競馬予想と机上の空論 #1 物差し馬、”勝負付けが済んだ”
1 物差し馬
物差し馬という概念があります。
物差し馬という言葉を知らない人のためにまずは説明します。
A馬とB馬は初対戦です。その2頭が予想するレースに出走するので、どちらが強いのだろうと考える時に物差し馬という概念を用いる人がいます。
A馬もB馬も、別のM馬という共通の対戦済みの馬がいます。
A馬はM馬に先着して、B馬はM馬に先着出来ませんでした。
M馬を基準にすると、M馬に先着したA馬の方が、M馬に先着できなかったB馬よりも強いのではないかという考え方です。
M馬を基準にするので、M馬が物差しの役割をするという考え方です。
ジャンケンじゃあるまいし、そんな単純な理屈通りに競馬を考えること自体がどうかしてると私は思います。
でもそう思わない人も多いようです。物差し馬という言葉を使う人がかなり多いからです。だから馬券が当たらない人が多いのだと思います。
説明するのもバカらしいですが、物差し馬発言がなぜダメなのかを考えてみます。
(1)M馬が強い場合
強いM馬に先着したA馬は強いだろうと推定出来ます。これだけならば間違いだとは言えません。
強いM馬に先着できなかったB馬は、強い馬に負けただけなので弱いとは言い切れないはずです。その時はM馬の方が先着しただけで、B馬も強いかも知れないからです。
A馬もB馬も、どちらも強いという可能性が消えません。どちらも強いのであれば、A馬とB馬が対戦したらどちらが先着しても不思議ではありません。ですのでA馬の方がB馬よりも強いと考えるのは妥当ではありません。
推定する程度問題の話で、A馬がB馬よりも強いだろうということが、ある程度確からしいレベルには達しないということです。『可能性』と『蓋然性』みたいな話です。
(2)M馬が弱い場合
弱いM馬に先着したA馬は、弱い馬に勝っただけなので強いとは言い切れません。A馬も弱いけどもっと弱いM馬に勝っただけかも知れないからです。
弱いM馬に先着できなかったB馬は、弱い馬にさえ勝てなかったので弱いと推定するのは間違いではありません。
いずれにせよ、A馬もB馬もどちらも弱いという可能性が消えません。ですのでA馬の方がB馬よりも強いということにはなりません。
(3)M馬が強いか弱いかわからない場合
M馬が強くても弱くても(1)と(2)で説明済みなので、結論は同じです。
それ以前に、その理屈通りの結果にすらならないケースをたくさん見たはずです。その通りの結果にならないのなら、その理屈じゃダメだと考えるべきだと思います。
これは科学的思考という話なのかも知れません。理屈が正しくても実験してみたらその通りの結果にはならないのであれば、その考え方自体がこのケースでは適さないのいうことにしかならないということです。
でも物差し馬は理屈自体が間違っている気がします。比較する時に使ってはいけません。
(4)物差し馬として考えてもOKなケース。
物差し馬とか言うヤツはバカだみたいな論調でさんざん書きましたが、OKなケースがあります。物差しの使い方が違うだけです。(1)と(2)の説明に出ていたことの繰り返しです。
2歳戦や3歳戦の際に、よく出てくる考え方でもあります。戦績が浅いので、その馬が本当に強いのか、みたいなことを考える時には一応物差し馬的な考え方は有効です。”一応”と書いたのは、やはり目安にする程度にしておかねばならないという意味です。
①『強いM馬に先着したのだから、A馬も強いだろう』
これは理屈の上では間違っていませんが、A馬がかなり強いと思い込むきっかけになり兼ねませんので危険です。もっと言えば、A馬が凄く強いと思い込んでいる人が、それを強調したい時に使う屁理屈だと思った方がいいです。予想には役に立ちません。
②『強いM馬に負けただけで、Bも強いのではないか』
これは理屈の上でもOKですし、予想する際も有効だと思います。例えば、近走の成績の着順だけのイメージではさほど強くないように思えても、負けた相手が強い馬ばかりだったならそのイメージよりも強い可能性が高いからです。着差が僅差なら尚更です。
③『弱いM相手に負けたからB馬も弱いだろう』
これも理屈の上ではOKですが、弱い馬を基準に何か考えること自体が間違っている気がします。B馬を消したい人の屁理屈だと思った方がいいでしょう。予想には役に立ちません。
★役に立つと考え方としては上記②だけだと思います。
①と③は展開などに恵まれてそうなっただけだとか、何しろ色々考えて行くとやはり物差し馬的な考え方はダメだろうという話にしかなりません。
2 「勝負付けが済んだ」???
「勝負付けが済んでます」みたいな発言をする人がいます。これも物差し馬に似た概念なのかも知れません。
これも競馬初心者の皆さんのためにまずは説明します。
予想するレースに出走しているA馬とB馬のどちらが強いのかを比較する時に用いられる言葉です。
A馬とB馬が、過去に何度も対戦していて全てA馬が先着しているとか、1度しか対戦していなくてもA馬がB馬の大差で先着したとか、そういうケースです。
『A馬とB馬はすでに勝負付けが済んだから、今回もA馬がB馬に負けることはないだろう』、という理屈です。
そうならなかったレースをたくさん見てきたはずのベテランほどこういうことを言います。めちゃくちゃ強い馬でも全勝だった馬は数少ないですし、何度か対戦した馬のうち逆転した馬もたくさんいます。
いずれにせよ、その勝負付け的なことは単なる理屈です。理屈自体はどこが間違っているということでもないのですが、競馬なので色んな条件で好走したり凡走したりするのですから、こんな理屈を持ち出す時点でダメだと思います。
こういう理屈を真顔でいうベテランが本当に多いです。他の理由でA馬を消す時に、勝負付けが済んだB馬も自動的に消したりするのです。B馬を消すならば、少なくともB馬も個別に検討してから消すべきです。
書くのもバカらしいレベルの話です。
3 私の考え方
A馬とB馬のどちらが強いだろうか、という発想そのものが間違っていると思います。それは数年後に両馬の成績を振り返ればわかることです。
もちろん、今予想しているレースですから、両馬を比較するにせよ、どちらが先着しそうかという考え方をすべきです。
レースの後になれば、先着した馬の方が強かったということにはなるのですが、予想の段階では、どちらも同じくらい強いということを前提として、さまざまな条件を加味して今回はどちらが先着するだろうかと考えるべきだと思います。
予想するレースは1回勝負だからです。何度も走って総合点を競うワケではないからです。
強い馬が勝つのか勝った馬が強いのかみたいな話になりますが、それも言葉遊びなので深く考えることはありません。
少なくとも物差し馬的な考え方や、勝負付けが済んだなどの発言は、やはり根本的に間違っていると思います。
4 机上の空論
他にも競馬の予想において役に立たない机上の空論がたくさんあるので、思いついたら書いていきたいと思います。
机上の空論の代表格の風についてはこちら。
個人的には風が一番バカらしいと思います。
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