【創作】note:Data 2021/01/31/1、天鈿女命1
天鈿女命(アメノウズメ)といえば、胸を出し、下半身をさらけ出し、神々を笑わせるお調子者というイメージだろう。有名な話が「天岩戸」である。天照大神(アマテラス)は、弟建速須佐之男命(スサノオ)の横暴を必死に庇い続けるが、とうとう庇いきれなくなってしまう。そのあまりの傍若無人な行動にショックを受け、天岩戸に隠れた天照大神。
太陽の神である天照大神が天岩戸に隠れたことで、高天原(天界)は闇に包まれ、いろんな災いが起こった。これに困った八百万の神は、会議を開く。その時に、知恵を司るタカミムスビの子オモイカネの発案で、天照大神が隠れる岩戸の前で、様々な儀式を行った。
何か楽しいことをして天照大神の興味を引くのが良いだろうということで、天鈿女命が胸をさらけ出し踊り出す。それを見た神様たちは大笑い。
「天鈿女命、天の香山の天の日影を手次(タスキ)にかけて、天の真折(マサキ)を鬘として、天の香山の小竹葉を手草に結ひて、天の石屋戸にウケ伏せ、蹈みとどろこし神懸りして、胸乳をかき出で、裳緒をホトにおし垂れき。ここに高天原動みて、八百万の神ども咲ひき」
つまり、「天鈿女命は天の香具山の天の日影(ひかげ)をタスキにかけて、天のツルマサキをかずらとして、天の香具山の笹の葉を手に持てるように束ねて、天の岩屋戸の前に、桶を伏せて乗り、踏み轟かして神懸かりしました。背を反り、オッパイをイヤンと出して、裳の紐が解け、オマ◯コまで押し下がって垂れました。低く腰を落として足を踏みとどろかし、力強くエロい動作で踊ります。それを見て、高天原中に鳴り響くほど、八百万の神々がみんな大笑いしました」ということ。
そんな外の様子が気になる天照大神。天鈿女命が「貴女様より尊い神が現れたので、みなで喜んでいるのです」と叫んだ。
すると、天照大神は「それは本当か?」と岩の隙間から顔を覗かせる。そこにさっと鏡を差し出し、天照大神の姿を映す。天照大神は、本当によく似た神様だと思い、もう少しよく見ようと岩の隙間をさらに開けた。その瞬間、力持ちの神様タヂカラオが、手を掴み、天照大神を岩戸の外に引き出し、そこに縄を張った。これが神社で見られる「注連縄(しめなわ)」である。
そして、天照大神を映した鏡は三種の神器の一つ「八咫鏡(やたのかがみ)」である。また、天鈿女命は、ニニギと共に天孫降臨する五柱(五人の神様)の一人でもある。その降臨の道中で道に迷っていた時に、高天原から中津国までを照らす神様が現れた。天照大神から「あなたは気後れしないから、あなたが彼の名前を聞きなさい」と言われ、名前を聞いたその神が、サルタヒコである。
天鈿女命は、そのサルタヒコの妻となり「猿女君」と呼ばれるようになった。伊勢の猿田彦神社の境内に、猿田彦神社の本殿と向かい合うように佐瑠女(さるめ)神社が建っており、天鈿女命はそこで芸能の神として信仰されている。
これでは何のことかよくわからないね?
普通、神々は、どう生まれたとか、誰が父とか誰が母、などと出自を細かく書くのに、天鈿女命(アメノウズメ)は出自が記述されていない。古事記でも日本書紀でもそうだ。突然、現れる。
さらに時代は下り、天孫降臨する五柱(五人の神様)の一人にも出演する。天岩戸だけの出番じゃない。天鈿女命は、そのサルタヒコの妻となった。サルタヒコは、天孫降臨の際に、天照大御神に遣わされた邇邇芸命(ににぎのみこと)を道案内した国津神である。
サルタヒコは、中世には、庚申信仰や道祖神と結びついた。天孫降臨の際に道案内をしたということから、道の神、旅人の神とされるようになり、道祖神と同一視された。そのため全国各地で塞の神・道祖神が「猿田彦神」として祀られている。この場合、妻とされる天鈿女命とともに祀られる。
アメノウズメの特長は、
① まず、美人でないということ。しかし、魅力がある。
② なりふりかまわない人である。世間体にとらわれぬ自由な動きをする。
③ その気分に人びとをさそいこんで一座をたのしくする人である。
④ 生命力にあふれている。それが他の人たちの活気をさそいだす。
⑤ 笑わせる。人のおとがいをとき、不安をしずめる。嘘をついてでも、安心させる。
⑥ わいせつを恐れない。性について抑制をこえるはたらきをする。
⑦ 外部の人が、その一座に入ってきても平気である。とくべつに警戒することということはない。開かれた心をもっている。
こんな軽そうな女神にしては、天照大神が天岩戸の岩の隙間から顔を覗かせた時に、三種の神器の一つ「八咫鏡(やたのかがみ)」などというとんでもないものを差し出し、天孫降臨する五柱(五人の神様)の一人になっている。
彼女は、いったい誰だったのだろう?
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