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奴隷商人 Ⅸ、第53章 ●奴隷商人51、紀元前46年

奴隷商人 Ⅸ
第53章 ●奴隷商人51、紀元前46年

 ●砂漠行 5
【砂漠行12日目】 200+120キロ

 ホルスを放つと言って飛んでいってしまったムラーはその晩帰って来なかった。翌日、出発の午前4時の1時間前に急に空中から飛び降りてきた。荷物を持っている。

「どこに行ってたのよ?心配するじゃない?」
「ああ、スマン。ちょっとアレキサンドリアの王宮に行って、あるものを盗んできたんだ」
「王宮?盗み?どうやって?」
「数百メートルならテレポートできるっていったろ?二回テレポートするとダメージが酷いけどな。人類の人体は脆弱だぜ。体を原子レベルで解体して再構成するから無理もないが。それで、王宮の外壁まで飛んでいって、そこから王宮にテレポートした。クレオパトラの寝室に忍び行って、やっこさんの衣装、かつら、装身具と化粧品をちょろまかしてきたのさ」
「クレオパトラの衣装、かつらと化粧品?」
「そうだ。二着盗んできた。おい、アイリスとイシスを呼んでこい。小テントで着替えさせよう」

 アイリスとイシスが小テントに来た。「まあ!クレオパトラ女王の衣装だわ!」とイシスが驚いた。「どこからこんなものを!」

「まあ、いいから二人共着替えろ。クレオパトラがどんな化粧をして、どういう振る舞いでいたか思い出せ」とムラー。

 ムラーの持ってきた衣装は、クレオパトラの好みそうなオリエント風だ。下着も持ってきている。高価な中国製のシルクの小さな胸帯と腰布だ。肩をおおう飾りがついた金の刺繍の施されたカラー(首飾り)、シルクのケープ、ウィッグ、アームバンド、ブレスレット、腰のクビレを強調するベルト、そして、大胆にスリットが入ったドレスだ。白と黒のドレスで、アイリスは白をイシスは黒を選んだ。ウィッグの上に額に黄金のコブラの象嵌され金の鎖が下がったヘッドバンド。

 二人は「目周りのアイシャドウは上が青で下が緑だったかしら?」「もっと目が吊り上がって見えて、怖そうな感じだったわ」「口紅はベットリでしょ?」「胸は寄せて上げて胸元を前かがみになってわざと見せて男の気を引くのよね?いやらしい女!」「みてよ、このワンピースの横のスリット!腰まで割れてる。腰布が見えちゃうわ」「こんなにピッタリした衣装で、どうやって男根を隠していたんでしょうね?」などと言っている。

「できたわ!イシス、もっと偉そうに胸を反らすのよ」彼女たちはお互いをジッと見た。「クレオパトラ女王だわ!」

 クレオパトラの衣装を着て化粧をしカツラをかぶったアイリスとイシスは、ティーンの女の子に見えなかった。まさに、絶世の美女に見えた。クレオパトラは今年24才のはずだ。6才年下のアイリスと7才年下のイシスは、彼女たちの年齢よりもずっと年上に見えた。クレオパトラを見たことがないが、二人共双子のようで、クレオパトラが二人ってことなの?色気がハンパない。これじゃあ、ジュリアス・シーザーもアントニウスも引っかかるわけだ。絶対に女の子の友達はできないタイプだわ。

「この格好で大スフィンクスに突入しよう。騙せるか騙せないか、少なくとも人間の兵士どもは混乱するはずだ」
「ムラー、ヨダレが垂れてるわよ!人間の兵士どもじゃなくて、あなたがもう惑わされてるじゃない!相手はティーンの女の子なんですからね!あれ?私の体もティーンの女の子だったわね」
「おい、これはたまらないな。失敗した!三着持ってきて、お前もこれを着て、クレオパトラで4Pやれば良かったぜ!」
「このドスケベ!」
「おい、アイリス、イシス、外に出てみんなに見せてみよう。クレオパトラの演技をするんだぞ!みんながどういう反応をするか見てみたい」

「ムラー様、了解です。ちょっと打合せします」とイシスと相談し始めた。やっぱり、言葉はエジプト語かしら?ピティアスの手下どもはわからないから、フェニキア語も同時に話す?イシスがエジプト語で言って、私がフェニキア語で追いかけて言うのでどう?我ら民草たちよ、なんて出だしで。

 小テントを二人が出た。みんな集まってくる。エジプト人の中にはクレオパトラを見たことがある人間もいるのだろう。彼らがまず拝跪した。拝跪した人の近くの人たちもつられて拝跪していく。クレオパトラを知らないフェニキア人たちもあわてて拝跪した。群集心理なの?宗教って怖いわ。だけど、アイリス、イシスの自然なオーラはさすがに王朝の血を引くもの。いつもの可愛い二人の姿は微塵もない。

「我ら民草たちよ、わらわはクレオパトラ、真のクレオパトラ。今の女王は偽りの者。地上の小さなアトラスたちよ、兵士のなかの鏡よ、わらわはイシスの血を受け継ぐもの、イシス神に賭けて偽りの女王の歯をへし折り、滅ぼしてくれる。闘いの日は近い。民草たちよ、わらわに従え!」とエジプト語でイシスが、追唱してフェニキア語でアイリスが叫び、両手を突き出した。

「な?絵美、いつものアイリス、イシスを知っている俺達の仲間でもこうなる。スフィンクスの警護をしている王国の兵士にだって多少の効き目はあるだろう?」
「これが宗教の力なの?」
「カリスマの存在が大きい。クレオパトラ7世はあまり大衆に身を晒すことはない。アイリス、イシスは今まで身近にいた存在だが、彼女らがオーラを放ち、カリスマになったということだ。おまけに空を飛んだり、砂漠をうがって浴槽を作ったり。奇跡を見せた。何かを信じる人類は強いってわけさ。かと言って、半神半獣に勝てるわけじゃない。せいぜい、圧倒的な人数の王国の兵士相手に効果があるってことだ」

第53章 ●奴隷商人51、紀元前46年  に続く。


奴隷商人 Ⅰ

奴隷商人 Ⅱ

奴隷商人 Ⅲ

奴隷商人 Ⅳ

奴隷商人 Ⅴ

奴隷商人 Ⅵ

奴隷商人 Ⅶ

奴隷商人 Ⅷ

奴隷商人 Ⅸ

奴隷商人とその時代

奴隷商人とその時代 Ⅰ

奴隷商人とその時代 Ⅱ
 ●古代の鏡

奴隷商人とその時代 Ⅲ
 ●イスラムの一夫多妻制度
 ●奴隷制度
 ●奴隷制度・ハレムと一夫多妻制
 ●奴隷商人ムラーの商売

奴隷商人とその時代 Ⅳ
 ●紀元前46、47年前後の出来事
 ●古代ローマの浴場

奴隷商人とその時代 (続き)
奴隷商人とその時代 Ⅳ
 ●紀元前46、47年前後の出来事
 ●古代ローマの浴場


A piece of rum raisin - 単品集


ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編1

ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編2

ヰタ・セクスアリス(Ⅰ)雅子 総集編3

挿入話第7話 絵美と洋子、1983年1月15日/1983年2月12日


登場人物

宮部明彦 :理系大学物理学科の2年生、美術部
小森雅子 :理系大学化学科の3年生、美術部。京都出身、実家は和紙問屋
田中美佐子:外資系サラリーマンの妻。哲学科出身

加藤恵美 :明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、心理学科専攻
杉田真理子:明彦の大学の近くの文系学生、大学2年生、哲学専攻

森絵美  :文系大学心理学科の2年生
島津洋子 :新潟出身の弁護士


シリーズ「A piece of rum raisin - 第1ユニバース」

第1話 メグミの覚醒1、1978年5月4日(火)、飯田橋
第2話 メグミの覚醒2、1978年5月5日(水)
第3話 メグミの覚醒3、1978年5月7日~1978年12月23日
第4話 洋子の不覚醒1、1978年12月24日、25日
第5話 絵美の覚醒1、1979年2月17日(土)
第6話 洋子の覚醒2、1979年6月13日(水)
第7話 スーパー・スターフィッシュ・プライム計画
第8話 第二ユニバース
第9話 絵美の殺害1、第2ユニバース
第10話 絵美の殺害2、第2ユニバース
第11話 絵美の殺害3、第2ユニバース

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス(Ⅱ)-第4ユニバース

第一話 清美 Ⅰ、1978年2月24日(金)
第一話 清美 Ⅱ、"1978年2月24日(金)1978年2月27日(月)
第二話 メグミ Ⅰ、1978年5月4日(火)
第三話 メグミ Ⅱ、1978年10月25日(水)
第四話 メグミ Ⅲ、1978年10月27日(金)
第五話 真理子、1978年12月5日(火)
第六話 洋子 Ⅰ、1978年12月24日(土)

 ●クリスマスイブのホテル・バー
 ●女性弁護士
第七話 絵美 Ⅰ、1979年2月17日(土)
 ●森絵美の家
 ●御茶ノ水、明治大学
 ●明大の講堂
 ●山の上ホテル
第八話 絵美 Ⅱ、1979年2月21日(水)
第九話 絵美 Ⅲ、1979年2月22日(木)
第十話 絵美 Ⅳ、1979年3月19日(月)1979年3月25日(日)
第十一話 洋子 Ⅱ、1979年6月13日(水)

メグミちゃんの「ガンマ線バースト」の解説

マルチバース、記憶転移、陽電子、ガンマ線バースト


シリーズ「雨の日の美術館」


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シリーズ「アニータ少尉のオキナワ作戦」

シリーズ「エレーナ少佐のサドガシマ作戦」

A piece of rum raisin - 第3ユニバース

シリーズ「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス-雅子編」

フランク・ロイドの随筆 Essay、バックデータ

弥呼と邪馬臺國、前史(BC19,000~BC.4C)


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