A piece of rum raisin - 第2ユニバース、絵美の殺害
A piece of rum raisin - 第2ユニバース
絵美の殺害
第8話 洋子・シンガポール3
1986年7月6日(日)
●1986年7月6日(日)、チャンギ空港
●洋子の手紙
「明彦、
あなたがあれから私になんども連絡しようとしていたことを知っています。そして、私もなんど受話器を握り締めて、あなたの番号を回したことか。それでも、だめ、最後の番号を回すことができない。
あのシンガポールで私とあなたが過ごした数日間の日々を私は生涯忘れない。私の気ままでわがままで、惨めかといえる一生の中で、あの数日間、いえ、あなたと過ごした7年間は、ある種の光芒を放っているといえます。
私は、明彦、あなたを愛したのでしょう。いえ、私はあなたを愛していた。そして、今でもあなたを愛しています。しかし、明彦、あなたには私だけしかいない、とは思いません。あなたには絵美さんという女性がいて、彼女は、私以上にあなたの人生にとって重みがあったと思います。いえ、事実、あったんだわ。癪だけど。
ああ、いやだ、こういう書き方をするつもりはなかった。この手紙を、何度も破った手紙同様、いったん破り捨てて、書き直そうかしら?絵美さんのことなど書く気はなかったのに。でも、意を決して書きましょう。
あなたはいつだったか、私に言ったことがありますね?『ぼくらは徹底的な利己主義者であって、徹底的であるだけ、他者を所有したり、他者を従属させたりしない。共有すらしない』と。『ぼくらは非常に孤独なんだ』と。そのとおりです。私はあなたの言う徹底的な利己主義者だった。孤独でした。
だけど、シンガポールであなたに会ったとき、私は考えを変えた。
私は徹底的な利己主義者ですが、少なくとも女として、あなたと共有するものが・・・、いえ、違うわね。あなたの一部を所有することができた。
シンガポールで、私は、あなたに言いました。『今は安全日だから。大丈夫よ』と。でもね、安全日じゃなかったのよ、明彦。あなたをだましたの。だけど、だめね。妊娠しなかった。
ごめんなさい。
あなたに会いに来て欲しい、などとは言いません。これからも会うことはないでしょう。あなたには、あなたにふさわしい人が現れるでしょう。私の考えていることはあなただったらわかると思います。
こんなに長く書くつもりはなかったのに、2ページ目になってしまいました。
最後に何を書こうかしら?
何も書けない・・・書くと・・・私・・・
さようなら
最愛の明彦へ 洋子
PS:私が明彦から聞いたことを基に、調査したことがあります。大学の法学の助教授は便利なことがあるのよ。私の知り合いのあるアメリカ人の政府関係者に問いただしました。同封されているのは、絵美さんに関するFBIの調査報告書です。彼女は・・・生きてたら、私は到底この女にはかなわなかったわね?彼女は肉薄していたのね?でも、それで、明彦、この報告書で納得してください。これ以上、過去にとらわれないように。」
ぼくは、ぼく自身をストーンコールドと思っている。利己的な男だ、石のように。しかし、ぼくはぼくの短い人生で、これほど読んで悲しくなる手紙を受け取ったことがなかった。ぼくはおそらく十数年ぶりに泣いた。
しばらくして、ぼくは気を取り直した。
分厚いA4の書類。ぼくは開くのが怖かった。だが、読まないわけにはいかない。開いた。表紙は、大きく、映画でしかお目にかからない円形の黄色い縁取りに青の地の、アメリカ合衆国連邦捜査局の紋章が中央にある、Federal Bureau of Investigationの公式報告書だった。
1985年12月6日のCriminal Reportだった。絵美の殺害日だ。9月30日の会計年度終了前に、どうやって洋子はこんなFBIの内部資料を入手できたんだろう?
宛先は、連邦捜査局長官、ウィリアム・ウェブスターだった。
タイムライン
★第1話 絵美の殺害1、米国東部時間、1985年12月7日、9日、10日、ニューヨーク
森絵美殺害日:
●NYタイムズスクエア
●NYPD、ノーマンのオフィス
1985年12月7日(土)午前11時米国時間
1985年12月8日(日)日本時間
森の母への殺害連絡:
1985年12月7日(土)米国時間
1985年12月8日(日)日本時間
NYPD、NY検死局
●モルグ
1985年12月8日(日)米国時間
1985年12月9日(月)日本時間
森の母から明彦への連絡:
●森良子からの電話
●島津洋子への連絡
1985年12月8日(日)米国時間
1985年12月9日(月)日本時間
洋子のNY入り:
●NYPD、ノーマンのオフィス
1985年12月10日(火)午前米国時間
1985年12月11日(水)日本時間
森の母のNY入り:
1985年12月10日(火)午後3時米国時間
1985年12月11日(水)日本時間
★第2話 絵美の殺害2、米国東部時間、1985年12月11日、ニューヨーク
明彦のNY入り:
●ケネディ国際空港
●ペニンシュラホテル
1985年12月11日(水)午前8時米国時間
1985年12月12日(木)日本時間
洋子たちとノーマンとの面会日
1985年12月11日(水)午後1時半米国時間
1985年12月12日(木)日本時間
★第3話 絵美の殺害3、米国東部時間、1985年12月11日、ニューヨーク
●NYPDノーマンのオフィス
●ニューヨーク主任監察医事務所
●絵美のコンドミニアム
洋子たちとノーマンとの面会日
1985年12月11日(水)午後1時半米国時間
★第4話 絵美の殺害4、1985年12月11日、絵美のドミトリー
●第3話 絵美の殺害3、P.2
●第3話 絵美の殺害3、P.3
●絵美のコンドミニアム1、1985年12月11日
●絵美のコンドミニアム2、1985年12月11日
●ヒンクリーとブッシュ家の関係
●ジョン・ヒンクリー
●ケースクローズド?
第1話 絵美の殺害1、1985年12月7日、9日、10日、ニューヨーク
●神の摂理、2010年6月11日(金)、第1ユニバース
●モルグ、1985年12月8日(日)
●森良子からの電話、1985年12月9日(月)
●NYPD、ノーマンのオフィス、1985年12月10日(火)
第2話 絵美の殺害2、1985年12月11日、ニューヨーク
●ケネディ国際空港、1985年12月11日(水)
●ペニンシュラホテル、1985年12月11日(水)
第3話 絵美の殺害3、1985年12月11日、ニューヨーク
●NYPDノーマンのオフィス、1985年12月11日(水)
●ニューヨーク主任監察医事務所、1985年12月11日(水)
第4話 絵美の殺害4、1985年12月11日、絵美のドミトリー
●絵美のコンドミニアム1、1985年12月11日
●ヒンクリーとブッシュ家の関係
●ケースクローズド?
第5話 洋子・シンガポール1、1986年7月4日(金)
●1986年7月4日(金)、ラッフルズシティ―
第6話 洋子・シンガポール2、1986年7月4日、5日
●1986年7月4日(金)、ウエスティン・スタンフォード
第8話 洋子・シンガポール3,1986年7月6日(日)
●1986年7月6日(日)、チャンギ空港
●洋子の手紙
ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編1
ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編2
ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編3
挿入話『第7話 絵美と洋子、1983年1月15日/1983年2月12日』
登場人物
宮部明彦 :理系大学物理学科の2年生、美術部
小森雅子 :理系大学化学科の3年生、美術部。京都出身、実家は和紙問屋
田中美佐子:外資系サラリーマンの妻。哲学科出身
加藤恵美 :明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、心理学科専攻
杉田真理子:明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、哲学専攻
森絵美 :文系大学心理学科の2年生
島津洋子 :新潟出身の弁護士
ヰタ・セクスアリス - 雅子 16(エピローグ)
奴隷商人とその時代 (続き)
奴隷商人とその時代 Ⅳ
●紀元前46、47年前後の出来事
●古代ローマの浴場
奴隷商人とその時代
奴隷商人とその時代 Ⅰ
奴隷商人とその時代 Ⅱ
●古代の鏡
奴隷商人とその時代 Ⅲ
●イスラムの一夫多妻制度
●奴隷制度
●奴隷制度・ハレムと一夫多妻制
●奴隷商人ムラーの商売
奴隷商人 Ⅰ
奴隷商人 Ⅱ
奴隷商人 Ⅲ
奴隷商人 Ⅳ
奴隷商人 Ⅴ
奴隷商人 Ⅵ
奴隷商人 Ⅶ
奴隷商人 Ⅷ
奴隷商人 Ⅸ
A piece of rum raisin - 単品集
シリーズ「A piece of rum raisin - 第1ユニバース」
第1話 メグミの覚醒1、1978年5月4日(火)、飯田橋
第2話 メグミの覚醒2、1978年5月5日(水)
第3話 メグミの覚醒3、1978年5月7日~1978年12月23日
第4話 洋子の不覚醒1、1978年12月24日、25日
第5話 絵美の覚醒1、1979年2月17日(土)
第6話 洋子の覚醒2、1979年6月13日(水)
第7話 スーパー・スターフィッシュ・プライム計画
第8話 第二ユニバース
第9話 絵美の殺害1、第2ユニバース
第10話 絵美の殺害2、第2ユニバース
第11話 絵美の殺害3、第2ユニバース
シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)-第4ユニバース
第一話 清美 Ⅰ、1978年2月24日(金)
第一話 清美 Ⅱ、"1978年2月24日(金)1978年2月27日(月)
第二話 メグミ Ⅰ、1978年5月4日(火)
第三話 メグミ Ⅱ、1978年10月25日(水)
第四話 メグミ Ⅲ、1978年10月27日(金)
第五話 真理子、1978年12月5日(火)
第六話 洋子 Ⅰ、1978年12月24日(土)
●クリスマスイブのホテル・バー
●女性弁護士
第七話 絵美 Ⅰ、1979年2月17日(土)
●森絵美の家
●御茶ノ水、明治大学
●明大の講堂
●山の上ホテル
第八話 絵美 Ⅱ、1979年2月21日(水)
第九話 絵美 Ⅲ、1979年2月22日(木)
第十話 絵美 Ⅳ、1979年3月19日(月)1979年3月25日(日)
第十一話 洋子 Ⅱ、1979年6月13日(水)
メグミちゃんの「ガンマ線バースト」の解説
マルチバース、記憶転移、陽電子、ガンマ線バースト
シリーズ「雨の日の美術館」
フランク・ロイドのブログ
フランク・ロイド、pixivホーム
シリーズ「アニータ少尉のオキナワ作戦」
シリーズ「エレーナ少佐のサドガシマ作戦」
A piece of rum raisin - 第3ユニバース
シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス-雅子編」
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弥呼と邪馬臺國、前史(BC19,000~BC.4C)
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