みずうみ Mara Lake
“みずうみの入り江に立てば
波がつぶやく
ここにはもう少女の頃の
君はいないと”
作詞| ヘンリック・イプセン 日本語歌詞|山川啓介
作曲|エドヴァルド・グリーク
ペール・ギュント戯曲・ソルヴェイグの歌
歌|大貫妙子
中学3年生の春、家の事情で蒲郡から豊橋に引っ越したものの
父親の会社は蒲郡に、私も受験生という事もあり
父と二人で遠距離通学(通勤)に・・・
毎朝父と朝7時に車で自宅を出て、
8時15分から始まる部活にぎりぎり間に合わせていた。
国道23号線は朝の通勤ラッシュで混むため
父は確か1号線を飛ばして音羽辺りから山越えして
蒲郡に抜けていた気がするが定かでは・・・
この山の途中に雑貨屋さんがあって、そこでいつも父は
おにぎりかサンドイッチを買って私に食べさせてくれていた。
当時、伸ばしていた髪をたった二つに分けて結ぶのに
車のサイドミラーを使いながら随分時間をかけて何度もやり直していたのを
今でも不思議と覚えている。
髪もようやく結え、おにぎりを頬張る頃
ちょうどNHKの「みんなのうた」が始まる。
初めて「みずうみ」がラジオから流れてきたときに
何とも言えない気持ちで一気に魅かれ
毎朝、父親に聞こえないように小声で一緒に歌っていた。
帰宅後もNHKのテレビ番組で何度も何度も聞いていたのだが
一カ月ごとに曲目が変ってしまい、いつしか聞けなくなった。
そんなことも夢のように忘れ
就職が決まった20歳の冬、
テレビから聞き覚えのある声が!
N証券グループのコマーシャル
「花・ひらく夢」
急いでテレビに嚙り付いて
コマーシャルを(観て)聞いていると
小さな字幕で
“歌・大貫妙子”
すっかり忘れていたのに中3の私が蘇り
涙が出るほどうれしくなった。
当時はCDを買いたくてもアーティストの名前が分からず・・・
すぐさま駅前のYamato(ミュージックストアー)に出かけ
大貫妙子さんのCDを全部買いあさり。
“逢いたいのは
あなたよりも
そばかす気にしてた日の私“
Mara Lake はブリティッシュ・コロンビア州の南西にある
オカナガン地方にある大きな湖。
私のパートナーの高校時代の友人たちと過した休日。
夕飯を囲みながらの会話は彼らが子供時代過した
近所のおじさんの話や怖かった先生の話など・・・
“少年は鳥になれずに
大人になって
私は水鏡の中
私を探す“
真夏の太陽をキラキラさせて光る Mare Lake の畔。
中3の春、そして今この歌の意味をようやく実感した夏の週末。
懐かしい私。
【text by Shinobu from Canada】
村田しのぶ Shinobu Murata V. 愛知県蒲郡市生まれ。豊橋市で学生時代を過ごし24歳の時、家出同然でカナダに渡る。その後勢いでカナダ人と結婚。15年後に力尽き離婚。レストラン、パブ、コーヒー・ハウス、ゴルフ場のラウンジ等々、17年間続けた自営業に終止符を打ち、現在は地元のカレッジなどで日本語・日本文化のインストラクターをしたり、スカイプで世界各国の生徒さんに日本語をレッスン中。趣味の音楽で知り合ったトランペッターとBC州にあるロッキーマウンテンの麓の小さな町キンバリーに在住。