『ベア・スマート・コミュニティ』(Bear Smart Community)の紹介
Bear Smart Japan はこれまでに、警察等の法執行機関向けのマニュアルとして『非致死的なクマ管理技術の手引き_日本語訳』を公開し、猟銃を使ったクマを確実に捕獲するための技術資料等を紹介してきました。
そしてこの度、新しい取り組みとしてカナダやアメリカで推進されている『ベア・スマート・コミュニティ』(Bear Smart Community)の取り組みを紹介し、その詳細な資料を日本語訳して公開することを始めます。
そもそも『ベア・スマート』は、個人の行動を地域全体での取り組みに発展させ、人とクマが共存できる環境を作ることを目指しています
特にカナダのブリティッシュコロンビア州(BC州)は、この『ベア・スマート』の取り組みを積極的に進めており、その一環として、環境省がBC自然保護財団や自治体連合と共同で策定した『ベア・スマート・コミュニティ・プログラム』を実施しています。このプログラムでは、地域社会のコミュニティがクマとの対立を減らすための詳細な基準を設け、この基準を満たしたコミュニティに『ベア・スマート』であるという認証を与えています。
コミュニティが『ベア・スマート』であると認定されるためには、いくつかの基準を満たす必要があります。まず、クマの危険度を評価し、それに基づいた管理計画を作成することが求められます。また、地域全体での教育プログラムを実施し、廃棄物管理システムを改善することが重要です。さらに、クマに餌を与えるような行為を禁止する条例の施行も必要です。
このプログラムの成功には地域社会の主体的な取り組みが不可欠であり、そのためにクマ管理委員会の設立が推奨されています。この委員会がプログラムの実施を監督し、地域住民の関与を促進する役割を担います。
BC州では、『ベア・スマート・コミュニティ・プログラム』の概要を説明したパンフレットや詳細な技術報告書をなどを通じて地域社会がこの基準を達成することを支援しています。
BC州のプログラムは他地域のモデルにもなっており、米国の Interagency Grizzly Bear Committee(IGBC:省庁間ハイイログマ委員会)が推進する『ベア・スマート・コミュニティ』の取組もBC州のベア・スマート・コミュニティ・プログラムを参考にしています。他の地域社会もこのプログラムを活用して、人間とクマの対立を減らすためのリソースや具体的な取り組みを学び、実施しています。
BC州の作成した『ベア・スマート・コミュニティ・プログラム』の概要を説明したパンフレットを日本語訳したファイルを添付しますので、まずはこちらからご覧ください。
我が国でも、クマを人里周辺に呼び寄せないための普及啓発などに力を入れている市町村などはありますが、どの取り組みも独自に試行錯誤を重ねており、クマとの軋轢を避けて安全に暮らすために地域社会が目指すべき大きな方向性はこれまでに示されてこなかったように思います。
Bear Smart Japan がこれから順次紹介していく『ベア・スマート・コミュニティ・プログラム』に関する詳細な資料やマニュアルなどが、私たちがこれから目指すべき社会を考えるうえでの重要な道標になることを期待します。
#ベア・スマート・コミュニティ #クマ #ヒグマ #ツキノワグマ