていると言う事はもちろん、日々の食材を買うため、スーパーに通う事になる。私の場合、家の近くにあるスーパーに週3回程度通っている。偉い。この点に関して私はその辺の主婦と同等、それ以上の「家庭力」を誇っていると自負している。スカウターがあれば故障は必至だろう。主婦界の不亜家があれば「X」くらいには食い込める強さなのではないか。キチキチキチキチ(キサナドゥの笑い方)。
 このように3年間スーパーに通ってきた私だが、ある日1つの事に気がついた。それはレジ係の人がレシートを渡す時のバリエーションである。スーパーのレシートというのはコンビニなどのレシートより情報量が多く長くなりがちである。そのためかレジ係のおばちゃんによって少しずつ個性が出るのはもちろん、レジの混み具合などによってもレシートの渡し方が異なってくるのである。そこで今回のノートでは私が実際にされたレシートの渡し方を大きく分けそのその渡し方を私が評価していく事にする。

レシート渡しの種類と評価

折り畳みレシート渡し

折り畳みレシート渡し

 まず紹介するのは折り畳みレシート渡しと言う技である。折り畳みレシート渡しとは、レシートを二つ折りにしてから渡すという技法である。この渡し方の素晴らしい点は何と言ってもレシートを財布に入れやすいと言う点である。上述した通りスーパーのレシートは長く、そのままだと財布には入らない。そこでレジ係の人が客にレシートを渡す前に二つ折りにして渡す事でそのままダイレクトに財布へ入れることができるようになっている。まるでエンペラーキリコと言うスーパーのおばちゃんから出てくるボルメテウスサファイアドラゴンというただのレシートを、オーガフィストにクロスすると言う一手間を加えることでダイレクトアタックまで持っていけると言うようなシンプルかつ強力な渡し方なのである。
 私はこの渡し方を最も評価している。レジ係の一手間により生まれる2つに折られたレシートは客の事を考る愛により生まれた愛すべきキーカードではないだろうか。

折り畳みレシート渡し亜種

折り畳みレシート渡し亜種

 折り畳みレシート渡し亜種とは、折り畳みレシート渡しよりさらにもう1回折られた状態でレシートを渡す技法である。レシートは四つ折りになり、よりコンパクトになって客の手に渡る。
 私はこの渡し方をあまり評価していない。なぜなら2回折られたレシートは小さく、財布に入りやすいが財布の中から探しにくくなっており財布の中を整理する時に少し厄介に感じるからである。過剰に折られた感が私の心を駆け抜ける。その疾走感はアルプスの少女ハイジのオープニングに匹敵する。過剰であるのは大抵よくない。試合終盤のフェアリーライフ、手札が潤沢な場面でのアストラルリーフ、対ザキラ戦で3ターンのエクストラターンを得たのに攻撃せずシールドを14枚も謎に増やしたエスメラルダである。普通が1番。

折り畳みレシート渡し希少種

 この技法は、レシートを二つ折りにする際、完全に二つ折りにするのではなく軽く折る事で約45度〜約120度の角度を付けて渡す技法である。この技の使い手は数人しかいないのに加え、レジが混んでいる時にしか見る事ができない珍しい型である。
 この渡し方であれば、亜種と違い二つ折りにスムーズに移行できるので私は好きである。ただし、やるなら徹底的にやるべきだと考える。ONE PIECEの海軍本部元帥、赤犬も「徹底的な正義」を掲げ、死神、黒城狂死郎もザキラだけじゃなく不亜家全員殺すと言っちゃうほど徹底的な人間である。これらのキャラが大好きで、影響されて育った私も中途半端が嫌いである。よって希少種は一定の評価はするものの及第点という事にしておく。ちなみに私の考える黒城のベストバトルは、アニメデュエル・マスターズチャージ49話、黒城対ホワイトである。視聴する事をお勧めしておく。

水平線渡し

 この技法はシンプルである。レシートに何の変化も加えず太陽が沈む水平線のように真っ直ぐの状態のまま渡す技法である。この技のメリットはレジ係が楽であると言う点であるが、客からするとクソ長レシートをそのまま渡されるとスムーズに財布に入れられず、入れるのに手間がかかり、荷物などで手の自由度がない場合、雑にレシートを扱ってしまう恐れが出てきてしまう。
 よって私はこの渡し方を評価しない。私はこの技を使うレジ係を避けているが、やむなくこの技の使い手に当たってしまう事がある。そこで水平線渡しをされ、レシートを財布にグシャっと入れてしまったり落としてしまったりなどしてしまった事がある。そのたびに何度大粒の涙を流したことか。悔しさと自分の無力さに打ちひしがれ、授業を寝過ごしてしまう事もあった。N西先生ごめんなさい。皆さんはレシートを扱う事がある場合、ぜひとも水平線渡しを行う事をやめて欲しいと切に願っている。

戸愚呂渡し

戸愚呂渡し

 決して幽☆遊☆白書の某兄弟ではない。私は、買い物の際カードで支払うのだが、レシートをカードに巻き付けて渡すのがこの技法である。初めてこの技を見た時は目を疑った。何をしているんだ、嫌がらせなのか?その謎の一手間はなんだと戦々恐々とした。未だに意味がわからない。確かに財布に入れやすいがカードと一体化しており少々面倒くさい。この技の使い手は1人しかいないが、私が見る限りカード支払いをしている客にはこの技を惜しみなく披露しているようだ。教えはどうなってんだ教えは。現金で支払った客にはレシートでお釣りを包むのかと思いきやそう言うわけでもない。意味がわからない。
 私はこの技法に関しては評価する域に達していないと考える。未熟である。よって現時点では評価不能としておく。私はスーパー買い物歴3年とは言っても、たかが3年である。おそらく何10年とレシートを渡し続けているであろう戸愚呂渡しの使い手のおばちゃん(戸愚呂母)とはレベルの差がありすぎる。太刀打ちできない。歴戦の猛者である戸愚呂母が最終的に結論づけたこの特殊な技には何かの意味が込められているのだろう。その意味に気付けない私には何かが足りていないと感じる。この技をいつか正しく評価するためにこれからも私はスーパーに通い続け、己を高めようと思う。

猛り爆ぜるレシート渡し

 このレシート渡しは研修中のレジ係かつ、レジが混んでいる時に散見される技である。慣れないレジ作業かつ忙しい時にレシートの渡し方はどうなるだろうか。皆さんも考えてほしい。そう、雑になるのだ。これが技まで昇華したのが「猛り爆ぜるレシート渡し」である。丁寧さを捨て速さを重視したこの技はまさに、殻を破る型のパルシェンである。心の中で使い手をパルシェンと呼んでいる。殻破りするな。レシートをほとんど投げるかのように渡し、ひどい時には宙を舞い床に落ちてしまう事もある。お前の腕を切り落として宙に舞わせてやろうか。どんなに忙しくても丁寧に仕事をするようにしよう。「巧遅拙速」という四字熟語も時と場合を考えよう。

悉く滅ぼすレシート渡し

悉く滅ぼすレシート渡し

 最凶で最恐で最狂な渡し方。お前がナンバーワンだ。レシート渡し界のザキラ、黒ひげ、魔人ブウ。3年間で2度この技を使われ、私のレシートと心を破壊していった。客のことを一切考えないこの技はレシートを握りつぶすように持って渡してくる。原型をとどめているか怪しいレベルであった。生活が上手くいってないのか分からないが悩みがあるなら話くらい聞いてあげようとおまう。顔面殴ってから。全てを破壊して効率のみを突き詰めた悲しきレジマシーンとなった使い手は元の人間には戻れないだろう…。2度とレジするな。

怒り狂うレシート渡し

 これは番外編的な扱いになる。私の友人がスーパーでレジ係をしていた時に冷やかしで1度行った時に使われた技である。来るなと釘を刺さしていたのに堂々と自分のレジに並ぶ私を見た友人は何を思ったのだろう。照れと怒りが混ざった面白いレシート渡しであった。

おわりに

 ここまで、私がこれまで経験したレシート渡しを分けて評価していった。レジ係と客という、レシートを通した思いやりの意思疎通は嫌な気持ちになる事もあるが、仕事に対する姿勢や愛を感じる事も多くとても心地よいものである。セルフレジ化が進む今日、レシート渡しという文化はどんどん廃れていってしまうかもしれないが、この文化が残っている間は素晴らしき一瞬の愛のやりとりを楽しもうと思う。

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