海へ
晴れた日の夕方、友人とドライブに行った。
なんとなく海に行こうと言ったが、目的地なんかどこでもよくて、どこにも着かなくたって別によかった。
ただじっくり会話をする時間と理由が欲しいだけだった。
一面に田んぼが広がる道を走ると、なににも遮られていない太陽が風景の主役になっていた。
日差しが強くて眼を開けていられない。
雨が多い地域だから晴れてるだけで良い日になる。
目的地だった海に着いて車を降りる。
波が打ち寄せるとともに潮の匂いがした。
季節は地平線の向こうから波が運んでくるなんて誰かが言ってたけど、遠くに島が見えるだけでそうは思えなかった。
季節の変わり目はそんなに大人びたものではなくて、風呂上がりが寒いか暑いかくらいの些細な出来事で決まるのだろう。
車、海、その後にいった呑み屋。1日話した全てが確実に自分の中にある気持ちで、嘘はなかった。
どんな些細なことでも言語化して吐き出すことで考えは整理される。
仲の良い友人全員が聞き手になってくれる訳ではないから、1人でもいるなら幸せだし、私も誰かにとってそんな存在になりたい。
2軒目にいったバーでは呑んだことのないお酒ばかり呑んだ。
私に初めての体験をさせてくれるのはいつだって友達だ。
今日一緒にいてくれた友人とは7年の付き合いになる。
遊ぶと出会った頃のようにおどけてみせる彼だが、こうしてお酒の力を借りて深い会話をすると、常に悩みながら戦ってできた温かい傷が見えた。
私にも傷はある。
長い間治らない嫌いな傷だったが、誰かを安心させられたり共感してもらえるための使い道があるならこのままの方がいい。
そう思えた夜だった。
スーパーカー - u
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