青天の霹靂
ご高覧頂きありがとうございます。
この記事は前回の続きになります。舞台は前回から進んで蒼空の騎士(以下BoS)のアディショナルカード追加後の環境です。
いきなりですがBoSで追加されたヴァンプのアディショナルカードを見てみましょう。まずはゴールドから。
こちらもこの弾から追加されたアクセラレート持ちです。進化時能力でAoEを有し、進化権が切れても腐ることなく自傷付きの2c3点除去札になるので使い勝手が良い。中型カードは後半に腐るという認識を塗り替えたカードです。
続いてレジェンドですね。こちらです
5コスト6/6のグッドスタッフなフォロワーです。何か能力を持っていますね。
ファンファーレ 相手のリーダーか相手のフォロワー1体に3ダメージ。自分のリーダーは、「次の自分のターン開始時に、PPを回復する値を-3する」を持つ。
絶望が、そこにはありました。
......?
例えば、5ターン目にこいつを使うと6ターン目に使えるppが3になるということ。初めは見間違いかと思いました。同じ5コスト6/6ならビーストドミネーターやマステマがいます。ファンファーレ持ちとはいえどたかが3点飛ばしたぐらいでそんな代償背負う必要あるか?相手のppを減らすんじゃないのか?と何度も文を見返しましたが見間違いではありません。
あぁ、ヴァンプは廃材を渡されたんだな...という絶望感。復讐強化でもなければ自傷強化でもない。ドラゴンはポセイドン、ネクロはグレモリーと、当時のランプドラゴンやミッドレンジネクロを順当に強化するパーツを貰っていました。
当時のリプ欄。散々な言われようです
アディショナルが追加され、暗澹たる気持ちとともに始まる新環境。
ローテーションではアディショナルで追加されたククルを採用した人形ネメシスが跳梁跋扈。隙のなかったデッキの隙がさらになくなります。アンリミテッドではグレモリーを採用したミッドレンジネクロが暴れ回りました。序盤から盤面有利を維持し続け、6グレモリー7ヘクターで相手を粉砕する様は、まさしくミッドレンジネクロの黄金期を象徴していました。
話が脱線してしまいましたね。
ベヒーモスと邪眼が追加されて一週間程は、プルソンの構築に変化はないかな...と思ってました。だってプルソンと自傷のシナジー無いし。ベヒーモスは雑魚にしか見えないし。
が、
ある日閃いてしまったのです。
天啓
...スタッツは優秀なんだから、プルソンから出しても遜色なくね?
...そういえばこいつ、復讐の縛りないな。
あ、こいつ5コスじゃん中盤の繋ぎに使えるかもしれん。
僕は前回の記事で、プルソンが抱える問題として「起動が遅い」ことともう一つ、「中盤の動きが極めて貧弱」ということに触れました。
そもそも何故中盤の動きが弱くなるのかというと、例えば2コストのアミュレット(フォロワー)を餌の中心に据えたとして、その餌からはコスト3以上のフォロワーが出てくることになります。デッキに中盤を固める3~4コストのフォロワーを採用したとしましょう。中盤の弱さは多少マシになってもプルソンを発動した時にそれらが出てきて決定力を欠く恐れが生じます。この時はまだアクセラレートが9の時ですから、発動する時は死ぬか死なないかの瀬戸際であることが多く、なんとしても一撃で相手を葬る必要があるためプルソンで出てきたところで大した仕事をしない中堅フォロワーは採用できなかったのです。
その考えもあり、当初はベヒーモスを採用しようなどとは思いもしませんでした(その前にデメリットの印象が強烈すぎて)。しかし、むしろこのカードは、もしかするとプルソンに不足していた中盤の弱さを補ってくれるのではないか?そう思いついたところから、ベヒーモスを採用したプルソンの構築の模索が始まります。
まず初めに、仮にこのカードを中盤の繋ぎに使えることができたら、「プルソンの発動時に少し余裕ができる」ということを念頭に置きます。ここでは、中堅フォロワーは中盤の繋ぎに寄与することを前提とします。
まず思ったのは、スタッツは優秀だな、ということでした。プルソンから出てきても遜色ありませんし(なんならプルソンと同じスタッツ)、5ターン目に盤面を除去されながら6/6(8/8)が対面の場に立てば相手が感じるプレッシャーは相当なものです。即ち、相手はその処理にリソースを吐くため本来顔が受けるはずの打点をベヒーモスが吸ってくれるはずだと考えたのです。
能力にも触れなくてはなりません。当時、シャドバにはファンファーレ能力を持つカードはクラス特性に縛られるという傾向がありました。例えばエルフなら「カードを〇枚以上プレイ」、ネクロならネクロマンスですね。ヴァンプも例外ではなく、復讐という特性に縛られがちでした。しかしベヒーモスというカードは、デメリットこそあれ、「復讐状態なら」という一文を持たなかったのです。これは、「相手に干渉できる能力の発動が容易である」ことを意味します。デメリットを差し置けば、ベヒーモスは5ターン目という比較的早いターンに相手の面を除去しつつ盤面の主導権を一時的にでも握れるパワーを持っていました。
問題はベヒーモスを出した次のターン、ppを3しか使えないデメリットにどう対処するか。3コス以下でなんかないかな...とカードリストを漁っているとこんなカードがありました。
天恵
ゴルゴーンの試練。なにやら3コストで毒蛇を2体出すとのこと。前のターンに相手はベヒーモスを、場合によっては進化権を使ってまで除去していますから相手の面は強さを維持できていないはずです。出した蛇で除去も可能ですし、またフォロワーが出ることにより自分の盤面が空く≒顔に打点が飛んでくるリスクが上がることを防げます。
さらにこのカード、おまけでメデューサ、エウリュアレー、ステンノの中からランダムに1体、手札に加えられるではありませんか。そしてそのコストは各4、4、7。そう、中堅フォロワーなんです。山札にフォロワーが入れられないなら、トークンとして手札に加えてしまえばいい。このカードは今から創り出されるデッキには出来すぎた、これ以上なくぴったりのパーツでした。
7ターン目からはppも全快しますから、ここで加えたフォロワーは全て使用可能です。またそれぞれの能力も、メドゥーサは進化を絡めればメドゥシアナの圧をかけることができ、エウリュアレーは必殺守護持ち、もし盤面にヴァンパイアフォロワーがいれば選択不可を付与します。ステンノは毒蛇を2体出し、場に毒蛇が出る度相手の場にランダムに2ダメージをばら撒きます。
共通するのは相手に圧をかけ続けられるということですね。
中堅フォロワーの重要性
ところで、なぜここまで盤面に拘る必要があるのか?ここまでフォロワーを欲した理由は、当時は今では考えられないほど序中盤での盤面の取り合いがそのまま試合の結果を左右していたからです。カードパワーがインフレした今でなら中盤で遅れをとっても後半で捲って〜などと簡単に言えますが、展開に対する回答が限られていた当時、一度強固な盤面を作られてしまうとそれをひっくり返すのは至難の業だったので、相手が盤面を固められないよう必死に有利トレードの応酬を繰り返すのが中盤戦というものでした。
除去スペルの大量採用という手段もありますが、ひたすら後手に回って場の処理に徹してもこちらが一方的に疲弊してリソースが切れて負けるか、処理が追いつかなくて負けるのが関の山なので、やはりできることならフォロワー同士の地上戦に勝利しにいく方が戦法として望ましかったのです。
また今でこそシステムフォロワーなんて顔を詰めるついでに簡単に除去できますが、当時は安易に無視するとあっさり取り返しのつかないことになることが多かったため、システムフォロワーは実質守護として相手の注意を盤面に向けさせるための有用な手段として機能していました(例:狂信の偶像)。だからこそ、中盤に出せるフォロワーの存在意義はとてつもなく大きかったのです。
勿論ゴルゴーンを打たなくてもヴィーラを出したり、隙ありと思えば漆黒の契約を置いてしまったりなど、3ppしか使えないといえど、3コスト以下に枚数が集中しているデッキの特性上、動けないということはほぼ無いためそこまで大きな問題にはなりません。ポジティブに、手札消費を少なくできたと捉えることもできますね。それもこれも、ベヒーモスによって得られた余裕があるからこそ言えるものです。
中盤に受けに回り続けることがなくなることは一方的に体力が削られることがなくなるということであり、プルソンを体力の余裕を持って発動することに繋がります。
アディショナル以前の構築だと、カツカツの体力でプルソンを発動したところで返しのターンにゴリ押されることが殆どだったのですが、こちらだと豊富に残っている体力を相手は詰めきれないので、プルソンを打たれた相手はリーサルを回避しようと盤面の処理に動かざるを得ません。つまりそれは、再び自分にターンが帰ってくるということ。生き残れる期待が生まれれば、別にアクセラのターンに一撃で相手を葬ることに拘る優先度は低くなります。
プレイしても良し。プルソンから出ても良し。デメリットもちゃんと補えるようになった。僕の中でベヒーモスに対する評価が180度変わりました。
ペナルティを受けるターンは終盤に向けての準備期間だと、そう捉えるようになってからはパズルのピースがどんどんはまっていきました。そして完成したのがこの構築。
当時散々な評価だったベヒーモスを採用したインパクトがあったのか、結構な反響がありました。また、これに興味を示してくれた方の一人が、この構築専用のアカウントを作り、ビギナーからマスター前まで行ったと聞いた時は感極まりました。
楽しいけど安定感がね...打てればほぼ勝ちだけどそこまでいけないのがね...と散々な言われようだったプルソン。その弱点を克服し、デッキを一つ上の次元に押し上げたのは、誰からも見放されていたハズレ枠のカードだったのです。
晴天の霹靂とはまさにこのことです。広く流布しているカードの評価など、ひとつの側面から見た要素でしかありません。一歩引いて物事を見つめ直すということの重要性をこの時強く実感しました。
何はともあれ、プルソンはアディショナルによって一つの着地点に到達することが出来ました。
これでBoS期も終わり、次の弾に舞台が移るのか...と思いきや、まだ終わってないんです!!!!
・能力調整
BoS期も終わりかけの9月27日、恒例の能力調整が発表されました。
やはりと言うべきか当然と言うべきか、それぞれのフォーマットで暴れ散らかしていたデッキの主要パーツは規制を受けることになります。ネメシスのパワーは頭一つ抜けていて、しかもローテ落ちするカードがないとなれば今後環境に影響を与え続けることは明白だったので結構重めな制限です。グレモリーに関してはなんでgoサイン出したんだってぐらいのスペック(当時)でしたから、制限されてもまあそうだろうなぐらいにしか思っていませんでした。ちなみにアンリミで暴れた罪により規制されたグレモリーですが、この後ローテでもやらかして結局ナーフされることになります。なんで刷ったんだよ
そして、上方修正されたカードもありました。その時の光景はよく覚えています。高校の授業が終わって帰路につく夕方、スマホを開くと何人かからメンションされています。あれ?タグにいいねした覚えないけどなぁ?と思いながらTwitterを開くとそこには
うおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
いやもうほんとに嬉しかったです。頬張っていた唐揚げ棒を喉につまらせながら喜びを噛み締めました。仲のいい人とはしゃぎまわりました。報われたぞ!!!と。
1コスト下がったことで具体的に何が変わるのかというと、単純に発動が一手早くなります。それだけでも大きいですがまだあります。
前回の記事で紹介した、貴き血牙を覚えていますでしょうか。10ターン目を迎えてしまったプルソンのアクセラ能力を使うためにはどうにかしてppを減らさなければなりませんでした。アクセラ9だった頃はその調整役を完全にこのカードに依存していたため、血牙はなくてはならない存在だったわけです。しかし8になるとどうでしょう。デッキに大量に採用されている2コストのカードが調整役として機能できるようになるではありませんか。更には8昏き9血牙プルソンが可能になったり...と、とにかく戦術の幅がさらにさらに広がりました。最高の強化をもらったところで、本当にBoS期は終わりです。
以上がBoS期プルソンの僕視点からの概要です。登場弾から怒涛の幕開けです。ここからプルソンの歴史が始まっていきます。
長い文になってしまいましたがお付き合いいただきありがとうございました。それではまた。