赤いきつねと緑のたぬきとアナログ記録とデジタル保存(もはや懐かしのエロをただ語るだけになっていないか)10

初出 2021年3月15日 Facebook

上原亜衣氏が引退を表明したのは、その当時年に1回イベントとしてかなり大々的に行われていた「Japan Adult Expo」の会場での、Japan AV Award表彰式の最中のことだった。

その翌年だったか、同じJapan AV Awardの表彰式のステージ上で、SODの白石茉莉奈氏が受賞スピーチをなさっていてその内容がやはりこの業界では話題となった。

白石氏は、「これだけの熱量を込めてみんなで作った作品なので、ちゃんと正式に購入してご覧になってください」という趣旨のことをこの晴れの舞台であえて表明なさったのである。

桃太郎映像出版というAV会社があり、そこで女流監督として知られた存在の鈴木リズ氏と個人的に話をしたことがある。

リズ氏曰く、いまは本当にAVが売れないのだそうだ。

なので、企画として、SODが作ったマジックミラー号に対抗して(?)、ヤリマンワゴンという車を走らせ、女流監督である自分と女優とで普通に町中を流し、出会った男性とそのワゴン車の後部座席で行為に至るというものだ。シリーズとしては予想を上回る売上があったのだという。

その後、アメリカで人気のあるメロディ・マーク氏の日本での独占販売権を獲得し、立て続けにヒットを飛ばすことができたのだが、しかしそれでも「売れない」状況には変わりがないのだという。

アイデアポケットという会社に所属している女優の堀内未華子氏が、自分の作品が無断アップロードされていないかを確認するためにいわゆる無料サイトのかなり奥深い部分までチェックを入れているとTwitterで話されたことがあったのだが、「そこまでしてでも無料で見たいという情熱を違う方向に向けてほしい、たかだか数千円なのだから体を張って作品を作っているのでちゃんと払って見てほしい」という旨の発言をなさっている。

逮捕者まで出したファイル共有ソフトのWinnyがまだ世の中に普通にあった頃、その手のアダルトも扱っているCD-ROM付きのコンピュータ雑誌に、いまWinnyで手に入る激レアファイル一覧表(ハッシュ付き)などという、今では考えられない記事が普通に載っていた。
それより数年前、私が最初にMS-DOS配下で動作するPCを購入した際、ワープロソフトとしての「一太郎ダッシュ」は職場の上司がフロッピーを貸してくれてそれをコピーして使っていた。

フリーウェアの文化は当時からあったとは言え、その頃は「ソフトやコンテンツは無料で貰うもの」という認識があったのは否定できない。現在のハードディスクレコーダーにダビング10という制限がついているのもその頃の私達の感覚と無関係とは言えまい。

アテナ映像の代々木忠氏の著作の中にも、エロにはそういう権利はあってないようなものだった、との記述があったと書いたが、私達の中に「どうせならタダで見たい、タダで手に入れたい」という意識がある限り、いつまで経っても今のような状況が続くのかも知れない。

そのせいか、アテナ映像の動画配信サービスは結構ガチガチなセキュリティが噛ませてあった。

少々専門的な話になるができるだけ噛み砕くので我慢してお付き合い願いたい。

(と心構えだけお願いして続く)

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