大雑把に寛容な国
どうしてこうも私は、大雑把なのだろうと時々落ち込む。
細かいことを気にしないというと、聞こえはいいけど、雑というか、チェックが甘いというか。
「宮本の校正はザルだ」
と、かつて会社員時代には、上司に断言されたっけ?
編集者、ライターとしてはかなり致命的な欠点である。
パソコンで書くようになり、変換ミスはさらに増えた。
やれやれな私である。
が、そんな私も、ネパールには随分と救われた。
何しろパスポートの生年月日と出生届の生年月日が違うとか、国民IDカード(日本で言えば、戸籍とか住民票にあたるもの)と高校の卒業証明書の氏名が違うとか、あり得ないような間違いがある国である。その前では私のミスはなんとささやかに見えることか。
ちなみに、この国の国民IDカードは写真入りの身分証明書で、あらゆる役所手続き(婚姻届や、会社登録届、土地の購入等々)に使われる大切なものだ。ただ、写真はカード作成時のものがそのままずーっと使われる。
以前、ネパール語を教えてくれていた日本語教師をしている友人のIDカードを見せてもらった時は驚いた。
「これ誰? 映画スター?」
って感じのすらっとした細面のハンサムさんがそこにいた。
そのハンサムさんと、目の前の中年腹のおじさんが同一人物だと誰がわかるだろう? 20年前の写真って、証明になるん? ざっくりすぎるネパールには、いつも驚かされる。
それに加え、年齢詐称もあちらこちらで行われる。
年齢制限がある海外派遣の申請や、全国一斉に行われる卒業試験の年齢制限に合わせるために、生年月日をごまかすなんてことも日常茶飯事。
が、しかし、完全に全ての書類で辻褄を合わせていないため、出生届と卒業証明書の年齢が噛み合わなかったり、何かと後々問題が起きる。
また、単純に、役所の人の記入ミス、スペリングミスというのも多い。役所の人のミスなのに、それを訂正するため、何日もあちこちの役所をたらい回しされたりする。
この雑な感じ、何?
大雑把な私から見ても、ダメでしょ、レベル。
それに比べたらねえ、一文字の間違いに大騒ぎする自分は大袈裟なの?って感じちゃうこともある。
一文字違うくらいなんねえ。
いやいや、それダメでしょ。
郷にいれば郷に従うってのも一理だけど、感化されない方が良いこともあるのだよ。
海外で長く住むには、そのバランスを上手に取るのが大事じゃないかね。
【text by Chikako from Nepal 】
宮本ちか子 瀬戸内海の島で海に囲まれて育つも、なぜか海のないヒマラヤの国ネパール在住。夫も仕事も家財道具も全て捨て、ネパールに移住したのは30歳のとき。ポカラで15年ホテルを経営するが諸々あって、泣く泣くホテルを売却。現在はフリーランスライター、タマラエネルギーワーク、仕入コーディネイト等々。バツイチで結婚は2回、娘が1人、ネパール人配偶者はアーユルヴェーダの治療師。「刺身が食いたい」とつぶやく回数が最近さらに増えてきたアラフィフである。
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