アルバム PLEASE PLEASE ME①
2枚目のシングルPLEASE PLEASE MEが1位になり、売れるうちに売っておこうという思惑の元、アルバムを急いで作る必要があった。
手っ取り早いのはやり慣れた曲をLive録音すること。
というわけでビートルズがレギュラーで出演しているライブハウス、CAVERN CLUBでの録音が検討され、プロデューサーのジョージマーティンはリヴァプールまで下見に行った。
しかしCAVERN CLUBは地下の倉庫を改装した環境で湿気がひどく、天井からは水が落ちてくる、客が入り演奏が始まると熱気でメガネが曇るほどであったという。
そんな環境にレコーディング機材を持ち込むことは不可能と判断し、ライブハウスでのLIVE録音はあきらめ、次の手としてスタジオでLIVE風に録音することに決定した。
本格的に忙しくなってきたビートルズに与えられた時間はたったの1日、585分の伝説が幕を開けることとなった。
アルバムの収録曲は以下のとおり。
"Title" Lead vocals Take originalorcover
"I Saw Her Standing There" McCartney ⑫ original
"Misery" Lennon with McCartney ⑪ original
"Anna (Go to Him)" Lennon ③ cover
"Chains" Harrison ④ cover
"Boys" Starr ① cover
"Ask Me Why" Lennon(既発売)original
"Please Please Me" Lennon with McCartney(既発売)original
"Love Me Do" McCartney with Lennon(既発売)original
"P.S. I Love You" McCartney(既発売)original
"Baby It's You" Lennon ③ cover
"Do You Want to Know a Secret" Harrison ⑧ original
"A Taste of Honey" McCartney ⑦ cover
"There's a Place" Lennon and McCartney ⑬ original
"Twist and Shout" Lennon ② cover
〇の数字は何回演奏したか。
延べ64テイクを録り、ボツとなった曲に13テイク費やしているので、585分の間に77テイクを録音したことになる。テイク数をオリジナルとカバー曲で分けて見てみると、オリジナルのテイク数が多くなっていて、いかにカバー曲は普段からやり慣れていたかがわかる。
当時のエンジニアの話によると、自分たちがランチを取りに出かける際、ビートルズは練習をするからランチにはいかないと言い、ランチから戻った時にも練習をしているのをみて「こんなに働くバンドをみたことがない」と言っている。
本人たちは晴れのレコーディングで楽しくてしょうがなかったのだろう。
このアルバムの冒頭の5曲は意図したのか、してないのか記録は残っていないが、5曲目までで4人のメンバー全員がリードボーカルを披露している。
当時のバンドの常識と言えばリードボーカルがひとりいて、その他バックバンドと言う形式が一般的だったため(例えば「バディホリー&クリケッツ」)4人全員が歌うバンドは珍しく、ファーストアルバムの冒頭でそれをアピールした形となっている。
これはジャニーズのグループの原型みたいなもので、1人が突出しない、4人それぞれに個性があり、そのうち誰かを好きになれるようにしている点はビートルズ+マネージャーのエプスタインの発明であろう!
このアルバムは発売後、イギリスのアルバムチャートの1位に30週間居座り続けた。
ファーストアルバムから常識破れの伝説を作り、それを量産しようとしているビートルズであった。