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神様、これ以上、母を苦しめないでくださいね。


母(80才)はこの2年、何度も入退院を繰り返し、「死」を覚悟しなければならないと言われたのは2回目となる。

不自由な体で週に3回の透析に通いながら独り暮らしをしている。キーパーソンは妹であるが、国の制度を活用させてもらい通院の送り迎えや宅配弁当、介護など利用している。

今回は、透析中に心筋梗塞を起こし大きな病院に運ばれた。心臓の動きを助ける機械を外からつけることに成功したが、妹と私は不安を胸に、8時間待合で待つこととなった。血管が石化しているため、先がダイヤモンドになったドリルで血管を傷つけないように開通させる処置が施された。

3日後、その機械を抜去したことで再び危篤状態になり呼び出しがかかった。通常は長くは入れておけないその機械を再度插入するらしい、、前回は成功したが今回成功するとは限らず、命の危険があると説明を受け、妹と私はまたもや不安な時を待合で過ごした。

2時間ほどかかり成功したが、、喜んだのもつかの間、次は心臓の僧帽弁が十分に機能しておらず、手術が必要であると説明される。3年前から行っている新しい技術で手術ができない状態の人に残された最後の治療らしい。心臓に穴をあけ針金のようなもので弁にクリップをつけて流れ出す血液を止めるものだと説明を受けた。

命を繋ぐためには治療してもらうしかない。全身麻酔で手術を受ける事になった。【頑張ってね】と手術室に運ばれる母に声をかけ、頷く母を見送った。医師の「成功しました」の言葉に胸を撫で下ろした。

次から次に問題が起こり、3人の医師が揃って説明が行われた。心臓の動きを助ける機械を長く入れていたために腸に血液がうまく運ばれず、腸が腐ったらしい、手術は体力的にも難しい!成功しても透析をしている母には水分が人工こう門から流れ出るため、脱水になりコントロールが極めて難しいというのだ。

そして、手術をしない場合、数日の命だと宣告された。どちらにしても絶望的であると言われ、妹と私は頭の中が真っ白になった。手術が成功して喜んだ昨日が遠い昔のように感じた。

あまりにも早すぎる突然の母との別れに、、泣いている妹を見ると私は涙を飲み込むしかなかった。あと2.3日で母が死んでしまう。独身の妹には母がすべてである。いつの入院の時も全力でせっせと世話をしていた。家で独り暮らしができたのも妹の支えがあってのこと。私は妹を支えなくてはと思った。

あまりにも急なことで頭がまわらないが、、、

泣いてばかりもおれず、悲しみをこらえつつ、葬儀の段取りを整える。コロナ感染症の影響で面会制限の中、特別に自由に面会が許され親族も駆けつけることができ、別れを惜しみながらの面会になった。母も返事をしたり短い言葉を話せたから、余計に悲しくなった。妹と私は時間の許す限り面会をさせてもらった。毎回、これが最後かもしれないと思いながら。。。

その日から6日が過ぎた頃、母はまだ、頑張ってる。

医師から血液検査の数値に好転が見られているのでもう一度、腸の検査をしたいと連絡があった。気がつけば2.3日と宣告を受けていたにも関わらず、1週間が過ぎようとしていた。

検査の結果【腸は腐っていなかった】と診断。

母が苦しまないように高度な延命治療は望まず、モルヒネ治療を開始していたが、明日から延命ではなく、治療に切り替えると説明される。

面会も通常(コロナ対策)に戻りで、会えなくなるらしい。

まだまだ予断は許さない状態に変わりはないが、気が抜けたようで状況が呑み込めないでいる。

この10日間は夢だったのではないだろうか。「腸が腐ってます」と言われたことは誤診だったのか?奇跡が起こったのか?

どちらにしても、母が生きていることに変わりなく、「医師や看護師さんによくしてもらった」と母は言っているし、妹も私もそこは感謝しかない。これからの治療は母にとっては死ぬより辛いものになるかもしれないという不安は拭いきれない。

できればもう一度、家に帰ってきて欲しいと願い、これ以上苦しめないでと祈るしかできないけれど、、、

お母さん、あと少し頑張ってね。
神様、これ以上、母を苦しめないでくださいね。




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