20歳、毎日走ることでなんとか自我を保っている
今日も小雨が降るなかを走った。これで、14日間、1日も欠かさずに走ったことになる。最初のうちは「毎日走ってエライな自分」とのんきに思っていたけど、違うんだ。きっと僕は、自分の存在が消えてしまわないように走っているんだ。
走り始めた理由は特になかった。気づいたら毎日走るようになっていて、それはサボることなく続いている。あれだけ走ることが嫌いだったのに、部活の練習で一番嫌いだったのは長距離走だったのに。
大学は4月からずっとオンライン授業だ。自分の学部は実験とかもないから、対面授業は全くなく、キャンパスには1年近く足を踏み入れてない。今でも会う友達といえばバイトが同じ友達ぐらいだし、もし街の中でたまたま同級生に会っても、すぐに気づいて声をかけられるか怪しい。顔に気付けるかということもそうだが、気安く声をかけるにはあまりにも会わない期間が長すぎる。
どこか遠くに出かけることもできない。登山とかが好きなのだが、毎年仲間と行っているはずの遠征も、大学のアホみたいに長い夏休みに、海外に出かけることもできない。留学計画も全て白紙だし、1年以上実家にも帰れていない。
これが一番つらい。正直、授業をオンラインでやるのはいいんだよ。全然いい。移動時間がないからむしろ楽なくらいだ。だけど、どこにも行けないっていうのがきつすぎるんだよ。
大学生活って、色んな人と会って、色んなところに行って、見たこともないものを見て、知らない世界を見て、色んな価値観に触れて、そういうことが大切なんじゃないの。このままじゃ薄っぺらい感性のまま4年間が過ぎちまいそうだよ。
誰のせいでもないっていうのはよくわかってる。みんなで力を合わせてこの大変な時期を乗り越えなきゃいけないのはわかってる。でも、「若者が遊んでるから」とか言われるたびにキュッとなるんだ。わかってるよそんなの、家にいるのが一番いいって、誰とも合わないのが一番いいって。だけどさ、そろそろ限界が近いんだろうな。だから僕は走るようになったんだ、きっと。
毎日何か一つは成し遂げたという感覚、サボらずに今日も走ったという事実。そうでもしないときっとおかしくなってしまう。走ることは僕の存在をつなぐ命綱なんだ。
いつ普通の生活に戻れるんだろうな。