赤いきつねと緑のたぬきとアナログ記録とデジタル保存(もう話の内容にエロがあるかどうかなんてどうでもよくなってきたでしょ)14
初出 2021年5月6日 Facebook
以前丸暗記の話のときに書いたことがある(※)ので二度読みになる方には申し訳ないが、再度コピーの話をさせていただく。
※かつてFacebook上で、掛け算九九のような完全にパターンが決まっている丸暗記はデジタルコピーで、物事を理解した上でその人の解釈で記憶に残すことをアナログコピーであると書いたことがあり、その事を指している。※
アナログコピーは必ず劣化が起こる。アナログでの100%完全なコピーは特殊な状況がない限り有り得ない。
例えばノートを一般的なコピー機でコピーする場合、トナーが一定量散る。肉眼ではほとんど識別できないが、そのコピーをさらにコピーするとトナーのゴミを律儀にコピーしていくので、段々目に見えるようになってくる。そのため時代を経るに連れそのノートのコピーはだんだん真っ黒になる。何年も同じ問題を出し続ける教授の試験対策の何年も継ぎ足し継ぎ足しの秘伝のソースのようになっているノートのコピーはだいたい真っ黒で、まず内容の解読に時間と神経が必要になるものと相場は決まっていた。
誰かが買ったレコードを録音したカセットがやり取りされてどんどんコピーされていくうちにだんだん雑音が混じってとてもじゃないが聞けなくなっていくという経験をした方々もいらっしゃることだろう。
人の話の伝達もアナログコピーだ。
誰かの脳内から言語を通して誰かに伝えられた話は、一説によると20%の劣化が起こるそうだ。それがまた別の人に伝わると元の内容の64%になり、次には52%になる。3人に伝わった段階で既に元の内容の半分は変わってしまうのだ。所謂伝言ゲームはこれがあるから面白い結果になる。
100%完全なコピーを作成することが、デジタル機器が出現するまでは個人ではほぼ不可能だった。CDの音声を光デジタルケーブルを使ってMDに無劣化で保存することはできたが、それも作成されるのはMDであってCDではない。
CD-Rが出現したときの衝撃はいまだに忘れられない。
750MB「も」の超大容量の保存媒体が1枚100円しないで買えて、バンバンコピーしてじゃんじゃん配ることができた。もう当時インターネットは一般にじわじわ普及していた時期だったと記憶しているが、容量の大きい写真データ(当時の雑誌では20MBを超えたら添付ファイルとしては大容量だと記載されている)などをメールに添付して送るのはマナー違反とされた時代で、直接会える人や住所を知っている人だったらCDに焼いて物理的に送るというのがごく普通に行われていた頃だ。
その当時、まだGoogleはなかった。
ウェブサイトを知るには、テレビCMなどでその会社が公開しているURLを直接打ち込むのが当たり前だった。当時の日経ビジネスに「これから会社としてURLを取得する際は一発で覚えてもらえるような短いものが望ましい」などと堂々と書かれていた微笑ましい時代である。明治製菓などは今でもそのセオリーを実践していて、各種菓子類にそれぞれの名前のドメインを割り当てているが、全て明治製菓のドメインのサイトにリダイレクトされる。おそらく他にもそういうやり方をしている企業はあるのではなかろうか。
検索エンジンはYahoo!が一般的だったが、Yahoo!に載せてもらうには自分のウェブサイトをYahoo!が決めたカテゴリのどれに該当するかを自分で判断して申請を出し、Yahoo!が承認したらそのカテゴリに登録されるという、良く言えばのどかな時代であった。
ではYahoo!に乗らないサイトなどはどうやって見つけていたのか。
まず、個人のウェブサイトに「リンク集」があった。その人の友人知人のサイトだったりその人が見つけた面白いサイトだったりのリンクを張ったページが作られるのが一般的だったのだ。
また、KADOKAWAが月2回刊行していた「サイトでーた」という情報誌に、編集部が見つけたサイトや読者が投稿したサイトの情報が載せてあり、サイトでーたのトップページにある独自の検索窓に雑誌に載っている雑誌独自の6桁の識別番号を入力することでそのページに飛べるという仕組みがあったのだ。
リクルートなどからも同様の雑誌が出版されていて、それらの雑誌をチェックしてからサイトを見に行くという、今では考えられない手順を踏んでいたのだ。
それら雑誌の一部には、袋綴じという形で18禁のサイトに飛べるコードも記載されていた。しかし掲載されているサイト数は少なく、それらのサイトに画像が多くあるわけではなく、どこかのサイトで見たような画像が使い回されていることも多く、モザイクの代わりに可逆性のFLMASKが使われていることも多く、混沌としている時代だった。
家にインターネット回線を引くまでにはまだ時間がかかる状態だった私だが、パソコン通信のNifty-Serveが会員向けのサービスとして、Telnetを使った擬似的なインターネット接続サービスを行っていることをその当時知った。
古い記憶が蘇った。
(続く)
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