シリーズ「雨の日の美術館」(総集編4)NEW👈
シリーズ「雨の日の美術館」
雨の日の美術館(総集編4)NEW👈
第19話までは公開済み。
このシリーズに含まれていない台湾侵攻のエピソードは、
シリーズ「アニータ少尉のオキナワ作戦」でこれから書き足します。
雨の日の美術館(総集編4)
第17話
●石垣島貨物ターミナル、臨時駐屯地、石垣島侵攻日当日
●自衛隊石垣出張所、サキエのオフィス1
第18話
●自衛隊石垣出張所、サキエのオフィス2
●美香の戦略
第19話
●防衛省情報本部電波部、総理と
●統合幕僚監部長
●会議後、みんなと
第20話
●もがみ型護衛艦のFFM-2、くまの後部甲板、2022年6月
●尾崎と優子、東京行き新幹線、2022年8月
●尾崎と美香、優子と智子、神田のバー1、2022年8月
第21話
●戦闘、佐渡二見町から卜井の中継、2022年5月
●尾崎と美香、優子と智子、神田のバー2、2022年8月
「雨の日の美術館」第20話 あらすじ
後部甲板に遠藤実がいた。艦の最後部でチェーンの手すりにもたれてタバコを吸っている。あいつ、しばらく尾崎さんといたから、タバコを吸うようになったのね、と早紀江は思った。私も吸おうかしら?
ミノルの横に来て、サキエもチェーンの手すりにもたれた。意外とスクリュウ―音があまりしない。やはりステルス最新鋭護衛艦だけのことはある。十分話しができるレベルだ。
「ひどかったね、ミノル」とサキエ。
「ああ、まったくだ。政治家という不確定要素を甘く見すぎていた。あれがなければ、ぼくらのAIのシミュレーション通りにストーリーが進んで、これほどの死傷者は出なかったかもしれない。この政府はもうダメだな。年末まで持たないかもしれない。ネットじゃあ、政府非難で大炎上中だ。これほど日本国の首相がバカだとは思わなかったよ」とミノル。
「起こってしまったことは仕方がないでしょ?もう、政治の話は止めよう。紺野二佐は激怒しているけどね」
「だけどなあ、ぼくらの仲間も死んだ・・・」
「そう。悔しいわね。チクショー、なんでこんなことを始めなければいけなかったのよ!バカバカしい戦争!大っ嫌い!」
「まあ、ぼくらのAIと美香さんのハッキングで被害は少なくなったと思う。それがなぐさめだ」
「ミノル、あなた、タバコ、吸ってる!」
「ああ、尾崎さんがスパスパ吸うものだから、うつっちまったよ」
「私にも、タバコ、頂戴!」
「え?サキエ、吸うの?」
「ムシャクシャするのと、一応の終わりで安心しているので、タバコが欲しい」
ほら、と言ってミノルがメンソールをサキエに渡した。ライターを渡すが火がつかないので、ミノルのタバコの火先をサキエのに近づけて火をつけてやった。サキエはちょっとむせたが、タバコを深々と吸った。
「私さあ、CICでハッキング作業していて、みんな怒号してるし、ああ、もしかすると、これで、私、死んじゃうのかな?なんて思ったわ」
「やつらの攻撃の標準が正しいままだったら、確かにぼくらは死んでいたかもしれない」
「その時、私、思ったのよ。ミノル、あなたはレールガンの操作で前部甲板にいた。私は死ぬならあなたのそばで死にたいな、って思って、一瞬、チェアから腰が浮いたの」
「ああ、ぼくはサキエのいるCICなら少なくともまだここより安全だ、と思ったよ」
「ねえねえ、それで、私、CICでさ・・・」
「うん?」
「雨の日の美術館」第21話 あらすじ
卜井アナがカメラウーマンの佐々木の構えたビデオに向かって語りかけた。「視聴者のみなさま、こちら、先島諸島の石垣島から中継しております。現在、私たち放送クルーは、自衛隊と東ロシア共和国軍混成部隊の後衛から戦闘現場を俯瞰している状態です」卜井が軽くうなずくと、佐々木カメラウーマンが新石垣空港の戦闘現場をズームアップした。サーモバリック爆弾の爆発の光景は避けた。
「人民解放軍は、ホバークラフト12隻に乗船、陸戦隊約三千名の兵力と思われます。彼らは新石垣空港、石垣市内の離島フェリーターミナルの二手に分かれ、約千五百名ずつが空港、港湾、自衛隊ミサイル基地を奪取する目的と思われます」
みなさん、ご存知のように、与那国島は台湾本土から110キロの距離にあります。石垣島は与那国よりさらに150キロ離れ、宮古島は石垣の120キロ東に位置しています。もっとも東の宮古島とオキナワ本堂の距離は300キロ。
もしも、これら先島諸島が中国に奪取された場合、設置されるであろうレーダー、ミサイル、航空機により、日本本土の自衛隊、在日米軍の沖縄県、日本本土への防衛は壊滅的に弱体化します。また、中国の台湾侵攻が戦闘諸島からの台湾東岸への攻撃で非常に容易となります。我々は先島諸島をを奪われるわけにはいかないのです。
陸上自衛隊、水陸機動団、総員3千名は、与那国島、石垣島、宮古島に配置。ロシア軍、失礼、東ロシア共和国軍と連携し、島嶼防衛にあたっております。アメリカ軍はおりません。日米安全保障条約の共同防衛がまだ発令されてお入りません。
目と鼻の先の沖縄本島にいる海兵隊も動こうとはしません。我々は、我々と東ロシア共和国軍だけで、先島諸島を防衛しなければならないのです。政府は外交努力をしているのでしょうが、外交で解決できる段階なのでしょうか?
東ロシア共和国軍は、女性兵士も参加しております。彼女たちは、佐渡ヶ島でも北朝鮮の上陸作戦を阻止した人たちです。もちろん男性兵士も。
日本国が、自衛隊とともに、ロシア人の部隊で防衛されているというこの状況は、私は感に堪えないものです。しかも、ここ石垣島のロシア人兵士は女性がたくさんおります。この映像でもおわかりでしょう。彼女たちが私たちの警備をしてくれています。
彼女らは、佐渡ヶ島で日本人の方と結婚をした、或いは結婚を約束している状態なのです。
実に、信じがたいことであります。東ロシア共和国の意図が奈辺にあるか、計り知れませんが、戦時にこのようなことが起こった、起こっているというのは想像の埒外です。
つまり、ここのロシアの女性兵士たちは、ロシア人であり、かつ、夫・婚約者は日本人という奇妙な状況で、夫・婚約者の国土防衛に命をかけている、ということなのです。
かつて、日本のある政党の党首は、自衛隊を評して『暴力装置』と述べました。最近でも、自衛隊の活用法などという党是と反することを述べている政治家がおります。
彼ら政治家にとっての現実とは、紙に書いた文言、口に出すイデオロギーのスローガンなのでしょう。しかしながら、今、私の目前に展開している場面、これが、紙とか口での虚構ではない、本当の現実なのであります。
私的なことですが、私も愛とか平和を口にすれば、それで世界が変わると信じていたことがございました。つい最近までも、そう信じておりました。だが、愛とか平和を口にしても、相手が同じ土俵に乗ってくれなければ、世界は絶対に変わらない、変われないと今は信じております。
暴力に訴えた、現状の地政学的変更を、話合いとか政治上の駆け引きで押し留められないことは、ウクライナや台湾、韓国、いいえ世界各地で起こっていること、進行していること、そして、ここ石垣島もまたそうです、押し留められるはずはないのです。
「私は・・・このような光景を目前にして・・・目前にして・・・い、以上です。石垣島から卜井でした・・・」
雨の日の美術館(総集編1)
雨の日の美術館(総集編2)
雨の日の拾い者(総集編1)
雨の日の拾い者(総集編2)
雨の日の美術館(総集編3)
雨の日の美術館(総集編4)
登場人物
尾崎紀世彦:防衛省防衛装備庁航空装備研究所上級技師、ミノルの上司
比嘉美香 :尾崎の恋人。石垣島出身の建築設計事務所勤務
遠藤実 :尾崎の部下。防衛省防衛装備庁航空装備研究所技師
遠藤早紀江:遠藤実の婚約者、高校3年生
時任純子 :氷川神社の娘、長女
時任直子 :氷川神社の娘、次女
吉川公美子:小料理屋分銅屋の女将さん
後藤順子 :高校3年生で傷害事件で中退、分銅屋のアルバイト
節子 :高校2年生、分銅屋のアルバイト
田中美久 :北千住の不動産屋の娘、元ヤン。大学1年生
●中華人民共和国、人民解放軍
楊欣怡少校:ヤン・シンイー、人民解放軍海軍所属、在日中国大使館武官
金容洙少尉:キム・ヨンス、人民解放軍海軍所属、日露のスパイ
●中華民国
蔡英文 :中華民国総統
陳寶餘陸軍大将:中華民国国防部参謀本部参謀総長
●東ロシア共和国
エレーナ :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍少佐
アデルマン :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍大尉
アナスタシア :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍少尉
アニータ :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍少尉
スヴェトラーナ:東ロシア共和国、東部軍管区陸軍少尉
土屋と本間 :佐渡ヶ島島民、アニータとスヴェトラーナの夫
ソーニャ :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍准尉、
コリアン族(朝鮮族)のロシア人、
広瀬二尉の婚約者
カテリーナ :東ロシア共和国、東部軍管区陸軍伍長
●自衛隊南西諸島守備統合部隊
紺野美千留 :航空自衛隊二等空佐。自衛隊情報保全隊調査第2部、
内閣情報調査室出向、統合部隊指揮官
富田 :公安警察、沖縄県の親中国反日本活動の調査担当、
紺野とチームを組む
南禅久美子 :航空自衛隊二等空佐、防衛省防衛装備庁航空装備研究所
所属、尾崎・遠藤の同僚
羽生健太 :航空自衛隊二等空佐、防衛省防衛装備庁航空装備研究所
所属、尾崎・遠藤の同僚
鈴木三佐 :航空自衛隊二等空佐、エレーナ少佐の婚約者
卜井、藤田、佐々木:佐渡ヶ島作戦からのマスコミクルー
●自衛隊、先島諸島防衛水陸機動団
広瀬二尉 :東ロシア輸送船団に同乗する陸自水陸機動団の指揮官、
ソーニャ准尉の婚約者
畠山三佐 :鈴木の同期、水陸機動団指揮官、広瀬二尉の上司