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《後編》大河少女漫画『風光る』について
こんにちは!せのおです。
前々回の記事から、いよいよクライマックス目前!渡辺多恵子先生の『風光る』の作品についてお伝えしています。
【風光る 総司&セイ 恋セレクション 本日発売!】
— 風光る かわら版 (@kaze_kawara) March 26, 2020
渡辺多恵子先生自らが厳選した、総司&セイの恋エピソードが満載の一冊❤️ コミックス2.6冊分のボリュームです…!
2人の恋の軌跡をたっぷりお楽しみください🌸 https://t.co/ut8I0xKTjO pic.twitter.com/fvsPRS4hZf
《前編》では、『風光る』の概要と作者の渡辺先生についてを、
《中編》では、『風光る』が少女漫画の”歴史もの”というジャンルにどのような影響を与えたのかを書きました。
《中編》から大分時間が経ってしまったのですが、《後編》では、より作品の中身に触れながら魅力をお伝えします。
実は、公式Twitterで以下のような企画も先日まで行っておりました。
【風光る 沖田総司ポスター
— 風光る かわら版 (@kaze_kawara) March 3, 2020
プレゼントキャンペーン開催!】
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参加方法は画像をご確認ください。皆様の熱い想いをお待ちしております!
【開催期間 3/22(日)23:59まで】#風光るプレゼン大会 pic.twitter.com/oSSJeeQkwF
作品の魅力について語るなんてとっても今更は話なのですが、私の思う『風光る』作品の良さを、もう少しだけお話できたらなと思います。
クライマックス目前とは?
《前編》からずっと口にしている、『風光る』がクライマックス目前とはどういうことなのでしょうか。
23年にも及ぶ長期連載ですが、まだこの作品は連載を終了していません!
つまり、リアルタイムで最終回を迎えるのに、まだまだ間に合うということです!!
2020年2月に発売された最新44巻の収録作について、おさらいしてみましょう。
月刊flowers1月号(2019年11月)・・・253話掲載
↓
単行本最新44巻(2020年2月)・・・~253話まで収録
↓
月刊flowers7月号(2020年5月)・・・最終254話掲載予定
つまり、5月末までに既刊を全て読み終え、28日ごろ発売の月刊flowers本誌を読めれば、リアルタイムで最終話を迎えられるということです!
このご時世の中、いつもより漫画を読む時間が増えた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
《前編》にも書きましたが、『風光る』のような少女漫画は、今の漫画業界において非常に稀な作品です。
是非、みなさんで歴史的最終話の瞬間を迎えましょう!!(笑)
『風光る』で描かれている時代
『風光る』は、ジャンルは歴史ものにあたります。新選組の前身・壬生浪士組が江戸を出発した1863年から、最新44巻では鳥羽伏見の戦いが勃発する1868年までの5年間を、23年もの連載で描いています。
そこで、本作で描かれている年代と主な歴史的出来事をまとめてみました!
※あくまでも参考程度に見てください…。誤っている可能性もあります。
1863年・・・1~5巻
八月十八日の政変、岩城升屋事件、他
1864年・・・6~11巻
池田屋事件、禁門の変、伊藤甲子太郎入隊、他
1865年・・・12~20巻
山南敬介脱走、西本願寺へ引っ越し、他
1866年・・・21~30巻
坂本龍馬登場、徳川慶喜即位、三条制札事件、他
1867年・・・31~37巻
御陵衛士結成、 油小路事件、天満屋事件、他
1868年・・・38~44巻
鳥羽伏見の戦い、沖田総司千駄ヶ谷へ移る、
近藤勇投降、他
『風光る』は架空の人物・神谷清三郎を交えながら、史実通りに物語が進んでいきます。
なので、登場人物に興味を持って、新選組などの歴史を調べたらそこでもうネタバレになるのが辛いところではあるのですが(笑)、
渡辺先生も、最新の歴史考察や独自の考えを取り入れながら、主人公の沖田総司と神谷清三郎をはじめとする、新選組の群像劇を描いています。
物語の面白さ
《中編》でもお伝えした通り、90年代までの少女漫画の歴史ものは、少年・青年漫画と違い、架空人物の突出した設定などにこだわった、作品全体としてフィクション性の強いものしか人気が出ないと考えられていました。
その中で、『風光る』は架空の人物を主人公に置きながらも、史実を順々に追っていくという、これまでの少女漫画の歴史ものとは全く違った物語形式で、多くの支持を得ました。
なぜ、本筋はノンフィクションを描きながらも、少女漫画の中で人気を博し、少女・少年漫画の垣根を超え「新選組まんがの決定版」となったのか、私なりの考えを述べていきたいと思います!
ーーとにかくキャラクターが魅力的!
キャラが魅力的なのは、漫画の基本なのかもしれませんが(汗)、読めば読むほど読者は沖田総司の人間性に惹かれていきます。
『風光る』における、沖田総司はとにかくおちゃめさんで愛されキャラです。(笑)
1枚目、総司の手がるみこポーズになっているのが可愛らしいです。(笑)
甘いものも大好き。(笑)
そして、兄のように慕っている土方と近藤先生が大~好きなんです。(笑)
しかし、天才剣士、やるときはとことん斬ります。
可愛らしい一面を持ちつつも、自分の信じるものには厳しく真っ直ぐなその「誠」の姿から、
読者はたくさんのものを受け取ることができます。
ーー新選組という男社会
皆さんもご存じの通り、新選組には「局中法度」という、死の掟ともいわれる厳しい規則がありました。
一、士道に背くまじき事
一、局を脱するを許さず
一、勝手に金策致すべからず
一、勝手に訴訟を扱うべからず
一、私の闘争を許さず
上の条を相背き候者切腹申しべく候也
https://hitopedia.net/新選組/#1
もちろん、『風光る』の作中でもこの掟は厳守されております。
この掟に背こうものであれば、沖田総司も容赦なく、女の子である清三郎を見放します。
しかし、そこから生まれる「武士道」「誠」の物語は、とても情熱的なものであり、そして時に切なく、読者の我々は惹きつけられることは間違いないでしょう。
また、新選組の幹部や組長は、試衛館の仲間たち、つまり、もっと砕けた言い方をすれば、幼馴染や長年の付き合いのある友人で構成されいます。
近藤勇に対する忠誠心は、この試衛館時代があったからこそ芽生えたものとも言えるでしょう。
そして、そこから師弟関係があるのも当然であり、その人物関係が物語に及ぼす影響も大変読みどころがあります。
ーー結末が分かっているからこそ生まれる感情
皆さん、”沖田総司”の名を聞いて、何を想像しますか…?
日本人である我々読者は、これまで数々メディア化された新選組の歴史を、ある意味常識として知ってしまっているんです。
そう、ええ…
新選組の沖田総司は、肺結核により若くして死ぬんです。
もちろん、これは他の人物についても同様のことが言えます。
そして、前述のとおり、『風光る』は史実通りに事が進んでいきます。
つまり、1巻の時点で、主人公である沖田総司は、5年後に死ぬという結末が確定した状態で物語が進んでいくのです。
これはもう、日本人の常識としての歴史なので、ネタバレでもなんでもないのです…。
沖田総司は前述のとおり、大変魅力的なキャラクターです。
そして、忠誠を誓っている土方・近藤との関係はもちろん、神谷清三郎との物語は、巻数を重ねるごとに、とてもとても愛おしく、時に儚いものになっていきます。
(ここがさすが渡辺先生、新選組という男社会の群像劇を描きつつも、少女漫画としてもまとまっているポイントだと思います!)
また、最新の歴史考察が取り入れられていることから、いつ結核の症状がでるのか、
出たら出たで、彼は今後どうなるのか、
読者としてはもう感情が追い付かないほどハラハラしてしまうのです。(笑)
これこそが、私は本作の最大の面白さではないかと考えます。
結末が分かっているからこそ、今ある物語から、100も200もの受け取り方ができます。
しかし、結末が分かっていても、分からないものがあります。
それは、沖田総司がどのような最期を遂げるのか。
…それについては、私はまだ分かっていないと考えています。
是非、ここについては5月発売の本誌を皆さんで楽しみにして待ちましょう!!!
タイトルの由来 「風光る」の意味は?
「風光る」とは、元々は江戸時代頃に誕生した春の季語です。
春風がきらきらと光り輝くように感じられることをいう。陽光の踊るような明るさに、風にゆらぐ景色もまばゆい。春の到来のよろこびや希望を、吹く風に託した言葉。
http://kigosai.sub.jp/kigo500a/88.html
また、春の始めは「春雨」も多いです。
雨がやみ、草木についた雫が、春の陽の光を浴びながら風に揺られる様子が、きらきらと光って見えたことを表しているといわれています。
厳しい冬を超えて訪れた季節。暖かい春の風に、希望と期待がこめられた言葉です。
元々、春の風を表す代表的な季語として、おだやかでうららかな気分を表す「春風」や、春の到来を告げる「東風」がありました。
「風光る」は、以上のような季語とは違い、春の訪れを視覚化した季語です。
風を視覚化するなんて…なんてすばらしい日本的な感覚なのでしょう。
作者がタイトルをつけた経緯は《前編》にも書きましたが、この季語の意味にも大変惹かれてつけたとおっしゃっていました。
私は、この季語の意味をぜひ44巻、そして最終話を読むまで覚えていてほしいです!
作中では、「風」は非常に重要なキーワードになっています。
また、舞台は波乱の幕末。
「厳しい冬」=「動乱の時代」ととらえ、「春」=「新選組や主人公たちが選ぶ未来」は何なのかを、是非本作を読んで見つけていただきたいです。
表紙にも注目!
タイトル名は春の季語と述べましたが、それに合わせて表紙に描かれている季節にも注目していただきたいです!
表紙は、春夏秋冬をテーマに四巡しています。
それぞれの巡で、花や景色などの副テーマを持って、季節を描いています。
左から右へ、春・夏・秋・冬と移り変わっています。
読者から人気があると言われている遠景のシリーズ。
とっても可愛らしいドアップシリーズ。
また、物語と合わせて、主人公二人のお互いの存在意義の変化を、表紙の立ち位置に表した副テーマのものもあり、本編と合わせて2倍楽しめるのもポイントです。
読むとしたら紙書籍?電子書籍?
『風光る』は、紙書籍または電子書籍で読むことができます。
そして、紙書籍は、新書版(単行本)と文庫版があります。
文庫版は現在12巻まででており、(確か)新書版の22巻までが収録されています。
文庫版の表紙は書下ろしだそうです。
私は新書版と電子版で読みました!
いずれも、本編の差分は無いので、個人のお好みに合わせてもらえたらいいと思います。
しかし、個人的にはやはり新書版をおすすめします!
理由は、電子書籍(おそらく文庫版も)では、残念ながらカバーのそでにある「作者からのメッセージ」等が掲載されていません。
そで部分の「作者からのメッセージ」は、前述した表紙にどのような副テーマがあるのかや、本編をどのような想いで書いたのかなどについてが書かれています。
私は、ここを読んでより本編を楽しめたので、「作者からのメッセージ」も読みたい!とお考えの方は、是非紙書籍で楽しんでみてください!
また、『風光る』は、紙書籍ならではの、帯も中々見ものであると考えています。
様々な芸能人から帯コメントをいただいており、
過去にはあのやなせたかし先生からも…!!
コレクター精神のある方は、帯も楽しむのもありかもしれません。
最後に
最終章の後半、信じられないほど長い記事になってしまいましたが、
『風光る』の魅力が少しでも伝わっていただけたら、嬉しいです~!