Ameo
僕は雨男である。
しかも、極度の雨男である。
社会人一年目。配属先は静岡県島田市。
のどかな茶畑が広がる、牧之原台地。金谷鉄道が寄り添う、大井川。
空気が澄む季節には、遠くにそびえる富士の山が見える。
地元の友達を作ろうと、話題作りに登った初めての富士山。
「どうせなら御来光を」と思う。
麓は晴天。
山頂は、雷雨。
凍える思いで逃げ込んだ山頂の公衆トイレ(満員)。
各方面からの登頂者と過ごした無言の長い夜。
満身創痍の下山。
やはり、麓は晴れ。
その後、目的は「御来光」に代わり、静岡滞在期間3年の間に計5回登頂。
いずれも雷雨。ふもとは晴れ時々曇り。半ばやけくそ。
4回目の登頂では、山頂でTシャツ一枚で震えていた観光客にダウンジャケットを貸す。
仲良くなり、ラーメンをおごってもらう。
5回目を数えるころには、山頂で風がしのげる場所がわかる。
公衆トイレからの卒業。
ともに風をしのいだ、板前修業中の青年との出会い。
彼の店で生まれて初めて口にした、大将のとてつもなく美味しい玉の味。
月日が経ち、中途採用で入社した建設コンサルタント時代。
隠していた雨男事情。
数回の経験で。僕が現場に同行すると「雨が降る」と、ペアを組んでいた(厳しくも優しい)先輩にばれ始めていたころ。
現場に到着し、念のため雲の位置を先輩と確認。
晴れ空に雲無し。
車から降りて、記録用のA3図面(紙)を掲げ現場調査開始。
数分すると迫りくる黒い雲。続く、小雨。
雨に濡れるのは嫌だし、何より図面が濡れてしまうので、車へ避難。
車内では、先輩が口にする「やっぱりな。」と、僕の心の中で響く清々しい「やっぱりな」。
車内で少し様子を見ていると。晴れ間が出てきたので、調査再開。
調査を再開すると小雨。車内へ避難。
それでもやっぱり、先輩も。もちろん僕も、半信半疑。
だって、ガリガリゴリゴリの理系の技術者ですから。
少しすると、晴れ間が。
「よし、出るかぁ。」と先輩。
辛気臭そうに空を眺めながら。
「(雲に)今度から。ちゃんと言っとけよ。」と一言。
優しい先輩。
諦めの大雨。ずぶ濡れになりながらの、現場調査。
(個人の体感ですが)降水確率40%はもう、僕の上空は100%雨なのです。
昨年。知り合いから突然舞い込んだ、2泊3日の韓国旅行一人旅の話。
初めての韓国。眠らない街東大門。
広がるイマジネーション。徐々に高まる、抑えられない興奮。
2泊3日フル稼働計画。
飛び立つ飛行機。浮足立つ僕。
そして、韓国に迫る大型台風。(Ameoフルパワー)
ともに上陸した朝鮮半島。仁川国際空港。
韓国人ママに「朝までやっている。」と聞いて、徹夜の覚悟で臨んだ東大門周辺の商店街。
激しく吹きまわる風の中、続く続く、閑散としたシャッター街。
現実が受け入れられず、自分に言い聞かす「多分定休日。」
時間は、深夜1時。
ホテルへの帰路。
終電が無くなり、酔っ払いと揺られる路線バス。
片言英語の日本人にホテルに近いバス停を教えてくれた、親切な韓国の酔っ払い。
감사합니다。
やっぱり現実が受け入れられず、2日目の再確認。
Googlemapを疑いながら、歩き回った東大門周辺。
やっぱり広がる、暗黒のシャッター街。
江南で踊り明かした2日目の夜。やけくそ。
韓国土産は、仁川国際空港の免税店。
大好き韓国人。감사합니다韓国。
今度は必ず、一人で行きます。
そして、今年。
勤めていた会社との契約期間を満了し、転職活動中。
偶然、目にした「介護職」という言葉。
その言葉を目にするまで、全く意識したことのない職種。
でもなぜか、そのワードを目にした瞬間。
胸の中に❝ストン❞と落ちる感覚がした。
初めての職種、初めての職場、初めての出勤日。
土砂降りの中、恋だ自転車。力強く、こぎ続ける僕の足。
傘を差していたので、立って、こぐことは出来なかったけど。
心は思い切り飛び跳ねて。
※後日、カッパを買いました。
僕は今、介護職に就かせていただいています。
晴れの日が好き。