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ストッキング相撲

このご時世、苦労している飲食店は数多く、僕の友人が働いているところも例外ではない。テイクアウトやデリバリー等で工夫を凝らして何とか続けてくれているので、利用するなりして微力ながら何とか自分も力になりたいと思っている。

下北沢CREAMという女性3名で切り盛りしている、ライブハウス兼バー的な所があるのだが、つい先日行われたインスタライブが他の飲食店とは少し異彩を放っていた。

「投げ酒」

投げ銭ならぬ投げ酒。PayPayやLINE Payなどの送金システムを利用して、インスタライブに出演してる従業員に対して酒を奢れるというシステムという。

投げ銭ライブなら、アーティストがパフォーマンスを披露してそれに対する評価や寄付の意味も込めてお金を送るが、投げ酒はただ「この時代従業員も大変でしょう。いつもありがとう。酒でも飲みなよ。」的な考えで、酒を奢り、ただ店員が酔っ払っていく様を見るのが対価のようなものなのだろう。完全に身内受けだけの配信イベントではあるが、外に出れずにこういうパーティー感ある事は久しぶりだったので、意外と財布の紐は緩むものだ。

インスタライブ中にお酒のメニューが表示された。焼酎、カクテル、シャンパンやおつまみ等も掲載されていた。ただ自分ではなく、あくまで店員が飲み食べる。

そのメニューの中には変わったものも入っていたが特に異彩を放っていたのが、

「ストッキング相撲 ¥3000」

バラエティ番組でよく見る、ストッキングを顔に被り、お互い離れあって引っ張り合い、相手のストッキングが顔から外れたら、勝負ありのあのゲーム。

誰が頼むのだろうと思ったが、インスタライブ開始20分くらいで注文する猛者が現れた。

あまりの早さに店員さんも困っていたが、オーダーが入ったら仕方ない。

店員さん同士でジャンケンを行い、試合はプロデューサー対店長という事になった。

まず店長がストッキングを被る。その人は丸顔で、ストッキングを被っても、つるんとした卵みたいで意外と馴染んでいた。

次にプロデューサーがストッキングを被る。被る前に一言「畜生……」と呟いてたのは、なかなかの覚悟を感じたのを覚えている。

ストッキング相撲というのは引っ張りあって、その時の顔が面白おかしくなるのが目的であり、楽しみの一つ。

しかしプロデューサーはすでに顔が吊り上ったような表情となり、試合を前にすでに顔が完成してしまっていた。

さて、試合はというと、店長が最初から攻勢をかけ、ほぼ秒殺という形で店長の勝利。プロデューサーはすでに完成されていたので、あまり変化なかったと記憶してるが、店長の方はこの時の写真が流出したらお嫁に行けないくらいの出来栄えになっていた。(プロデューサーは試合前からお嫁に行けない出来栄えだった。)仮に例えるなら、銀魂のよろずやの3人が理髪店で働いた回の、徳川茂茂といったところだろうか。これ以上は言わないことにしよう。

女性芸人さながらのファイトに心の中で拍手したと同時に、ああ落ち着いたらもっとお金を落としに行かないとなーと思わせてくれた、ナイスファイトだった。

その後2時間半ほどインスタライブを行なっていたが、コメントを読みながら3人がただ酔っ払っていく様を見つつ、楽しく過ごす良い飲み会だったなと思う。

また定期的にライブ配信するというが、彼女らの名誉のためにもストッキング相撲は伝説的な存在にしておいてもらい、この状況が出来るだけ早く収束し、配信ではなく、パーティーでストッキング相撲を見れる日を祈るばかりである。そして、あの時ストッキング相撲にお金を落とした寺本くんに心からお礼申し上げたい。




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