管鮑の交わりとかいうめちゃ萌bl漢文があるんだが

このnoteは漢文の世界にいる推しカプの話がしたいだけのオタクが書き散らしたものである。古典の授業のために現代語訳を探していてこちらがヒットしたあなた。申し訳ないがここに現代語訳は載っていない。あるのはただ一つ、“”萌“”である。

管鮑の交わりとは"お互いに理解しあっていて、自分たちの立場が変わっても壊れることのない友情"を意味する故事成語だ。管仲と鮑叔の仲の良さに由来した言葉で、漢文にこの2人の友情エピソードが残されている。

私がこの漢文を初めて読んだのは学校の授業でのことだったが、一時期はこの2人のことしか考えられなくなり、図書館で2人にまつわる漢文と解説文を読み漁り、定期テストではその範囲だけしっかり満点を取った。現代の感覚でこんなにもハマれる深いストーリーを700年以上前に生み出していたチャイナ、すぎょい。

まずはそんな“管鮑の交わり”の大まかなストーリーについてご説明しよう。十八史略や史記など書籍によって書き出しや内容が少しずつ異なるが、ほとんどは同じなので私が最初に触れた十八史略版を中心に話していく。

(参考:https://manapedia.jp/text/1968)


舞台は春秋戦国時代の中国。たとえ兄弟であっても命を争う戦乱の時代。斉の君主であった兄、蘘公から災難が降りかかることを恐れて、弟たちは他国へ逃亡する。その弟の一人である子叫は管仲を補佐役にして魯へ、同じくその弟の一人である小白は鮑叔を補佐役にして莒へ逃げた。しばらくして別の弟の無知が蘘公を殺して、その無知もまた人に殺されてしまう。

斉国で後を継ぐ者が必要になり、勝った方が君主になれる、子叫と小白の帰宅レースが始まる。管仲が先回りして小白を矢で射て暗殺しようとするも失敗。結局、小白が斉へ先に到着して即位した。ここで君主となった小白の名が桓公に変わる。

この後、捕らえられた管仲に政治を任せるよう、鮑叔が桓公に推薦する。桓公は自分を殺そうとした管仲への恨みは置いておいてこれを採用した。ここから鮑叔は管仲の良いところを語り始める。(実質自分の性格の良さをアピールしているみたいなところがある)管仲が商いに失敗したときも鮑叔は責めなかった、管仲が戦から逃げたときも鮑叔は臆病だとは思わなかったそう。

そんな鮑叔に管仲は言う。
「私を生んだのは父と母ですが、私のことを本当に理解してくれているのは鮑叔です。」と。








え?????最後の爆弾発言なに??????  

無知一瞬で退場するじゃんとか、子叫はどうなったのとか、桓公心が広すぎるなとか、いろいろ言いたいことあったのに最後で全部吹っ飛ぶ。肉親よりも自分を理解している男、そして十分に理解されている自覚のある男、もうそれ愛じゃん………

でも初読の人からすると、どうして鮑叔がこんなに管仲に優しくしてくれるのか分からないことが多い。商いもダメ、戦いもダメ、暗殺には失敗しちゃうし、君主の怒りも買ってる男、管仲を安全なポジションにいる鮑叔がわざわざ宰相に推薦してやる理由は何だろう?

私はすぐにピンと来た。
こいつらぜってー幼馴染だ。ここに一切そんな描写はないけど私には分かる。2人きりのときは字(あざな)で呼び合い、互いの両親も仲が良く、小さい頃には一緒にお風呂入ったこともある、そのやつ。鮑叔だけが管仲の隠れた才に気付いていたから宰相に推薦してあげたんだろう。

そんな確信に近い願望を持って私はインターネットの大海へと乗り出した。2人に関する更なるエピソードを求め調べていると史記verの管鮑の交わりにたどり着いた。そこにはこんな記述が。

少き時、常に鮑叔牙と游ぶ。
鮑叔其の賢なるを知る。

ワ〜〜〜オ、こいつらマジで幼馴染だった。
しかも鮑叔が管仲の賢さを知っていたと明言されてる!オタクの妄想が幻覚じゃないことってあるんだ……700年の時を超えた解釈一致に私は思わず天を仰いだ。アンタ達の思い、現代に届いてんよ!!

他にも知っておくと2人への解釈が深まる情報がいくつかあるので以下にまとめる。

・命懸け帰宅レースに負けた子糾は桓公の要求により殺される。補佐役だった管仲と召忽(このverには登場していないもう1人の補佐役)の身柄も斉国に引き渡すよう命じられるが、召忽はその前に自決し、管仲だけが桓公の前に引きずり出されることになった。
・その後管仲は様々な改革を行い国を発展させ、桓公の右腕的存在になって、鮑叔は管仲の下につくことになる。
・鮑叔が644年に、管仲が645年に亡くなった。


《ここから妄想200%パート》

事実関係がわかったところで、この2人の性格と関係について考えていきたい。というか私の妄想を聞いてほしい。

管仲は、賢く政治の才能があるのに運が悪くこれまで報われてこなかったせいで自己肯定感が低いタイプ。度重なる失敗からものすごい陰の気を感じる。しかも一緒に亡命先で補佐役を務めていた仲間が隣で自殺したことがトラウマになっている。絶対首をはねられる、と死を覚悟した時に助けられ、鮑叔を自分の人生に差した一筋の光のような存在として思っているに違いない。
「俺を一番理解しているのはお前だよ」「お前がいなきゃ生きていけない」「絶対にいなくならないで俺だけを見てて」
よってヤンデレ攻め。

鮑叔は、要領よく器用に生き抜いてきた男女両方から好かれるタイプ。管仲とは反対に陽の人間。自分が桓公に気に入られていることを理解していたからこそ恐れずに管仲を用いるよう進言できた。だんだんと自分より出世していく管仲が恨めしくなって一度距離を置くことにする回がある。でも管仲に近づく別のやつが現れて、鮑叔もまた自分にはあいつがいなきゃ状態になるので仲直り。いつも涼しげな顔をしているけど内心ドキドキ、というよりゾクゾクしてる。
「それは困りますね あいつと離れることになりますから」「勿論、なんでもして良いからね」「大丈夫、君は僕が好きだよ」 
よって包容受け。

そして意外といいキャラしてるのが桓公。管仲や鮑叔よりも幼い、若君主くん。(事実とは異なる場合があります)ツンデレ属性。自分が一番鮑叔のことをよく知っていると思っていたのに管仲が現れたせいでご機嫌ナナメ。何かと鮑叔に用を言いつけて二人の仲を裂こうとしてくる。最初ウザイけどだんだん憎めなくなってくる子なので、スパダリ将軍を用意してそちらとくっついていただく。

最初は鮑叔が管仲を保護するように始まる関係だけど徐々に昔のような対等な関係の2人に戻っていくの。互いが互いを自分に必要な存在だと気付いたとき2人の友情は永遠に……。
でも鮑叔が先にこの世を去っているという事実。残された管仲は相当苦しかっただろうと思う。これは偶然か否か、管仲は鮑叔の後を追うように一年後に亡くなっている。

ほら、ここまできたらもうタイトルの“管鮑の交わり”がいかがわしいものにしか聞こえないでしょ。交わりってなんだ、交わりって。あと、管仲×鮑叔でしっかりカプ名になってるの公式さん左右分かってるわ…



最後に!推しカプの一番エモいところ、なんと言ってもこの二人の仲の良さが一つの故事成語になっちゃってるところです。こんなん一世を風靡してもおかしくないのにまだまだ全然知られていない過疎ジャンル……この際リバでも良いから見たいのです。みなさまどうか“管鮑”をよろしくお願いします。








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