京都編:京極スタンド@河原町
僕が中学生、いや最近まで、わざわざ酒を呑む為に訪れるようになるまでは京都の観光といえば寺のイメージしかなく正直あまり面白くないと思っていた(大学の卒業旅行で全て徒歩で京都の寺を巡り歩いた荒行の苦い思い出がある)。
しかし、京都の食文化や歴史、建物、町並みなどに興味を持ちはじめてからはすっかり虜になってしまった。河原町周辺には様々な飲食店があり歩いていて楽しい、商店街、また高瀬川付近のいかにも京都らしい柳の木の下を侍が歩いていそうな町並み、京都人の台所と言われている錦市場、古そうな銭湯もあったりする。
錦市場を歩き、錦天満宮に差しかると新京極通、商店街に辿り着き、少し歩くと創業昭和2年のレトロな外観の大衆食堂、京極スタンドがある。
何とも表現しがたいレトロなスタンドの浮き彫り文字。京都らしいスッキリとした印象の麻暖簾にスタンドの赤文字。外のガラスウィンドウには食堂らしいサンプルのメニューがあるが、ここは全く普通の食堂ではない。
外観からして古き良き寂れた食堂ではなく、大正ロマンの何処か洋風なお洒落な雰囲気さえ漂う。
中に入ると改めて実感する。店内はほぼ昔のままというから驚きだが、古さをあまり感じない。むしろ新しい雰囲気さえ感じる。
店内右側には大理石のカウンターがあり、両側合わせて20名ぐらい座れるだろうか?客は向かい会わせに座り酒とつまみでのんびりやっている。
左側の丸い丸テーブルには定食を食べるグループが多い。
店内の腰壁はタイル張りで細長い鏡がインテリアにもなっている。キリンビール(ビールはキリンビール)や月桂冠(酒は特級、一級、二級と全て月桂冠)の昔のポスターが飾られ、ひときわ目立つ「大入」の額縁が店の歴史を物語っているようだ。
神棚もあり、昔から店を大事にしている証拠であると思う。
店内奥のカウンターでは先代ご主人がビールを注いだ場所らしく、銀座ライオンを思い出した。
天井の巨大扇風機はまるで零戦のプロペラのようだし、天井に吊るされた丸い照明はとても柔らかい灯りを灯す。
メニューは中華、洋食、和食と豊富で、昼間に腹ごしらえで訪れる若者もいれば、昼から酒を飲みにくる年配の方など、老若男女問わず店内に入ってくる。
黒短冊のメニュー、横文字の昔からのメニューと見ているだけで楽しい。
瓶ビールもいいがここは生ビールがうまい!
キリンビールをキリンビールのジョッキで頂く。グラスを大理石のテーブルに置いた時の音が堪らなく良い。
エプロン姿のお姉さん(あえてお姉さんにしておきましょう)に注文した。
接客はピカ一だ。
色々あって迷うが、お徳な生ビールセットがいいだろう。
中ジョッキは980円。
生ビールに、冷奴、枝豆、揚げ物二点(揚げ餃子にミンチカツ[関西ではメンチカツでなくミンチカツだ])、スパサラが付いて文句の付け所がない。
特にここの柔らかめのマヨネーズたっぷりのスパサラが病みつきだ。
思わず単品で頼めるかと伺うと即答でOK。多分単品で頼む客も少なくないのだろう。
ここの定食も品数いっぱいで以前訪れた時、隣のおじさんがスタンド定食を頼み、その豊富なおかずでビールを呑み、最後にご飯。安上がりだと教えてくれた。
野菜炒めやあんかけ揚げそばはとてつもなく大盛だ。
僕のお気に入りは、うざく、えんどう豆、スパサラ。
月桂冠の緑の一合ガラス瓶で頂くのも好き。
今回は生ビールを追加、体が欲しているのか?牛ステーキを注文。暫くステーキなんて食べてない。ここだから食べたい。
鰻とキュウリの酢の物・うざくに牛ステーキ。
これまたスパサラ付き。お腹いっぱいでスパサラ単品頼まなければよかった。。。
まぁこれも勉強だ。ポジティブに考えよう。
牛ステーキは街の食堂とは言えない一品だ。
ていうか、ここは全てが美味しい。断言して言おう!美味しい!
また、この店の空気感、居心地がいい。良き酒場の客との無言の一体感。昭和二年から庶民に愛されてきた店の雰囲気がそう感じさせるのだろう。安心感。
安心して呑めるのだ。
裏切らないのだ。
それは創業してから続いてるからだろう。
内装は全く異なるが十条の斎藤酒場のような変わらぬ安心感、歴史が作り出した空気感があるのだ。何度でも言おう。
前回写真も撮って頂いた優しい笑顔の三代目ご主人がレジ横で店を見守っている。
レトロなレジスターにレトロな伝票がまたいい。
スパサラもようやくなくなり店を後にした。
京都で昼から呑むならこの店は絶対だな。
今となってはスパサラが恋しい。。あ~恋しい。
■居酒屋ロマンティクス 2011年10月21日投稿のblogより